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トラストサービスを巡って: 理系と文系の発想の違いが混乱を招いている、か?

デジタル空間(サイバー空間)とリアル空間(フィジカル空間)については、大きくスタンスが分かれているように思われます。

2つ、特徴的な団体を見つけたので、比較してみたいと思います。

1.デジタル証明研究会

文系研究会、と言えるでしょう。法学者や官庁OBが中心に集まっていますね。
委員で理系出身は警察庁の元局長のみ・・・でしょうか。

文系の研究会だけあって、(Web 2.0 と Web 3.0 の)構造の違いによって、どのような問題(詐欺)が生じ、救済手段があるべきか、を検討しています:
 ● Web2.0 → プラットフォーマーに責任があると考えるのが基本
 ● Web3.0 → 被害者に責任があると考えるのが基本

「Web3.0 では通常の一般的な生活者が情報弱者となる上、個人情報を含む自らの情報を自分で守らなければならなくなります。「Web3.0の技術・サービスをめぐりグローバルで様々な問題事例が生じており、利用者保護が喫緊の課題となっている」ことが指摘されています(デジタル庁「Web3.0研究会報告書」p.37等)。」と書かれると、背筋に悪寒が走りますね。


まだ7月に立ち上がったばかりの研究会のようですが、法学者を中心とした集まりですので、デジタル空間(サイバー空間)とリアル空間(フィジカル空間)は別物であることを前提としながら、どういう結合の仕方があるか?そこから漏れる人をどう救済するか? などを議論していくのでしょう。

2.デジタルトラスト協議会

慶應義塾大学の最後の「工学部」生で、現在は慶應義塾大学の教授を務める手塚悟先生が代表の研究会。バリバリの理系集団ですね。

デジタル空間(サイバー空間)はリアル空間(フィジカル空間)を転写するものと書かれています。

◆ルール形成委員会 ホワイトペーパー
 (特にp.22)

https://jdtf.or.jp/report/whitepaper/file/JDTF-RMWG%E3%83%9B%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%BCVer1.0s.pdf

とすると、デジタル空間(サイバー空間)とリアル空間(フィジカル空間)とは本質的に同質ということが前提になっているということのように見受けられますね。

ただ実際は、デジタル空間(サイバー空間)はインプットされたものしか把握できない空間なわけで・・・ 

そして、デジタルとリアルの差分(またはハザマ)に落ち込んでいくのは人間ですので・・・

デジタル空間(サイバー空間)を、どれだけ精緻に再現できるかがポイントになるのでしょうか・・・

デジタル空間(サイバー空間)をどれだけ信頼できるか、という点の議論も聞きたいと思いました。

3.一旦のまとめ

文系と理系で、デジタル空間(サイバー空間)とリアル空間(フィジカル空間)の関係について、ほぼ真逆の捉え方をしているように見えました。

このまま混乱した状況が続くのか、それとも文系・理系を綜合して、妥当・穏健な議論がスタートしていくのか、興味があります。

特に、現政権の首相や大臣などのように、きちんとしたデジタル法制の構築に無関心であることを隠そうともしない(開き直った)状況下では:

こういった協議会・研究会などの合従連衡のあり方が日本の将来のための議論を決めていくことになるのでしょう。

民主導でのルール作り、と言えば聞こえはいいですが、溺れる者たちのためのわらにならないよう、適切な連携を図ってほしいですね。

引き続きウォッチしていきたいと思います。

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