シェフィールド大学での前期を振り返って
このnoteでは、シェフィールド大学で半期を過ごした今、留学前に抱いていた目標・目的はきちんと実行できているかを確認したり、現地での授業の様子や学生の雰囲気など、学科としては10年以上ぶりとなる日本人の目線でお伝えしていこうと思います。
1. 簡単な自己紹介
はじめましての人のために簡単に自己紹介をしておきます。私はイギリスにあるシェフィールド大学の修士課程(音声言語処理専攻)に、2019年9月より留学中の学生です。ちなみに東京の某理系国立大学の学部出身です。詳しい経歴などは、Twitterのプロフィールに貼ってあるリンク先から適当にみてください。
2. どうして留学しようと思ったのか?
この辺のことは全て、ブログやnoteに書いてあるので省略します。ただ触れておきたいのは、自分の専門分野について研究が盛んな大学で、学習 & 研究意欲のある人たちと切磋琢磨して、より刺激を受けたいと思ったことが決断の鍵になっています。
3. 実際、修士のイギリス留学ってどんな感じ?
・詰め込み教育
イギリスの修士は普通の修士とは異なり、約1年で修了となります。そのため、2年の修士プログラムよりはかなりの詰め込みカリキュラムになっていると思います。実際、前期を経た感想としては、学部時代の最も忙しかった時期と同じくらい忙しかったです。具体的に言うと、土日も含めて四六時中課題やテスト勉強に取り組まないと処理しきれない量のタスクが課されます。特に学期末はテストや課題の締め切りが集中するので、より過酷さが増します。
・きめ細かい専門性
学部で基礎を身につけていることを前提として講義がなされるので、履修科目はほぼ全て各専攻に関連した科目のみで構成されます。例えば自分の場合は音声言語処理専攻なので、音声処理や自然言語処理に加えて機械学習に関する講義 + αを前期に履修しました。このように、学びたいことを集中的に学べるのはメリットの一つかもしれません。
・充実した教員陣
各科目を担当する先生方は文字通りその分野のエキスパートと言える先生方でした。自然言語処理の科目であれば、ACL系の論文を何本も通している先生が講義を担当していたり、機械学習であればICML等に...(以下略)といった感じです。大学として学生からのフィードバックを重視しているからか、教えるのはかなりうまいなあと常々思っていました。また、各科目は実験と講義がセットになっており、担当の先生方は実験にも顔を出してくださるので、質問しやすい環境が整っていたように思います。
> 実験に関してネガティブなことを挙げるとすれば、TAの学生の中にきちんと準備してきていない方がいたため、そういった人に質問してしまうと、不明瞭な答えしか返ってこないことがありました。
4. 留学前の目標や目的は達成できてる?
研究以外の部分に関して言えば、「もっと勉強しなくちゃ。」と自然に思えるくらい周りから刺激を受けられているので、この時点で自分がシェフィールドに身を移したのは正解だったのかなと思います。日本にいた時よりも、より学びに貪欲かつ真摯になれている気がします。ということで、ブログやnoteに書いていた目標や目的は現段階ではきちんと実行できているのではないでしょうか。
研究については後期から本格始動するのでまだなんとも言えません... ただ、自分の専門とする自然言語処理や音声処理だけでもかなりの教員数がいることが修論の希望調査時によくわかりました。おそらく、各分野につき7〜8人以上は先生方(研究員を除く)がいるはずです。これだけ先生方がいれば、博士課程の学生もたくさんいるでしょうし、研究が本格化してきたらその恩恵を享受できるのではないかなと期待しています。
> 学科HPの教員一覧がしばらくの間更新されていないらしく、名前の載っていない先生がちらほらおり、最近 Computer Science (CS)の教員を増やしているという専攻長の話は本当なのだなと思いました。
5. 学科の雰囲気は?
若干大学のネガティブな面について言及することになりますが、CS学科の修士課程の学生のおそらく7割以上は中国人です。事実、授業前の教室に入ると、中国語しか聞こえてきません。似たような顔つきの僕には、当然かのように中国語で話しかけてきます。もちろん、こういった人種に関することは大学のHPには掲載できるわけがないので、入学前に知る由もない話ですね。
オリエンテーションの写真:
黒髪の人のほとんどが中国からの留学生です。
ただ、中国人ではない少数派の学生はその学生同士で会話が生まれやすくなるので、より様々なバックグラウンドを持った方々と仲良くなれるチャンスが上がります。なので、もしもシェフィールドに留学をしたいと思っている日本人の方がいれば安心してください。少なくとも僕は、社会人経験ありのイギリス人とチリ人の方々と仲良くなることができ、日々切磋琢磨できています。
さらに朗報?で、学部生を含めて学科に日本人は僕だけしかいないので、他の日本人に頼るというのは不可能です。一緒にやっていく仲間を見つけたければ、自分から話しかけにいくしか手段がありません。こういった環境が好きな人にはシェフィールドはバッチリの環境だと思います。
学科の研究棟をパノラマ写真で撮ってみました。研究棟の中に専用の自習室が確保されているので、図書館が混んでいるときでも気軽に使えます。
6. シェフィールドでの留学事件簿を教えて?
留学はいいことばかりが起きるわけではありません。ネット上に転がっている留学体験談はポジティブなことばかり書かれているように思うので、ここではあえてネガティブなことを書いていこうと思います。
では、本題の事件簿に移っていきましょう。今回はグループワーク関連で2本お届けします。
・事件簿 ①「英語が...」
所定の英語4技能を測るIELTSかTOEFLのスコアを取らないと大学院に入学できないはずなのに、実はきちんとした英語が書けない学生がいます。
音声処理の授業で一緒にグループワークをすることになった、中国人の方(A君とします。)も残念ながらこのカテゴリに片足を突っ込んでいました。どのような感じで酷かったか説明すると、レポートでスペリングミスを何箇所も平気で放置していたり、主語と動詞が対応していない等の文法ミス(エラー)が多発していたことや、アカデミックライティングの基礎がなっていなかったことが挙げられます。
アカデミックライティングについては学部時代にきちんと教わらなかった or 論文の執筆経験が浅く、定着していなかった可能性もあるのであまり責められません。しかしながら、それなりの語学スコアを持っているはずなのに、スペリングミスを放置したり、いい加減な文法を使っているのは、一体どういうことなのかと思わざるを得ません。
事の発端としては、グループワークのミーティング中に、僕が実装をほとんど仕上げる代わりに、レポートをA君が仕上げるという約束をしていたことに始まります。自分が実装を終わらせて2〜3日後に、A君から、「実験レポートを仕上げたから、提出前に確認してくれ。」というメッセージをもらい、そのレポートを確認すると、上述のような有り様でした。中には、ミーティング中に議論して決めた主張と真逆の主張を書いていたりするケースもありました。このままのレポートでは提出できるわけがないので、A君が清書してくれたレポートを半日がかりで全て朱入れして修正するという羽目になりました。
後日、A君に口頭でレポートの話をしてみると、「君のレポートの書き方は非常に参考になったよ。」との旨のお礼を言われましたが、果たして本当に彼のためになったのかはわかりません。音声処理の分野でPhDを目指しているとアピールしていた、A君。きちんと課題に取りくもうよ...
以上、イギリスのそれなりにいい大学に通っていても、きちんとした英語を書けない学生は存在するという知見 (事件簿)でした。
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・事件簿 ②「俺は知恵袋ではない。」
「Software Development for Mobile Devices」という科目でのグループワークの話です。この科目では、Android向けアプリの設計思想やAPIの仕様等について講義で学び、実験で実際にそれらを取り入れた簡単なアプリを開発します。評価はある仕様書に基づいたアプリを最大3人のグループで開発し、その項目別の出来栄えや報告書等の内容で評定の100%が決まります。実装の分担は仕様書ですでに決められているので、かなり公平なグループワークになっていたと思います。
さて、登場人物は中国人のB君です。先ほどのA君とは専攻が異なる別人です。B君はイギリスの大学の学部を卒業しているので、英語に問題はないのですが、ソフトウェア工学を専攻し、インターンシップでAndroidのアプリ開発経験ありと言っていた割には、本当なのかな?と思わせてくる人物でした。ここで断っておくと、自分はこの科目を履修するまでAndroidのアプリ開発経験はなかったですし、Javaすら1年以上触っていない状態でした。
実際に頻発していた事例としては、「〇〇 の使い方がわからないから教えて。」とメッセージを送ってくるケースと、締め切りまで毎週設けていたミーティング中に、「〇〇がわからなかったから、△△の実装ができなかった。」と泣きついてくるケースの二つでした。
いずれにせよ教えないと前進できず、戦力として役に立ってもらえないので、自分がすでに理解しているケースであればその場で教えていました。一方で、自分がその場でわからないケースは、「わからない。」と断りをいれてから、後ほど調べて送り返していました。
もちろん教える前にググって調べたか?と聞いていましたが、答えは定番の、「調べたけど見つからなかった。」というものでした。いちいち教えるのもリソースが食われすぎるので、最終的にはミーティングをした時だけ教えるようにして、あとは該当のドキュメントや参考になりそうなサイトのリンクを送りつけて対処していました。一番びっくりしたのは、Gitの使い方を知らなかったことですね。これを聞いて、一体今までどうやって開発していたんだ...と途方に暮れた記憶があります。
B君とのグループワークで最悪だったのは、質問が多すぎることよりも、お互いに決めたはずの期日までに担当箇所の実装を終わらせてこないことでした。当然の帰結ですが、彼の担当箇所が〆切に間に合わなそうだったので、僕が一部肩代わりして無理やり終わらせることに。インターンシップで開発経験ありと言っていたにも関わらず、これまで開発経験なしだった僕の実装スピードよりも遅いというのは、ただの怠慢なのでは?と当時はキレ気味で思っていました。
長々と述べてきましたが、ここで強調したいのは、数百万円もの授業料を払ってまでイギリスの大学の修士課程にわざわざ進学しているにも関わらず、学ぶことに真摯でない人がちらほらいることです。おそらく、こうした類の人は、学位が欲しくて留学しているだけで、それ以上でもそれ以下でもないのでしょう。別にそれでも構わないですが、他人の迷惑にならない範囲で手を抜いて欲しいなと思います。
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以上が前期の事件簿 * 2です。もしこのnoteを読んでくださっている方の中でイギリスの大学院修士課程への出願を考えている方がいれば、上述したような事件も発生しうることを念頭に置いておくと、より充実した留学生活が送れるのではないかと思います。
7. 卒業後はどうするの?
2020年の9月に無事卒業できたら、そのまま博士課程に進むか、研究開発系の仕事に一旦就くことを考えています。研究開発系の仕事で面白そうなお話があれば、TwitterのDMなどでお声がけいただけると幸いです。また、来年のAAAI @New York には参加する予定なので、その期間中に直接お声がけいただくのも歓迎です。
8. まとめ
このnoteではシェフィールド大学での前期の振り返りをメインにしてきましたが、シェフィールド大学CS学科の修士課程の光と陰の両方をバランスよく?紹介できたのではないでしょうか。アメリカCS留学体験記はそれなりに数がありますが、イギリスCS留学体験記は見かけたことがないので、少しでもご参考になればなと思います。
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