見出し画像

【保存版】バーティカルSaaSを探る

注) 2021年4月版の最新データをこちらで更新しています。

企業データが使えるノートでは、SaaS企業のKPIをデータベース化し、公開を予定しています。

今回はその対象となる国内バーティカルSaaS企業に関するまとめです。
* 本記事については今後有料化する可能性があります

//////////////////////////

バーティカルSaaSの情報はまとまっていない


「代表的なSaaS企業は?」と聞かれたらあなたはどう答えるでしょうか。

Sansan , Freee , マネーフォワード , サイボウズーーー

実際に自分がユーザーであったり、CMなどでも知名度が高いこれらの企業名を答える方が多いのではないでしょうか。

これらの企業が提供するサービスは全てSaaSの中では"業務課題"を解決するホリゾンタルSaaSと呼ばれる区分となります。

2019年のIPOマーケットは、ホリゾンタルSaaS企業の年でした。

公募価格ベースの時価総額上位5社には、1位、2位をSansan , Freeeが時価総額1,000億円規模で上場し、Chatworkも500億円を超える規模で上場を果たし、SaaSというワードを一般的なビジネス用語として定着させました。

< 2019年 公募価格ベース時価総額 ランキング >

画像5


一方で、"業界課題"の解決を提供するバーティカルSaaS

この代表的な企業をあなたは何社挙げることができるでしょうか? 

バーティカルSaaSは、業界特有の非合理を解消する、深いソリューションを提供できる点に特徴があります。

一方で「業界」に閉じたサービスの提供となるため、SaaSサービスとしてのマーケット規模がホリゾンタルSaaSに比べると相対的に小さいと言われています。

そのような状況を反映してか、ボクシルのSaaSカオスマップも「Horizontal SaaSマップ」は存在しますが、「Vertical SaaSマップ」は、作成されておらず、横断的にバーティカルSaaSをまとめた情報はないようです。

そこで、企業データを使えるノートでは、公開情報や各社の資金調達情報を丹念に調べ、30社のバーティカルSaaS企業情報を集約、「バーティカルSaaSデータベース」を作成しました。

この数年でも多くのSaaS企業が立ち上がっていますので、ここで記載以上にたくさんの企業があるとは思いますが、今回は、主にシリーズA以降の資金調達を行っている企業・サービスを集約し、各業界における代表的なバーティカルSaaS企業をまとめました。

もし、入るべき企業が抜けているというご指摘があれば、コメントまたはTwitter DMにてお知らせいただけると幸いです。

< 記事でまとめたこと >
・ ラウンド別バーティカルSaaS一覧
・ 既に上場を行っているバーティカルSaaS企業
・ 現在、未上場のバーティカルSaaS トップランナー
・ 公開情報から見るVCの投資状況
< データ集約方法 >
・公開情報や資金調達のプレスリリースを基に各企業をリスト化
・リクルートなどSaaS専業でない場合も一部対象
- 対象企業 -
ABEJA、コドモン、カミナシ、トレタ、インフォマート、カケハシ、フルカイテン、ユビレジ、リクルート、TableCheck、メドレー、クリプラ、A1A、エス・エム・エス、オクト、アペルザ、スマレジ、ロジサード、アルム、オープンルーム、空、SQUEEZE、DentaLight、Ubie、hokan、スタディプラス、Non Brokers、KURASERU、イノービア
後日追加 ) Mikatus、Housmart、atama plus

バーティカルSaaSラウンド別まとめ

各業種ごとに外部資金調達を行った企業をラウンドごとにマッピングしました。

オーラス_VS

■ 上場企業
上場カテゴリーの中では、SaaSをメインビジネスとなる企業はロジザードスマレジインフォマートの3社となり、バリュエーションを比較する際はこれらの企業がピュアに比較し易いかと考えています。

スマレジはチャーンレートなどのSaaS KPIを決算説明会資料の中で開示している数少ない企業で、SaaS KPI開示におけるトップランナーと言えます。

昨年上場をしたメドレーは人材ビジネスが主力ですが、オンライン診療システム「CLINICS」を、エス・エム・エスは介護業向けのシステム「カイポケ」を成長戦略の柱に据えています。

リクルートライフスタイルが提供をする「AirREGI」は有料サブスクリプションのピュアなSaaSモデルではありませんが、リクルートのアセットを活かした"SaaS的要素"を含むサービスであり、既存事業からSaaS展開しようとしている企業にとって学びが多い事例と言えます。(スマレジ、ユビレジとの対比のため、上掲しました)

■ バーティカル SaaSトップランナー インフォマート

一般的な知名度は高くないですが、東証一部に上場をしているインフォマートはバーティカルSaaSにおけるトップランナーの1社です。

当社は、主力のサービスとして、国内飲食店仕入高の約 2 割が流通する受発注システム「BtoBプラットフォーム」を提供しています。

インフォマート

「BtoBプラットフォーム」はSaaSが注目されるずっと以前の2000年代前半から「ASP受発注システム」としてサービス提供されています。

それまで以前は各店舗ごとで食品卸会社に電話とファックスでやりとりされていた受発注を、ASPシステムで可能にすることにより、発注ミスの防止、効率化、チェーン本部での数値可視化や会計への速やかに反映を可能にしました。

飲食店での煩雑な受発注というユーザーペインにいち早く目を付け、ソリューション提供できた同社の現在のARRは手元集計ベースで約80億円。

売上高成長率は足元で10%程度ですが、15年以上に渡り最終黒字を計上する収益性が評価され、コロナショック後の2020/4/6時点においても時価総額1500億円を越える評価を得ています。

■ スタートアップ
各社のラウンド情報を見ても現時点においては企業価値1000億円以上のバリュエーションがつく、いわゆるユニコーン企業は存在していません。

資金調達額に目を向けると、ホリゾンタルSaaSでは2019年にフロムスクラッチが100億円という巨額の調達を行いましたが、バーティカルSaaSでは、カケハシの26億円が最高額となっています。


ラウンドが先行しているスタートアップとしては、飲食業で予約台帳サービスを展開するトレタTableCheck、建築・建設プロジェクト管理サービスの「&ANDPAD」を提供するオクト、がラウンドCに進んでいる状況です。

ABEJAStudyplusはラウンドCのカテゴリーですが、ピュアなSaaS企業としての評価ではなく、既に自社にある技術や顧客基盤をもって、SaaS展開を行っている企業となります。

■ 企業価値オーバー100億円の2社

資金調達から算出される企業価値において、100億円を越える評価を得ている企業が前出のトレタとクラウド型電子薬歴システム「Musubi」を提供するカケハシです。

2社ともに未上場企業であるため、売上高やKPIの公表は限定的ですが、公開情報からもう少し詳細に見ていきたいと思います。

トレタ
- 導入店舗数 12,000店(2018/10時点)
- 継続率 99%

トレタのベーシックプランの月額は12,000円であり、年間のミニマムのAPRUは14万4,000円。12,000店で1IDずつの導入とすると、低く見積もってもARRは17.28億円。

Initial によると、企業価値195億円は2018年12月の資金調達ベースですので、ARRマルチプルで10倍程度で評価された形でしょうか。ARRマルチプルで10倍は高い水準だと思いますが、上記の通りチャーンレートが非常に低いため、通常のSaaS企業よりも高めな設定がされている可能性があると思います。

さらに、ARR成長率が30%と仮置きした場合、2020年では、概算ARRが30億円となりますので、同様にマルチプルがついた場合で300億円程度の企業価値と推測します。

Musubi
" カケハシは2018年3月に行われたB Dash Campピッチアリーナで優勝したスタートアップだ。壇上に上がった代表取締役の中尾豊氏は、同社の月次売上高はその当時すでに4000万円に達していると話し、会場を驚かせた。現在、Musubiには約8000店舗からの問い合わせがあり、それらの店舗への導入率は約6割"(techcrunch

上記から、2018年3月におけるMRRは4,000万円とすると、ARR4.8億円。カケハシは2016年創業ですので、SaaSの理想的な成長スピードT2D3を当てはめ100%成長率で2年とすると、2020年3月では約20億円のARRが順当な水準と推測されます。

カケハシの企業価値はInitialの評価額で128億円。ARRマルチプルで6倍前後といった形でしょうか。

バーティカルSaaSスタートアップの投資家

画像4

各社の資金調達プレスリリースを見ると、複数社で同様のベンチャーキャピタルの社名が見られました。

上記の32社を対象とすると、米国発祥のベンチャーキャピタル500 Startups  (現Coral Capital)、SaaS界隈では知名度の高い前田ヒロさんがパートナーを務めるBEENEXTが6社、B2B特化型の投資を行うDNX Ventures、salesforce Ventures、GLOBIS CAPITALが3社、Genesia Ventures、UB Venturesが2社投資を行っていました。

カミナシ、オクトは共に上記VCの4社からの投資を受けており、SaaS投資家から高い評価を受けていることが伺えます。

//////////////////////////

いかがでしょうか。

上記の記事をまとめる上で元となったデータについて以下のファイルからご利用がいただけます。(データの再配信や無許可での転載は出来かねますので、利用を希望の際はtwitterアカウントまでご連絡ください。)

今後、このデータベースについては定期更新の上、お届をしていく予定です。

この記事が少しでもお役に立てましたら「スキ」やTwitterなどでコメントいただけますと大変励みになります!

お読みいただきありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?