ロゴリニューアルのその先へ!理念から生まれる、企業文化の変革ストーリー【 創業10年目、民泊運営代行会社 】
いつも読んで頂きありがとうございます。
ロゴデザイナーのかべちゃんです。
突然ですが、企業にとって「ロゴをリニューアルする」とは、どんな背景や意味があるのでしょうか。
新たなステージに向けて、
信念をもって挑戦しようとしている方の役に立ちたい。
こんな思いで今回のnoteを書こうと思ってます。
今、まさに何かしらの理由でロゴを刷新したいと考えている経営者の方、企業担当者の方に役立つnoteにできればと思います!
今回ご紹介するのは、大阪に本社を置く創業10年、民泊運営代行会社LDKプロジェクト様の企業ロゴのリニューアル、それに伴うコーポレートアイデンティティ(CI)一式の規定・制作の事例です。
どんなものが出来上がったのか。どんなプロジェクト体制で、どんなプロセスで作っていったのか…まずは概要からご紹介。
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制作物一覧
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プロジェクト体制
⭐️ プロセスなど ⭐️
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プロジェクトの背景・目的
何もない真っ白なところからロゴを制作する際とは異なり、既に企業や事業として歩んできた上でロゴを変えるというのは、それなりの背景や意図があります。
多様な背景がありますが、例えばでいうとこんなところ。
LDKプロジェクト様も例外ではありませんでした。10年間を通じて築き上げた実績と信頼により会社の売上は好調であった一方、採用の課題、社内制度の構築などが急務であったりと様々な成長痛を感じているような状態でした。誰のために、何のために自分たちはこれから先歩んでいくのか…?目指す売上から逆算すると、より社内で足並みを揃え、お客様や取引先の方からより選ばれ続ける会社にならなければならない。企業活動の再定義が急務でした。
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プロジェクトの3つのフェーズ
改めて振り返ると、プロジェクトは3つのフェーズで構成されていたなと思います。各フェーズでどんなプロセスを踏んだのか、どんなところに注意して進めたか簡単にまとめました!様々なやり方があるのでこれだけが正解ではないと思いますが、参考になれば幸いです。
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【再定義フェーズ】
始まりは…社長のアツイ思いを聞くところから
5時間にわたるヒアリングで、社長の価値観や企業の未来像を深く掘り下げました。そうすると、企業として表現すべき哲学みたいなものが見えてきます。
未来が誰にも読みきれない中でビジョンを支えるのって、一番はじめは個人の純粋な意思なんだろうと思います。
社長の原体験、そこで感じた違和感と課題。創業したときと現在の価値観の変化。民泊事業者として目指したい未来・・・実際私も滞在したのですが、LDKプロジェクト様が手がける施設に滲み出ているのは、安かろう悪かろうの民泊業界を覆したいという思いでした。
一方、既存のミッションビジョンバリューも思いがこもっていて素敵だったのですが、「どういう意味で使われているのかわかりにくい」という社員の方の意見があったのも事実でした。
「企業としてどうありたいか」「なぜこの目標を目指すのか」「なぜこの表現を使うのか」、一つ一つ丁寧に議論を重ねました。社長ひとりで決めるのではなく、社員の皆様と一緒に議論することで、経営理念がただのお題目ではなく「全員で作り上げたもの」という意識が芽生えたように思います。
そうしてできたのが下記の経営理念。
ミッションビジョンもこの経営理念を元に決定し、社員の皆様が日々意識したい行動指針もワークショップで決定。ひとつひとつのコトバ選びと、皆で作り上げるプロセスを大事にしました。
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【具現化フェーズ】
ロジックも大事、でもエモーショナルもめちゃ大事
理念が定まると、既存ロゴでは足りなかった視点と、必然的にどんなことをロゴで表現していくべきか見えてきます。
ここで私がめちゃめちゃ大事にしているのが、ロゴから「エモーショナルな価値」を感じるかどうか、という点です!
新たな経営理念を体現するような、企業の人格が滲み出てる感じになっているかどうか。思わず「なんか気になる!」と思える仕掛けがあるかどうか。なぜかというと、お客様や社員の皆様の心を動かすのは、数値や事実などのロジックだけではないと私は考えるからです。
特にLDKプロジェクト様の場合は、「ファンで溢れる日本一の民泊事業者になる」というVISIONを掲げたので、デザインを通してファン化のきっかけになるような仕掛けが必要でした。
いちいちお客様に説明をする場面はないかもしれませんが、この右上の「ぴょこっ」と飛び出た部分にいい意味での違和感を持たせています。
お客様の人生は、ひとつの物語みたいなものだと思うーーー。
僕たちは民泊という箱を作っているわけじゃないーーー。
そこで過ごす時間や体験をつくっているーーー。
「人生に綴られるひとときをつくるって、そういうことか!」という世界観がじわじわ伝わって来るようにすることで、毎日ロゴを目にする従業員の方も自社に愛着が湧くと思いますし、取引先や民泊オーナー様も会社の魅力をより深く感じてもらえるのではないでしょうか。
このロゴ制作の裏側だけで10000字くらい書けそうなのですが、詳細は別の機会に紹介したいと思います。
ロゴデザインのプロセスを通じて、社員全員が自社の在り方や目指す方向性を再確認し共有できることは、企業文化の形成にも寄与します。このプロセスが、単なるデザインを超えた組織全体のブランディング活動となり、次に紹介する社内外への一貫したメッセージを生み出す核となっていきました。
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【浸透フェーズ】
社内外に浸透させるための工夫は?
企業の新しい在り方を、社内外に浸透させるためにはどうすればよいか。
作ったものを知ってもらう仕掛けと、覚えてもらう仕掛けを作っていきました。
1つ目の仕掛けはカルチャーデック。企業に関心を頂いた方(取引先・民泊オーナー様・採用候補者など)へ対し、会社概要・事業・価値観をお伝えし、 企業文化を知ってもらうことを目的としたものです。(単なる会社説明資料ではないことがポイント!)
カルチャーデックは特に社員の皆様と密に協力しながら作っていったものでしたので、「会社のカルチャーってこんなところだよね」を再発見していく作業でもあったように思います。
2つ目の仕掛けは、ロゴの世界観を拡張し、記憶に残るような企業のオリジナリティを表現したブランドアイテムたち。
ただ闇雲にいろんなものを作るのではなく、一貫したメッセージ(ビジュアル)を発信することによる信頼性向上や認知度向上、という効果を狙って制作。
民泊運営を考えるオーナー候補者様とのタッチポイントを考え、どんなアイテムが必要か、というところから洗い出しました。
3つ目の仕掛けは細部のコトバづかい。
企業の価値は、ビジュアルだけでなくコトバからも伝わる。
「自分たちがどう認識されたいのか」を踏まえて、コーポレートサイトなどの細部のコトバ使いも提案しました。
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まとめ
以上ざっくりではありますが、【ロゴリニューアル】という切り口から、企業の在り方を再定義し、再出発するまでのプロジェクトストーリーをまとめさせていただきました!
改めてお伝えしたいことをまとめると下記2点になるかと思います。
⭐️企業の本質を映し出すデザイン
企業の内面を視覚化できる、というのがロゴデザインの力だと思います。もっと言うと、その企業で働くメンバーの信念の集合体、魂みたいなものだと思います。魂が宿った企業は、企業の細かなニュアンスや、ターゲットに向けた独自のメッセージ性をデザインに落とし込むことができ、サービスづくり、お客様との関係づくりにまで良い影響を及ぼせると思っています。
⭐️プロセス共有の重要性
魂は生成AIのロゴではつくれません。ロゴデザインのプロセスは同時に、社員全員が自社の在り方や目指す方向性を再確認し共有するものでもあります。そして、企業のカルチャー形成にも役立ちます。このプロセスが、単なるデザインを超えた組織全体のブランディング活動となり、社内外への一貫したメッセージを生み出すことができます。
以上です!
何かしらの理由でロゴをリニューアルしたいと考えている経営者の方、企業担当者の方の役に立つnoteになっていれば幸いです 💐
質問や感想、お仕事のご相談があれば、ぜひ私のXのDMにご連絡ください!
私の自己紹介記事はこちら↓
⭐︎⭐︎⭐︎Special Thanks⭐︎⭐︎⭐︎
ブランディングデザイナー シモカタさん https://x.com/Kikaku_shitsu
プロジェクトマネージャー 岩ちゃん https://x.com/Toshio_gamgpomg
今回、シモカタさんと岩ちゃんにリブランディング支援チームとしてjoinして頂きました!二人のおかげでより日々の議論が活発になり、多角的な視点でLDKプロジェクト様に伴走することができたと思います。本当にありがとうございました!!
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【おまけ】心に残ったエピソード!
ここからは、おまけ的な感じの内容です!
まず、最初から最後までとても楽しくやりがいのあるお手伝いをさせて頂きました!LDKプロジェクト様からこのような機会を頂けたこと、本当に感謝しております。
ダイジェストでここまで書いてきましたが、現場では日々いろんなドラマがありました!!議論がなかなかまとまらなかったり、一方で「これだ!」と皆の意見が一致する瞬間があったり。
ということで、心に残ったエピソードがいくつかあるのでご紹介します!
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社長「『ひととき』 って表現は、どうかな?」
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時は、経営理念の提案日ーーー。
社員の皆様も参加してzoomで最終決戦のディスカッションをしていたのですが…
「ひととき」って表現はどうかな?
と社長の一言。
「あ、なんかハマった気がきます!」メンバーの皆様も納得の様子でした。
重要なキーワードが見えてきた中、パズルの最後の1ピースがやっと見つかった感じがしました。
最後の答えはクライアントが持っているーーー。 ということはこういうことだな、と体感し、これからもなるべくクライアントの皆様からふとしたときに紡がれる言葉を大事にしようと思いました。
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「なんか、ロゴが…社長に見えてきました」
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おそらく、私のデザイナー人生で後にも先にも聞くことがない(!?)ような発言が飛び出したのは、初回ロゴ提案の時。メンバーの濱田さんからこの言葉を頂いた時には、シビれました…!
「なんかこの、シュッとした感じとか、雰囲気とか、社長ぽくないですか?(笑)」と続けて言われた時に、不覚にも「た、たしかに…!」と思ってしまいました。
見た目の雰囲気もそうかもしれませんが、それよりも、
社長の考え方とか、それが社内の空気感や民泊の事業にどう現れているのかとか、そういうものも含めて言って下さったのだと思います。
「ロゴが社長に見えてきた」って、ロゴとして究極のあり方なんじゃないかと…(泣)と思うとじわじわと目頭が熱くなりました(さすがにMTGでは我慢した)
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「『To be continued…』ってつけた方がLDKっぽいですかね?」
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こちらは実は、カルチャーデックの最後のページの表現についての議論で、幹部メンバーの馬場さんから出た意見。
「人生に綴られるひとときをつくる」という経営理念が染み出しているようなカルチャーデックにするために、私は資料の随所に「物語」の要素を散りばめていっていました。
悩んだのは最後のページ。
よくある「Thank you.」で終わらせるのではなく、物語の完結を意味するコトバを考えていました。
「完。」とか「おしまい。」とか「めでたしめでたし。」とか。
LDKプロジェクト様が纏っている一種の柔らかい雰囲気も踏襲した「おしまい。」で最終的に提案したのですが、そこで馬場さんから一言が。
「単におしまい、じゃなくて、『To be continued…』ってつけた方がLDKっぽいですかね?」
この施設で過ごしてくれた「ひととき」の物語は完結するかもしれないけど、また将来ご縁があればまたLDKプロジェクトの施設に泊まりたい、LDKプロジェクトと一緒に仕事したいってふと思い出してくれるかもしれない。"完結・おしまい"というニュアンスよりかは、LDKプロジェクトと関わった後もお客様の人生は続いていくし、同時にわたしたちの挑戦も続く。だからTo be continuedがふさわしいんじゃないか、という意図のご意見でした。
小さな出来事かもしれません。ですがメンバーの皆様にとって、カルチャーデック制作のプロセス自体が、企業の文化や価値を再発見する機会になっていることを象徴するような一幕な気がして、嬉しくなりました。
以上、現場で起こったちょっとしたエピソードのご紹介でした♪