SaaS上場企業ARRランキング 2020/06
(お知らせ)
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企業データが使えるノートでは、SaaS企業のKPIをデータベース化し、公開しています。
6月のスマレジ、延期されていたサイボウズの決算発表を受け、最新数値にてSaaS上場企業のARRを集計しました。可能な限り前提が同一となるよう、以下基準を設けて数値を取りまとめています。
ARRの集計について
[ 採用数値 ]
・ 開示ARR・MRRがある場合はその数値を採用
・ 公表期末MRR(月次売上)×12がベースとなる
・ MRRの公表がない場合、直近四半期単体売上×4にてみなしARRとする
[ 対象資料 ]
・ 決算説明資料 / 決算短信
・ 適時開示のよる月次売上公表資料
・ リカーリングレベニュー以外の売上高は可能な限り除外
上場企業 ARRランキング 結果 2020/06
前回記事では、MRRの開示がない場合に四半期単体の売上高をベースにしていましたが、月次の売上開示を行っているラクス、サイボウズは5月までの公表数値を採用し、12か月換算にて算出をしました。
上位企業のARRは100億円、成長率は30%前後で推移をしており、時価総額1,000億円への確実な目安として今後も意識される数値感かと思います。
個別に企業を見ていくと、クラウドサインへの期待感から2,000億円を超える時価総額に達した弁護士ドットコムですが、サービス該当セグメントである「広告その他サービス」の換算ARRは11.3億円です。
成長率は72%と高い水準ではありますが、現時点でのARR規模に対しては、過熱感が強い状況です。
上記は、ランキングの表を、ARR×成長率でプロットした散布です。
今回は、新規上場のサイバーセキュリティクラウドを集計対象としています。ARR規模は比較的小さいですが、YonY+55.8%での高い成長率となっています。
年初から継続的に株価が上昇し、PSRが20倍を超えてきたHENNGEですが、ランキングで対象としている「HENNGE ONE」ARR成長率は、23%です。
特段低い成長率ではないと思いますが、現在のバリュエーション期待としては、ここからの更なる成長加速が求められているように思われます。
グローバルなIDaaS企業であるOktaも本格的に日本市場への参入が報じられていますが、この強敵を迎え撃ちつつ、株式市場からの期待に応えられるか、勝負のタイミングを迎えています。
今後IPOが期待されるSaaS企業
新型コロナウイルスの影響によって上場の延期報道が見受けられた2020年上期ですが、SaaS企業については今年上場を行ったサイバーセキュリティクラウドをはじめ、堅調な株価推移を見せています。
現在、株式市場での投資対象としてSaaS企業の絶対数が少なく、マルチプルも高い状況ですので、2020年中にもIPOを行うSaaS企業があるのではないかと個人的に見込んでいます。
資金調達のラウンドや調達額から、1,2年内にIPOが期待されるSaaS企業をピックアップしてみました。(あくまで予想です)
■ Smart HR
ラウンド: シリーズC 2019-07-22
想定評価額: 307億円
累計調達額: 82億円
今後のSaaS IPO、そしてARR100億円企業への本命の1社は、Smart HRだと思っています。
売上高は、公表されていないものの、自社採用資料中でSaaSの理想的な成長スピードT2D3ペースとなっていることに言及。また、NRRも125%という高いアップセルの実績を見せています。
* なお、現時点までT2D3ペースで上場を行った国内企業はない(過去記事より)
* 右肩上がりの美しいコホート
出資元であるALL STAR SAAS FUND 前田ヒロさんの発信などを見ていてもSmart HRへの言及、費やしている時間の長さが伺え、ファンドのPower Lawを担うディールであるかと思います。
■ フロムスクラッチ
ラウンド: シリーズD
想定評価額: 331億円
累計調達額: 145億円
フロムスクラッチは、昨年、シリーズDラウンドにおいて、KKRから40億円の出資を含め調達総額が100億円を超える(SaaS企業では過去Sansanのみ)など、SaaS未上場企業として最も高い評価を受けている1社です。
なお、官報などを含め売上高等の開示は確認できませんでした。
■ プレイド
ラウンド: シリーズC
想定評価額: 446億円
累計調達額: 34億円
売上は未開示ならがも、事業収益は2017年3月に単月黒字化を達成。
KARTEの成長が売上高をけん引し、T2D3ペースで拡大している、とのことです。
■ ベルフェイス
ラウンド: シリーズC
想定評価額: 229億円
直近の資金調達は2月のコロナ影響を受けるか、というタイミングでした。
一方で、リモートワークやオンライン営業での恩恵を最も受けたサービスですので、調達時よりもバリュエーションが上がっていることが予想されます。
特に無償でのサービス提供は、「2020年4月末から5月のゴールデンウイークあたりまでに利用登録のあった企業は1万1000社」という尋常ではない数のリードを獲得しており、今後有料契約も飛躍的に伸びていくと思います。
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昨年に上場をしたフリー、Sansan、Chatworkなどの株価を見てもIPO時のバリュエーションを大きく上回る推移となっており、引き続きSaaS企業にとっての株式公開タイミングとしては、良い地合いが続いています。
上記ARRランキングの対象はまだ20数社ですが、上にピックアップした企業を含め、ARR100億円を超える企業が多く見られることを期待しています。
以上です。
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