【ネタバレなし】先生の白い嘘を観て
先日、先生の白い嘘を観てきた。
情報が公開された時から絶対に観に行こうと思っていた作品。それが公開前日にあんなに物議を醸すことになるとは思わなかった。
性にまつわるセンシティブなシーンがある作品に、俳優さんと制作陣の間に入り、サポートをするインティマシーコーディネーター。
この作品には映像化されることもはばかられるような性被害の描写が含まれている。にもかかわらずコーディネーターを入れずに撮影されたことが判明したのだ。
ましてや俳優さん側から要望があったにも関わらず、監督自ら断ったというインタビューが反感を買い、瞬く間に炎上していった。
正直この騒動があるまでは、奈緒さんが覚悟をもって挑んだ作品を観てみたいと思っていた。題材が重い分、誰かと気軽に観に行こうとは思えなかったけれど、スクリーンで観る価値はあるだろう。そんな風に思っていた。
けれどこの騒動を経て、作品を観るのが怖いという気持ちが芽生えた。覚悟を持って挑んだ気持ちに水を差すような、そんな出来事があった中で成り立ったこの作品は、果たして「正しい」のだろうか。
制作陣が都合よく解釈して、それっぽく脚色したものに感化されたりしないだろうか。
そんなことを考えながら、覚悟して観に行った。
観終わってまずはじめに思ったのは、主演としてこの難役を演じ切った奈緒さんへの尊敬とねぎらいの気持ちだった。
正直、しんどいシーンがいくつもあった。思っていた以上に衝撃で目を逸らしてしまうことも一度や二度どころじゃなかった。
これから観に行くことを検討していて、以下に当てはまる方がいらっしゃれば、こういうシーンもあるのかと頭の片隅に入れて頂いた方がいいかなと思う。
大きな声が苦手
血が苦手
ホラー映画などの驚かせる演出が苦手
映画を観るまでは、奈緒さん演じる主人公、美鈴を中心に話が展開されていくものだと思っていた。
実際、その通りではあるのだけど、思っていた以上に他の登場人物の感情や欲望、コンプレックスが描かれていて、それぞれの視点で考えさせられた部分が多かったのが意外だった。
そして1つ1つのセリフが重くて、深い。
今どういう気持ちでこの言葉を言っているのだろう。
本心はどこにある?
その行動に出た意味は?
1つのセリフに対して1つの問いが生まれ、じっくり咀嚼する時間がなかった。だから、観終わった直後よりも今の方が色々と考えてしまっている。私は想像以上にこの作品に影響を受けた。
今改めて原作を読んだり、予告編を観たりしながら、この作品から得た感情や思いを自分の中に落とし込んでいる。
その中で、その重みを痛いくらいに感じる言葉があったので紹介させて頂く。
それは原作者である鳥飼先生がおっしゃった「私は性被害を無くしたくてこの漫画を描いた」という言葉だ。
映画を観る前にこの言葉を読んで、私ももれなくそう思った。こんなことはあってはいけないと心から思った。
けれど映画を観て改めて読むと、その言葉の重みが全然違う。
今は、これ以上性被害にあう人がいない世の中になることを切に、切に願ってやまない。
正直、大きな声でたくさんの人に見てほしいと言える作品ではない。それこそ過去にそういった経験をした方には観ないでと言いたいくらい、観る人を選ぶ作品だとも思う。
けれど、もし気になっている方がいれば、衝撃的なシーンがあるのも念頭に置いた上で、観に行ってみてほしいなと思う。
少なくとも私はこの作品に出会えて良かった。