
心配無用ノ介 天下御免
第8シーズン 第10話「梅の花の尋ねびと」
(はじめに)
この妄想物語を書こう思ったのは、井之上チャルさんのFM番組を聴いたのがきっかけです。
井之上さんは「侍タイムスリッパー」の舞台挨拶でMCを務められたり、ご自身のラジオ番組に田村ツトムさん(心配無用ノ介役)をゲストとして招いて「侍タイ」トークを繰り広げたり。その番組の中で田村さんがチャルさんが「侍タイ」のどこかに出演してたような気がするとおっしゃっていました。
そこで私は、井之上チャルさんも俳優として(正確にはチャルさんが演じた時代劇俳優・井上千春蔵が)撮影に参加していたという世界線で人気テレビ時代劇「心配無用ノ介」の展開を補完(というか、ほぼ妄想)してみました。2000年代の時代劇っぽいエンディングテーマ曲も併せて妄想しました。
ちなみに、井之上チャルさんに演じていただく時代劇俳優・井上千春蔵が演じるのは「ゾロ目の新八」という怪しげな男。今回初登場ですが、その後のエピソードにもときどき出演するという設定です。

(お梅の父親・回想)
お梅の父・弥平は、江戸にいた時分は腕の良い錠前職人であったが、大店の奉公人・お紺と出会い、お紺の郷里・戸山村で暮らすことを決意する。その後、お梅が生まれ、一家は貧しくも幸せに暮らしていた。
しかしお紺を急な病で失って酒と賭博に溺れるようになった弥平は、イカサマ博打で負わされた借金から逃げるように江戸に舞い戻ってきた。弥平は村に置いてきたお梅に迷惑をかけまいと名を弥助に変え、日雇い人足として江戸の片隅の、粗末な裏長屋に隠れ住むようになった。
しかしいつも頭を過るのは可愛いお梅の姿。しばらくは細々と真面目に働き、長屋で僅かながら顔見知りもできたものの、後悔と寂しさに苛まれるうち次第に暮らしが荒れだし、酒に溺れ、酒代が尽きかけたある日、なけなしの小銭を握り締め、ふらふらと賭場へと向かってしまう。
不運なことに、弥平が迷い込んだのは江戸でもっとも悪名高いイカサマ賭場だった。弥平は瞬く間に多くの借金を抱えてしまい、賭場の用心棒らにこっぴどく殴られる。おまけに賭場の元締め・仏の彦三は、本名が弥平であること、腕のいい錠前職人であること、戸山村に娘がいることをなぜか知っており、言うことを聞かねば娘をさらって売り飛ばすと脅す(後ろ姿の情報提供者が夜の街角でカネを貰っている映像が一瞬かぶさる)。
泣きながら承諾した弥平に彦三は、深川の材木問屋・美濃屋に助けを求めるふりをして近づき、折を見て藏の錠前に密かに細工を施せと命じる。言葉を失い震える弥平。
このとき、このやりとりを厠に寄った帰りに偶然立ち聞きした人物がいて、顔はよく見えないが件の情報提供者らしい。
さて、盗賊に狙われている美濃屋喜三郎は、貧しい身の上からまっとうな商売でのし上がり、江戸城の普請で莫大な富を築いたが、その後も篤志家として江戸の人々からの人望が厚い人物。
(風見恭一郎・特別出演 斬り合いシーンはNGのため、出演は真剣な表情で帳簿に目を通す姿、助けを求めてきた貧しい母子に優しく声をかける姿での30秒ほど)。
そんな美濃屋の大旦那に対して、困窮した町人のふりをして近づき信頼を得てから悪事を働くなど、正直者の弥平にはどだい無理な話である。
案の定、弥平は美濃屋にたどり着く手前で震えが止まらなくなり、逃げるように引き返してしまう。そのとき、たまたま通りかかったのは、戸山村をよく訪れていた行商人、又五郎であった。又五郎は戸山村を再訪したおり「深川で弥平さんを見かけた」と話し、それがお梅の耳に入ったのである。
(小料理屋にて)
お梅の身の上話から、弥平が誰もが認めるお人好しだったこと、かなり腕のいい錠前職人だったことを知った心配無用ノ介(錦京太郎)は、お梅の父親・弥平はどこかの賭場で何か困った状況に陥っていると睨んだ。無用ノ介は軽やかな足取りで夜の町に出て行く。
(夜の町にて)
心配無用ノ介が吉原に続く夜道をそぞろ歩いていると、狙い通り「よぉ、無用ノ介の旦那っ!」と慣れ慣れしく声をかけてくる者があった。ゾロ目の新八(井上千春蔵)だった。新八は信用ならない人物ではあったが、江戸の賭場の裏事情には誰よりも通じていた。「俺も吉原行きてぇなぁ」と絡んできた新八を居酒屋に引き込んだ無用ノ介は、ふた言目には「そりゃタダじゃ話せねぇ」と金をせびろうとする新八に「まあ飲め」と安酒をつぎ続け、刺身も食べさせ、弥平が出入りしそうな賭場について情報を聞き出す。前後不覚になった新八は最後に「そう言やぁ、厠に行った帰り……そいつ半殺しにされてて……み、美濃屋のく…ら…」と言ったところで酔い潰れる。新八を捨て置き、鯔背な博徒に変装した心配無用ノ介は夜の町に消えていった。
【 中 略 】
ただの人探しのつもりが、その陰にある悪だくみに巻き込まれかけた心配無用ノ介。しかし、向かうところに敵なし。お江戸に蠢くワルを見事に斬って捨てた。無用ノ介は恐れ慄いてひれ伏していた弥平に奉行所に自首するように諭す。この一件についてすべてを詳らかにし、けじめをつけよと。実は、北町奉行の遠山と心配無用ノ介とは昵懇の仲で、北町奉行所にはことの詳細がすでに伝えられていた。
(お白州~再会)
弥平に下された裁きは江戸所払い3年。遠山の温情により、イカサマ博打による借金はすべて帳消しとなった。弥平は愛娘お梅と再会し、心配無用ノ介の前で二度と博打をしないことを誓い、父と娘は仲良く郷里に帰っていった。
(一件落着したその夜)
斬り合いの中でなぜか心配無用ノ介の加勢をして軽い傷を負ったゾロ目の新八(小銭程度のカネのために弥平の情報を売ってしまったが、事の重大さに気づいたからか)。心配無用ノ介に「ゾロ目、たまにゃぁ良いことをすることもあるんだな。さ、今宵もこの心配無用ノ介が奢ってやらぁ」と盛大に安酒を飲まされ、刀傷を「いてて…」と庇いながらも、またもや潰されるのであった。

エンディングテーマ「影だけが知っている」
錦京太郎と中島美嘉の異色コンビがデュエットする、哀愁を帯びたバラード
長い影引きずり
夕日に向かって
去っていく背中を
見つめていた
理由(わけ)は言わないでいい
さよならじゃないから
見つめ合っても見えない
心のうちは
言わないで(言ってほしい)
ふるえる指が(心が)
触れたのは何(残り火)
遠ざかるひとの(あなたの)
心のうちは
影だけが知っている
作詞作曲・NoSimpAI
(エンドロール)
酔い潰れて寝込んだ新八の肩をポンと叩き笑みを浮かべ立ち去る無用ノ介、川縁を歩く無用ノ介の後ろ姿、賑やかな江戸の夜の町、朝日に照らされた田舎道を仲睦まじく歩く旅姿の弥平とお梅…… 次々とクロスフェイドする映像の最後は、くるりと振り向きざまに「以後、心配御無用!」と決めポーズで納刀する心配無用ノ介にズームイン!
……からの
(次回予告)
第11話「おけらの桶屋の痩せ我慢」
次週もお楽しみに!