再アニメ化が全く嬉しくない
最近、再アニメ化ブームが来ているな、と思う。
昔にアニメ化されていた作品が、今の時代になり新たにアニメ化されている。
今後もそんな再アニメ化が増えていきそうだ。
今、思い出せるのは「ダイの大冒険」「るろうに剣心」「うる星やつら」なんかが再アニメ化されていた。
最近は「YAIBA」「らんま1/2」「魔法騎士レイアース」「地獄先生ぬ~べ~」などが再アニメ化すると発表されている。
SNSなどでは再アニメ化の情報が解禁される度に、多くの人が歓喜し騒いでいる。
だが僕は、そんな人たちを見ると
何故そんなにも嬉しいんだろう?
と、疑問を感じる。
僕も上で挙げた作品はどれも好きな作品だ。
しかし、再アニメ化に関しては何も感じない。
あまり観る気も起きないのだ。
今のアニメに期待がない
僕が再アニメ化に興味がないのは、今の日本のアニメにあまり期待していないからだ。
正直言って、最近の日本のアニメは全く心に刺さらない。
もちろん面白い作品はたくさんある。
ただそれは、エンタメ的に面白いだけであって、それ以上のものはない。
今の日本のアニメは、消費されるエンタメ作品を大量生産しているだけだ。
日本のアニメのアート性は失われている。
デジタル技術の発展で、多くの作品はある程度の安定が保たれるようになった。
いわゆる作画崩壊などは昔の作品より減っているはずだ。
背景の細かい描写や色彩の強弱などは手描きの時よりも格段に楽になっているだろうし、何よりも美しく見せる事が安易になった。
パッと見は美しく見えるアニメが多くなったなと思う。
技術的には大きく進歩しているわけだが、逆にアニメの本質的な部分は後退していると言わざるを得ない。
本来、アニメとは何かを表現するための技法だと思うが、今の日本のアニメはアニメと言う媒体で何かをただ再現しているだけのものだと感じる。
それなら原作漫画でいい
僕が最近のアニメを観てよく思うのは、これなら原作漫画を読めばいいじゃん、だ。
近年、大ヒットした「鬼滅の刃」。
これはアニメとしてクオリティが高いと言われている。
この作品はとても高い技術で作られているのは伝わってくる。
特にアクションシーンは原作以上に迫力があるしわかりやすくもある。
しかし、それだけだ。
この作品は技術紹介の作品ではあるが、それ以上の深みは感じなかった。
結局、「鬼滅の刃」の根底にある思想や意図は原作をなぞっているだけに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。
原作にはアート性を感じれるが、アニメの方にはアート性を感じれない。
所詮、原作をアニメを使い再現しているに過ぎないのだ。
なら原作を読めば満足できてしまう。
もし「鬼滅の刃」のアニメ製作陣がオリジナルの作品を作ったとして、それが「鬼滅の刃」レベルのものになるかと言われると疑問が浮かぶ。
“あの○○の製作陣が作ったオリジナルアニメ”が、ことごとくコケてるのはそういうことだろう。
昔のアニメはダメだったのか?
昔のアニメにありがちなのが、原作に追いつき打ち切られるか、もしくは原作に追いつき引き伸ばされることが多かった。
それを否定的に捉えている人はとても多い。
「るろうに剣心」の初代アニメは、引き延ばしのためにオリジナル要素が追加され、その上途中で打ち切られた作品だ。
それに不満を抱いていた人は多かっただろう。
その後、時を経て再アニメ化されたわけだが、この新アニメには全く魅力を感じなかった。
もちろん作画は安定しているように思ったし、パッと見は美しいアニメになっている。
物語は余計な要素を入れず原作通りに進んでいく。
しかし、これも結局は再現以上のものはなかった。
むしろ、旧アニメの方が魅力的な場面が多く、特にOPの映像は雲泥の差だ。
原作者がアニメのワンシーンに魅力を感じ、それを原作に取り入れたほどだし、旧アニメの方にはそれほどアニメとしての力強さがあったのだろう。
今後、再アニメ化が予定されている「魔法騎士レイアース」の旧アニメのOP映像は、もはや芸術の域に達していたが、新アニメがこれを超えるとは到底思えない。
恐らく絵がきれいなだけのアニメで終わるのではなかろうか。
そもそも、アニメ版のオリジナル要素や打ち切りを絶対的な悪と見なす風潮には疑問だ。
再アニメ化が発表される度に、今度は最後までやってくれとか、余計なオリジナル要素は入れるなとか声が上がるが、僕からすればそんな要素こそがアニメを観る意味に繋がる。
引き延ばしの際にどういう表現で乗り切るのか、打ちきりの際にどう終わらせるのか、そこにアニメならではの“何か”が生まれる。
現在進行形で放送されている「ONE PIECE」が再アニメ化するなんて話もあるが、なんて不躾なことをするんだろうなと思う。
もちろん今放送されている「ONE PIECE」は無意味な引き延ばしも多くあったが、それを含めて積み重ねてきたものがあるわけである。
今回の再アニメ化は、そんな重みのある作品を否定するかの様に思えて全く好感が持てない。
で、結局生まれてくるのはただ原作を再現しただけの薄っぺらい作品だろう。
今のアニメを超えることはないだろうな。
誰もアニメに深みなんて求めてないのかも
最近の再アニメ化ブームは結局バズるからなんだろう。
昔の名作を今アニメ化すれば話題になる。
まあ、話題になってそれで終わっているものが多いが…
大抵は制作発表されたときに一番盛り上がり、放送が始まってからは話題にならないパターンだ。
とは言え、ある程度の人は観てくれるだろう。
作り手側は話題になる作品を大量に作り、受け取る側はそんな大量の作品を消費する。
深いアニメなんて誰も求めていないのかもしれない。
その証拠にアニメだけのオリジナル作品はほぼ目にしなくなった。
原作に知名度があれば、アニメ化してもコケることは少ないだろうし。
わざわざオリジナル作品を作るより、人気が保証された漫画をアニメ化する方がリスクは少ない。
そして、受け取る側は原作通りのアニメを好む。
何故ならその方が安心して消費できるからだ。
少しでも原作から外れると批判の対象になりかねない。
もはや、アニメーターが個性を発揮することが許されない状況のように思われる。
今や日本のアニメは、如何に消費のサイクルを回しお金を回すかになってしまった。
アニメ制作がアートではなく仕事になってしまったように感じる。
そこには僕の求めるアニメは存在しない。
そんな状況で過去の名作が再アニメ化されようとも、僕は全く嬉しくないな。