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Rp:27~30まとめ 桜井一の夢

僕がホーム薬局で正式に勤務し始めて3ヶ月間の実績をスタッフに報告、今後の目標について話したあと、
中川さんと田原さんの会話が聞こえてきた。
内容としては、なぜ僕がこの薬局に来るようになったのか、なぜ急に色々な加算を取ったり売上のことをなどを気にしないといけなくなったのか、などだ。
僕としてはちゃんと説明してきたつもりだったが事務員さんの理解がしっかり得られていなかったのかも知れない。
さて、どうしたものか。とりあえず食事にでも誘って色々話してみようか。

「わざわざ時間を作ってもらってありがとう。僕がホーム薬局に来てから二人にはとても頑張ってもらっているし、一度ちゃんと話をしたかったんだ。
なんでも好きなものを食べてね。」
「いえいえ、あんまり桜井さんと話したこともなかったしいい機会かなと思いました。ご飯は遠慮なく食べますね。」

中川さんも田原さんも、

「今日はいつも頑張ってもらっている二人のことが少しでも知ることが出来て良かったよ。
それと、今回の食事会は実は僕のことも少し話しておきたいってところもあったんだ。」
「桜井さんのことですか?」
「そうだね。鈴木さんは薬剤師だから保険調剤のことや薬剤師の理念などもわかっているから何も言わないけど、
中川さんや田原さんは急に僕なんかが急に来て数字のことを色々口を出してきて嫌な思いをしているんじゃないかなと思ってね。」
「ん〜、嫌な想いというよりは「なぜ急に売上を気にするのか」っていうところは大きいですね。」
「私も、上の人が数字を気にしろっていうならそれに従いますけど、小林さんは全然数字のことは言わなかったので、なぜ?とは思いますね。」

僕は自分がホーム薬局を引き継ぐことになるかも知れないこと、保険薬局・保険調剤の仕組みなどについて話した。

「じゃあ、調剤報酬表をもとに点数を稼げる薬局になれば患者さんや国民の健康を守れるってことですね。」
「そうだね。点数を稼げっていうとただの金儲けのために、って聞こえるけど、僕の考えているのは
『点数表をもとに患者さんへ適切なサービスを提供して加算を算定すれば自ずと稼げる薬局になる』っていうところを考えているんだ。
それに稼げる薬局にならないと地域住民へ医療というサービスを提供出来る薬局というものを維持できなくなるしね。」
「なんとなくわかった気がします。薬局を引き継ぐっていうのがどうしてもただ『金儲けのため』っていうふうに考えていました。」
「まあ、実際に金儲けのためだけに独立がしたいって考えている人もいると思うし、そういう人のほうが多いのかも知れない。
僕としては、給料面では今サラリーマンとして会社からもらっている額でも生活に困るようなことは無いから満足しているんだ。
僕がホーム薬局を引き継ぐ理由としては、ホーム薬局を僻地医療界で最も良い医療を提供出来る薬局にし、その売上を元手にセルフケアに特化したお店を開業することなんだ。」
「セルフケアに特化したお店、ですか?」

僕はこの薬局の人に、初めて自分の夢を話すことにした。

8月の薬剤師交流会で岡田さんと話して感化されたわけではない。
保険薬局で病気の人を治していくということにもやりがいを感じているが、そもそも人が病気にならないような「日々の取り組み」が必要なんじゃないかと思う。
この「日々の取り組み」を伝えるには、患者さんとして訪れる人に伝えるのは簡単かもしれない。
しかし、病気にならない取り組みを伝えるのは健康な人にこそ伝えるべきだ。

いつからこう考えはじめたのか、よく覚えていないけど結婚後なんじゃないかと思う。
僕は薬剤師として持ちうる知識を「どうすれば患者さん以外の人に広められるか」を考え、行動をはじめた。
ブログ、SNS発信などもしたが、一番良いと思ったのが飲食業だ。

なぜ飲食が良いと思ったのか、理由はいくつかある。
・薬局に比べて地域住民との距離が近い
・薬局に比べて入店までの敷居が低い
・薬局以外でやりたいと思えるところが飲食業
の3つが大きい。

僕が考えている飲食業とは、いわゆる薬膳カフェなどではない。
仮に薬膳カフェなど健康的な料理を提供するお店をしたところで直接的に病気を治せるわけでも無いし、
なにより「健康志向の高い人」しか集まらない。
僕が考えているのは「健康志向の低い人を高くする」ことだ。

例えば一般的な喫茶店。
従業員の仕事は①注文をとり②コーヒーや軽食を提供し③代金を頂戴する。
加えて④食器やテーブルなどの清掃になるだろう。
薬剤師はこの中で「健康の提供」をすることが出来ると僕は思う。

健康の提供とは身体が好調になることだけではない。
心身ともに良好になることだ。
僕は飲食業を営み薬剤師の知識を活かした心身ともに健康になれる場を作りたい。
そのための資金づくりとして「薬局運営」を選んだわけだ。

「そんなことを考えていたんですね。知らなかった。」
「あまり自分の夢や野望は恥ずかしくて言えなくてね。ただこの薬局のスタッフは僕の想いや考えを知ってほしいと思って、まず2人に伝えてみたんだよ。
薬局運営以外にも不動産運営も考えているんだけど、それもあくまで「地域住民の健康意識を高める事業」に繋げるようにするよ。」
「色々考えているんですね。わかりました。私も少しでも地域の人たちに何が出来るか考えてみるようにしてみます。」
「私も、まずは保険調剤の勉強をちゃんとするようにしてみますね。」

僕はこの食事会で初めて妻以外に自分の夢を伝えてみた。
自分の夢を語るのは気恥ずかしいが、考えを伝えないと人は付いて来てくれない。
人間だからその都度考えは変わることもあるだろうが、スタッフを始め色々な人と話して自分が今考えていることを伝え自分の考えるビジネスを確立していこう。
想いは伝えた。あとは行動していくのみだ!

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