ボランティアは”してあげる事”ではない~ドキュメンタリー映画「Dr.Bala」を観て~
尊敬するライターであるさとゆみさんがおすすめしていたドキュメンタリー映画を観た。タイトルは「Dr.Bala」
正直なところ私はドキュメンタリーが苦手だ。
なぜなら制作者の意図するところでまんまと泣いてしまうから。
なんだか手のひらで踊らされてる気がして、たとえ尊敬する人におすすめされたとしてもあまり乗り気にならなかったのだけれど、今回ばかりは違った。
何がと言われてもうまく言葉にできないのだけど、なんだか見ないといけない気がして、逡巡しながらも購入ボタンをぽちりと押した。
事前に他の人のレビューは見なかった。
なるべくまっさらな状態で、今の自分がどう感じるのか試してみたかったからだ。
この作品は「Dr.Bala」と呼ばれている大村医師が医療ボランティアとして東南アジアで活動した12年間をまとめたものである。
1時間22分という、ドキュメンタリーとしては少し長めで映画としては少し短い作品。観た後にこの時間をどう感じるのかも気になっていた。
と見始めて早々運命的なものを感じた。
私が長年大ファンである俳優の戸田恵梨香さんがインスタの投稿や著書で名前を挙げられていた吉岡秀人医師が登場したからだ。
思いもかけない繋がり。
大村医師のこの活動は、吉岡医師が設立したJAPAN HEARTの医療ボランティアがきっかけだったのか。それだけで一気に前のめりになった自分がいた。
気付けばぐいぐいと引き込まれて、観終わった瞬間どっと疲れた自分がいた。
涙の一粒も出ない。
なんだかすごいものを見てしまった。
そんな感覚。
正直私にはこの作品がとても長く感じた。
それはつまらなかったからではない。
濃すぎたから、だ。
大村医師の12年間をぎゅっと凝縮しているからこそなのだけれど、そのすべてのエピソードが5分や10分で語り切れるものではないのだ。
観終わってすぐ気になった言葉やその国の歴史について調べた。いや調べずにはいられなかった。さらっと流すにはあまりにも深いものがこの作品の中に詰め込まれていた。
その中でもとりわけ印象に残った場面がある。
大村医師をよく知る医師の話の中で、医療技術を「教えてあげる」ではなく「一緒にやる」という姿勢について語られていた。
ボランティアとは基本的に無償で自発的に行う行為だからこそ、「してあげる」という姿勢もなんら間違いではない。
けれど大村医師はその国で働く医師や看護師と同じ目線で接し、彼らが技術を習得し、ひいては国の医療技術を向上させることができるように全力でサポートしていた。
よく耳にする「社会貢献」という言葉がちっぽけに感じるくらいに。
はたしてここまで自らを省みず、誰かのために尽くせるだろうか?GIVEという言葉を上っ面だけで捉えて、やった気になっていないだろうか?
そう問われた気がした。
そしてこれも個人的に思ったのだけれど、日々仕事に邁進し、長期休みにはボランティアにと忙しくしているならきっと独身だろうなあと勝手に思っていたら、奥さんとお子さんとのシーンが出てきて驚いた。
なんなら娘さんリクエストのすみっコぐらしのキャラ弁まで作っている。
もちろん、よくある普通の家庭より家族で過ごす時間は少ないように思う。けれど医師として仕事を全うし、医療ボランティアとしてアジア各国に渡りながらも父親としての役割を果たそうとしている姿に感服した。
今、私の胸には今までドキュメンタリーを観て思ったことのない言葉が浮かんでいる。
また必ず観よう。
この作品に出会えて良かった。
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