幸せの源
小さい頃から本が大好きだった。
物心ついた時から本がいつもそばにあった。いや、そばに置かれていた。
本にまつわるエピソードで強く記憶に残っているのは、今は亡き父が口癖のように言っていた、
「本ならいくらでも買ってやる」
という言葉だ。その言葉の通り、本が欲しいんだけど、と私がいえば父はすぐに須原屋へ連れてってくれて、本を2、3冊買ってくれた。一体何冊の本を買ってもらったのか、わからない。
そのおかげで、本読むスピードは人と比べてとんでもない速さで読むことができたし、内容理解もそこら辺にいる子よりはそこそこ早かったという自負はある。
小学6年生までは学校でも家でも毎日のように本を読み、(ただし、友達がいないとかそういう訳では無い。)図書館の小学生向けの文庫本コーナーはすぐにコンプリートした。毎日図書館に通ってた時期もあったっけか。1日30冊借りて、2日後に返しに行っていた。
中学生になって、部活が忙しくなってきて、読む頻度が減った。でも、少しづつでも、読み続けていた。まぁ私の場合、一旦読み出すと読み終わるまで本を閉じられない性格なので、少しづつというのは語弊だが。
中3で受験に集中しだした頃から、本を本当に読まなくなった。合格してから柿に1冊借りて読んだっきり、ほぼ読んでいない。
某感染症による長期休みもラスト2日に差し迫った夜、私は、無性に本が読みたくなった。
1年前に借りた本を寝る前に1日30分読んだ。なんと3日で読み終えた。1年前と何が違うって?読むスピードはなんら変わりはない。1年前とは語彙力が天と地の差ほど違うので、以前よりも内容はつかみやすかった気がする。
明らかに違ったのは、私は、言葉では到底表せない感情に包まれたことだ。
こればかりは言葉でどうしようも表せない。
しいて言うなら、雰囲気とか人物の感情が身に染みる感じ。伝えるの下手くそか。
とにかくそれから私はその感情にハマり、新しい本が読みたくてたまらなかった。
インスタで #本 と検索をかけ、ありとあらゆる本について情報収集していった。メモに打ち込んだ。その結果、何十冊もの読みたい本が見つかり、いやいや、こんなの全部買ったら何万とするのだろうと恐ろしくなったが。
とあることで5年前に頂いた、1万円分の図書カード。これを使うときだろうと思った。
今日の学校の帰り、よく父と来ていた須原屋に寄った。こんなにまじまじと本を探したのはいつぶりだろう。まさか5年前か。わからん。
読みたい本を探していたら、1つ問題に直面する。それは、
読みたい本が、増えるのだ。
増えちゃうの。探してたら、どんどんいろんな本が目に入ってきて、あれも読みたい、これも面白そう。嗚呼、読みたいが過ぎる。
まあ読み終わったら、買いに来ればいい。今私が欲しいのは、彼氏でも洋服でもない、本だけだ。
そんな葛藤と戦いながら私は3冊の本を買った。
帰り道はワクワクだった。
しばらくは物欲=本になりそうだな、と思いながら。
私のことだからその事を考えている時は相当あほ面だったと思う。そんなことしていたら某有名公立女子校に入学した2人の後輩に見つかり、名前を呼ばれ、我に返った。彼女たちは中学時代のソフト部の後輩で、2人仲良く合格していたのだ。ただ自転車で帰るだけなのに、彼女たちはとても楽しそうだった。楽しそうだった。幸せそうだった。幸せっていいな、と思った。(別に私が不幸という訳では無い。)
私はしばらくは本が幸せの源になりそうだな、と考えながら家のドアを開けた。
自分の勉強机がいつか、思い出の写真1枚と、本だけになればいいと思う。