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生きづらさの脱却~Personal is Politicalからセルフエンパワーメントへ
最近、あるドラマで「Personal is Political(個人的なことは政治的なこと)」という言葉が繰り返し語られるのを聞いたとき、私は思わずハッとしました。
昔この言葉を初めて聞いたときは、遠い思想の話のように感じていましたが、あらためて振り返ると、私自身の人生と強く結びついていることに気づいたのです。
「Personal is Political」は、1970年代のフェミニズム運動の中で生まれた概念で、個人が抱える問題の多くが単なる個人の問題ではなく、社会的・政治的な構造によって生み出されたものであることを指摘する言葉です。
例えば、ジェンダーの役割、家庭環境、労働環境といったものは、個人がコントロールできる範囲を超えて社会的に作られています。そういった社会の構造に気づいたとき、私たちは初めて「これは私のせいではなかった」と理解することができます。
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10代の頃から自分が感じていた違和感や生きづらさは、単なる個人的な問題ではありませんでした。家族、学校、社会の中で押し付けられる役割や価値観が、私の選択肢を狭めていて、対する私は、心のどこかで「自分にはもっと違う生き方があるはずだ」と感じながらも、それを口にしない生き方を選んでいました。
そこから私のセルフエンパワーメントの旅が始まりました。
私は幼少期から「期待される役割」を生き、「いい子」でいることや「役に立つ存在」であることで自分の価値を見出そうとしていました。ジェンダーの壁や就職氷河期に直面しながらも、働き方を通じて自分の居場所を模索し続け、結婚や出産を通じてもアイデンティティを模索してきました。
今日は、そんな私の個人的な苦悩から生まれたセルフエンパワメントのプロセスをご紹介しようと思います。
Personal is Politicalからセルフエンパワーメントへ
5ステップで整理する思考の成長プロセス
このステップは、かつての私と同じように、生きづらさを抱えながら試行錯誤してきた女性が、自己理解、自己解放、そして本来の自分に還るプロセスを示しています。
個人的な体験がベースにはなっていますが、ひとりでも同じようなプロセスをたどる人の助けになれたら。そんな思いで体系化したので、もし共感してくださる方がいたら、ぜひ声を聞かせてください。
①【無自覚フェーズ】個人の問題として捉える
昭和を生きた私たち世代は
・「女の子だから」という理由で何かさせられたり、あるいはできなかったりした(しかもそれが気づかない形で巧みに潜んでいた)
・両親の仲が悪く、家の中で争いが絶えなかった(家事分担の概念もないまま女性の社会進出がはじまった)
・知らず知らずのうちに親のメンタルケアラーとしての役割を担っていた(お互いの境界線を尊重する概念が希薄だった)
という人が少なくないのではないでしょうか。
そんな環境の中で育つと、どうしても「人の顔色を見て動く」とか、「自分の本音は言ってはいけない」とか、「人を困らせてはいけない」とか、そういう処世術を身につけて大人になってしまう。
自分を守るためにいくつもの鎧を身にまとい、違和感や生きづらさを抑えながら生きていると、やがて自責や自己否定という形で自分に矛先が向かいます。
私自身、10代から
「なぜ私はこんなに生きづらいんだろう?」
「私の性格の問題?それとも私の努力不足?」
「なぜ私はこうなってしまったの?」
といった悩みを抱えていました。
この時期は
・自分を責める
・私のせいだと思っている
・でもなんとか変わりたいと心理を学ぶ
といった段階で、私自身、10代~20代の多くをここに費やしました。
②【被害者フェーズ】社会構造に気づく(Personal is Political)
この段階ですがるように心理を学び、そこに生きづらさの答えを見出した人も多いのではないでしょうか。
私自身、貪るように読んだ書籍の中に、毒親、モラハラ、アダルトチルドレン、といった言葉を見つけ、これが答えだ!と思うような衝撃と、消し難い大きな憤りを感じました。
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もしあなたがこれらの言葉とは無関係だとしても、なにかしらの答えを求めて、もがきながら気づく時期。
この頃の心境としては、
「これは私個人の問題じゃなかった!」
「私が悪いのではなかった!」
「私は被害者だった!」
というもの。
私自身は怒りの矛先を両親に向けましたが、しかし、「Personal is Political」。
彼らもまた、激動の時代の中で、私かそれ以上の苦しみを抱えていること、個人的な経験からも傷や悲しみを抱えて生きていることがわかり、やり場のない気持ちになりました。
こうして私の20代~30代は、 怒りを感じつつも、
・「私の生きづらさは、社会構造に理由があった」と気づく
・「私はこうなるべくしてなった」と理解しながら許しを模索する
ことに相当な時間を使いました。
しかし、ずっと「被害者ポジション」のままだと、自分の人生を動かすことができません。「周りが変わらないと、私は変われない」と思い込むと、停滞してしまいます。このことに気がつき、その先に自分を進めることが、自分の人生の舵取りをする上でとても大切。
ですがその一方で、傷の深さによっては一定の時間を要するフェーズでもあります。
③【転換フェーズ】では、私はどう生きるのか?と考え始める
「たしかに社会の影響はある。でも、このまま『被害者』でいるのは嫌だ」「ここから私はどう生きるのか?」
「社会を理由に止まるのではなく、個人としてどう生きるかを考えたい」
こう考え始めた時が、本当のリスタート。
自分の人生の主導権を取り戻し始め、「親が、周りが、社会が悪い」のではなく、「私に何ができるか?」にフォーカスし始めます。
私自身、このフェーズに切り替わる瞬間の日記を今でも覚えています。昔からジャーナリングをしていましたが、40才になる年、2019年8月の日記に「私は私の人生を生きる」と書いたのです。その言葉の周りを大きな四角でグルグル囲み、「私は私の人生を生きる」と自分に宣言したのをとても覚えています。
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実はこの頃、自分の生きづらさを取り巻く社会構造が見えた時、社会を変えることにエネルギーを注ぐべきか、と思い、ジェンダー活動に足を踏み入れたことがありました。
自ら自治体の活動に参加し、「日本女性会議」に出席したり、県の「男女共同参画人材育成」プロジェクトに参加したり、市の代表でレポートを書いたりしました。ですが、これらの活動を通して私自身は世の中を変えるより手前に「まず自分を変えたい」という思いが強くなりました。
世の中のおかしさに気がつき、そこに声を上げることを使命とする選択はもちろんあります。私はそういう人を尊敬もしています。ただ私はその手前で、自らを満たす必要がありました。
こうして、私は自分にエネルギーを集中させることにしたのです。
④【自己エンパワーメントフェーズ】エネルギーを自分に戻し、行動する
自分で自分をセルフエンパワメントするこのフェーズでは、
「私は、被害者ポジションから降りる」
「私は、社会の影響に囚われずに生きる選択をする」
「私は、今の社会の中でも、自分の人生を創ることができる」
そう決めて、行動と内省を通じて自分の人生を切り開くチャレンジをします。
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具体的に言うと
・自分の現状を客観的に見つめ、現実社会で外に置いていたエネルギーを、自分の内側に戻す
・前に進むために妨げとなる心の傷があれば、それに気づいて癒す
・今ここから、できることをやる
これらは、セルフコーチングを通じて意識的に変革を起こすこともあれば、強制終了のように”向き合わざるを得ない”形で現れることも、あると思います。
自己認識を深めたり、強みを活かしたり、弱みを克服するためには、専門的なコーチングが、大きな助けとなります。
じっくりと丁寧に向き合う時間です。
⑤【創造フェーズ】自己表現を通じて、社会にも影響を与える
この世界で起こる出来事は自分が”創っている”、ということが認識できる状態です。
自分の内側としっかり繋がり、自己信頼が育ちます。
反応ではなく、内的動機で決断、行動ができます。
ここでの心境は、
「私は、自分の生き方を示すことで、社会の価値観を変える力がある」
「私がセルフエンパワーメントすることが、結果的に社会を動かす」
「私は、未来を創る」
と自分に力が宿ります。
世の中に自分を表現していくことが、ひいては社会への貢献となる。
こんな心境で自分の人生をひとつひとつ踏み進めていく。
生きづらさを感じるところからスタートした人生も、こうしてひとつひとつ進むなかで、”使命を生きる”といった実感を伴って、自分の人生を生きることができるのではないでしょうか。
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このステップは、生きづらさを感じてきた人にしか当てはまらないかもしれません。
私自身、生きづらさからスタートする人生はなんて不利なんだ、と自分の環境を恨めしく思う時がありました。また、これまでの過程でも、時間やエネルギーを無駄に使い過ぎて遠回りしたところがあるし、こんなふうにしとけばもっと”ラクに”切り抜けられたはず、と思う場面もたくさんあります。
でも今は、これらひとつひとつの経験が、同じような悩みを持つ人に伴走する際の大切なリソースとなることを知っています。
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もしこれらのステップに共感を覚えたり、あるいはモヤモヤが刺激されてしまった人、今まさに渦中にいると感じられた人などいらしたら、ぜひコーチングを受けに来てください。
ひとりで向き合うよりも、早く切り抜けることができるから。
大丈夫、コーチは誰もジャッジしないし、あなたを責めることも追い立てることもしません。あなたのまま、そのままで来てください。
コーチングは安心、安全な場所です。心の傷があれば、安心して出してください。
そして一緒に前へと進む道を切り開いていきましょう。
居安亜希子|ライフキャリアコーチ
「自己統合」×「セルフエンパワメント」を軸に、“本当の私”を取り戻し、人生を再構築するためのコーチングを提供しています。
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