【緊急取材】SmartHRがIPOではなくレイター調達を選ぶワケ
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国内SaaSスタートアップのトップランナーがまた大きなニュースを公表した。
2024年7月1日、労務・人事領域のクラウドサービスを提供するSmartHRは、資金調達シリーズEラウンドで約214億円に及ぶ契約を締結したことを明らかにした。
総額のうち新規株式発行に伴う第三者割当増資は100億円程度となり、残りは、既存株主持ち分の一部売り出しによるセカンダリー取引となっている。
新興株式市場低迷によってスタートアップの調達環境が悪化する中でも、堅調な業績成長を基に、ファイナンス面で前進を見せた形となった。
一報を受け、筆者は率直な反応として「まだIPOではないのか」という驚きを感じた。
今年3月、SmartHRは自社のARRが150億円に達したことを公表しており、上場SaaS企業の中でも上位の規模感であることから、新規上場は間もなくという見方もなされていた。
順風満帆な拡大をみせるなかで、あえて未上場企業であることを選択した今回の資金調達にはどのような狙いがあるのだろうか。
Next SaaS Media Primaryでは、7月1日に行われた記者会見に参加し、SmartHRでCFOを務める森氏に緊急で取材を行った。
海外投資家を交えた大型調達の意思決定の意図、そして、そこから見据える成長戦略を探っていく。
214億円ディールは海外投資家が支える
今回のSmartHR資金調達シリーズEラウンドは、2021年6月に公表されたシリーズDラウンド以来、3年ぶりの資金調達となっている。
前回ラウンド時は、上場SaaS企業の平均PSRが20倍を超えるまさにSaaSバブルとも言えるバリュエーション水準であり、SmartHRもARR45億円に対し、企業価値評価は1,731億円という破格の評価を受けたことが話題となった。
今回の会見のなかで、直近の企業価値評価額についての質問もなされたが、現時点では「未公表(森氏)」との回答であった。
登記簿情報などからも追って推定されるが、Next SaaS Media Primaryでは、3月末に行った分析において、前回ラウンドの評価額を越える水準にあると見ている。
今回の資金調達では、カナダの年金基金であるオンタリオ州教職員年金基金(OTPP)、米国投資ファンドのKKRが共同でリード投資家をつとめ、既存投資家のWiL、Light Street Capital がフォロー投資を行っている。
OTPPは、いわゆる海外機関投資家であり、日本でのスタートアップ投資では初めての案件となっている。KKRは、これまで会計システムを提供する弥生の買収(PE投資)や、データX(当時フロムスクラッチ)への投資実績があり、今回のSmartHRもグロースファンドからの出資がなされている。
国内でも有数のユニコーン企業の大型ファイナンスを海外投資家が支えた構図だ。
また「既存投資家で全株を売り出した株主はいない(森氏)」とのコメントから、これまで投資を行っていたVCのセカンダリー取引を主目的としたディールではなく、追加投資も含め、これまでの投資家も引き続き成長期待を寄せた上でのラウンド組成であることが伺える。
ここからは、実際の森氏へのインタビューをお伝えしていく。
「まだIPOを選ばなかった」SmartHRの視点を探る
ーーー 既にSmartHRのARRは150億円に達し、上場可能な規模感です。IPOではなく、未上場のラウンドを重ねた狙いを教えてください
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