劇団新作『バウワウ』について
わたくしめが主宰アンド脚本している劇団が、夏に新作公演をします。ミュージカル『バウワウ』。タイトルからいきなり吠えたてまつってごめんなさい。
公演特設サイト(↑)のあらすじに
「作品内でセクシャルハラスメント、セカンドレイプを扱っています。行為を肯定、助長する内容ではありません。」
って書いてるんです。
何事なの?って言うてますか?聞こえてるよ。
現代劇を作る人間として、現代社会の問題に立ち向かわなきゃいけない時が来たんです。
ていうかやっと自分に、立ち向かえるくらいの力がついたかなあって思えた次第です。東京には精神と時の部屋がないので、時間がかかってしまいましてよ。
内心、そういう現実への戦いに挑まないといつまでも半人前だぞと焦っていた。
人間の本性とか、解決されていない社会の問題とか、もうテレビじゃタブーとされてしまうようなことをわざわざ描いて、歴史に刻み込んでやるのが演劇の使命なんじゃないかって思っているのですもの。
さっきから時折飛び出す貴婦人語尾、気になります?
小学校に上がったくらいの頃、私はデヴィ夫人と叶姉妹という異世界高貴人類に憧れ、『島川夫人の花のプロフィール』という傑作絵本を作りました。家族から好評を博し、実家にボロッボロで保管されている国宝図書です。
だからアツくなると心の貴婦人が顔を出すんです。気にしないで。
会社でも家庭でも国会でも夢の中でも、さまざまなハラスメントが問題になっていますね。
毎日告発とか解任とかニュースが絶えないし、演劇界も最近はえげつがなくて情けないですね。
たくさんの人がいろんな言葉で、問題について怒りや意見を掲げている。それでも事件があり続けるのは、暗に人間の根本的な習性を表していて、気が遠くなっちゃうってんだよね。
でも貴婦人といたしましては、自分のことも、自分の周りも、この社会も、何一つ諦めたくはなくてよ。
緊急事態に真っ先に切られる芸術だけにできることが、絶対にあると信じて疑っていないの。
芸術って、個人の視点をみんなに共有するために作品化する行為だから。その視点が正しいか、優れているかじゃなくて、
あなたはこれを美しいと思う?
そう語り合うためだけにある。美しくないと思ったっていいし。芸術で世界は変えられないけど、見た人、体験した人の中に、視点をひとつ増やせる。それってバカでけえことだぜ。
人の気持ちが想像できるようになることなんだから。
脚本という私の視点に、スタッフと出演者の視点が足されていって、多面体になるのが私にとっての演劇。
観てくださったお客様が多面体のどの面に触れるか、開いてみるか、潰すか、組み直すか。何を思ってくださるか、本当に楽しみなんです。
視点の共有、変異、進化したい。
だからこの夏、私たちの視点を味わいに、ぜひご観劇頂けたら嬉しいです。
怒りを沸かせるかもしれないけど、後悔はさせないわよ。
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