これまでの国内SaaS T2D3の話をしよう
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T2D3はSaaSスタートアップの理想的な成長速度として日本でもたびたび言及されてきました。
PMF(Product Market Fit)後、5年間で72倍成長を目指すことをBattery Ventures Neeraj Agrawalが提唱したコンセプトです。
Primary(旧:企業データが使えるノート)を開始した4年前は、国内SaaS関係者にとって下記のグラフは"あくまでグローバルSaaSの指標"という雰囲気がありました。
それもそのはずで、2020年においては、Sansanが国内SaaS企業ではじめてARR100億円超えたばかりであり、日本からT2D3SaaSが誕生する気配はまだありませんでした。
当時はPrimaryでも最もT2D3成長に近かったSansanやfreeeを題材に成長スピードを検証していました。
そこから4年が経過し、SaaSの浸透、コロナ禍によるオンラインワークの普及、労働力人口の減少に対応するための効率化、そして、野心的なスタートアップの取り組みにより「T2D3超え成長」を達成する事例が出始めています。
ここでは、国内T2D3企業の動向とその特徴をQuick Reportとしてまとめていきます。
紛糾するT2D3論。為替換算で難易度1.5倍?
まず、改めてですが、T2D3の定義を振り返りたいと思います。
よく成長中のSaaS企業が「ARR1,000万円→1億円まで2年間で達成。T2D3を上回るペースで拡大中!」とリリースする例がありますが、これは"T2D3原理主義者"からすると正確ではありません。
Battery Ventures Neeraj Agrawalの記事を参照すると、PMFの目安をARR$2Mとし(基準年:Year0)その後、3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と成長、5年後にARRがARR$144M、そして、バリュエーションが$10B(つまりユニコーン規模)が提示されています。
そもそも、記事中では、海外市場を含めた展開が想定されており、日本市場のみを狙うSaaSがこのグローバルT2D3基準を目安とすべきかという疑問もあります。
この基準に加え、この4年間で為替が大幅に変動したことも厄介です(汗)
2020年3月15日は1ドル=105円だったので、当時は、少し丸めて、ARR $1M=ARR100億円というような換算が可能でしたが、1ドル=150円近辺で推移する2024年においては、T2D3の到達は日本円換算 ARR$144M=216億円と難易度がグッと高めになっています。(ユニコーン企業は時価総額1,000億円じゃない問題もあります)
ここで「何のためのT2D3か」に立ち返ると、ポイントの一つは、企業価値評価10億ドル(米国での)を超えてIPOに向かうことができるかという点だと思います。BVP Nasdaq Emerging Cloud Indexの採択企業の時価総額の下限もおおよそこの水準です。
これを「日本版」で考えると、株式市場で機関投資家の投資スコープとして時価総額1,000億円程度、また国内SaaS市場におけるPMF目安をARR1~2億円程度ととして、T2D3を刻み、ARR100億円に到達していくようなイメージが実態に合っていそうです。
このような基準感については、SmartHR COO倉橋さんもこちらの記事で以下の通りコメントされています。
まとめるとこんな感じでしょうか。
日本版の72億円と144億円では、大きな違いですね。(汗)
個人的には「PMF後、5年でARR100億円」というのが一つの目安として良いのではと考えています。
理由は、現時点において、同規模感(ARR100億円前後)の上場企業2社(インフォマート、プラスアルファ・コンサルティング)の時価総額がちょうど1,000億円前後で推移しているためです。
オリジナルのT2D3の記事が書かれたのが2015年ですので、状況変化や解釈の違いも当然ありますが、日本版T2D3としては「PMF後に急速成長して5年でARR100億円、時価総額1,000億円を超え、そしてIPOへ!」という共通理解でいかがでしょうか(提案)
なお、T2D3はProduct-Market Fit後を想定したARR成長速度ですが、PMFと経常収益の関係については、米国Foundry VCのパートナー兼共同創設者であるBrad Feld氏による以下の記事が参考になります。
われこそはT2D3成長!スタートアップをまとめてみる
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