もはや「隠れSaaS企業」ではないスターティアホールディングスの進化とは
月額有料マガジン「企業データが使えるノート」では、
「アナリストにSaaS企業分析・データ作成をアウトソースできる」
をコンセプトにSaaS企業に関するデータ・コンテンツを発信しています。
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本記事は企業データが使えるノートがスターティアホールディングス社に行った個別取材内容を基にした同社の分析コンテンツとなります。
* 個別株式投資などを推奨する意図はありません。
投資家の方、SaaS関係者、今後SaaS事業への展開を検討している方に役立つコンテンツとなっています。
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SaaSビジネスへの事業転換で株価を1年で3倍にした企業がある。
中小企業向けのITインフラ構築支援を主軸とする東証1部上場企業、スターティアホールディングス(以下スターティアHD)だ。
元AKB48の指原莉乃さんを大々的に起用したCMで同社のSaaSブランド「Cloud CIRCUS」を知った方もいるだろう。
一般的にはいわゆる中小企業向けIT商社として知られるスターティアHDは「Cloud CIRCUS」シリーズプロダクトの成長を加速させ、SaaSビジネス主体の企業へと転身を図りつつある。
高い成長性が注目されるBtoB SaaS領域とはいえ、同社ほど大胆に事業転換を図る企業はレアケースだ。
企業データが使えるノートでは1年前の2020年10月から取材を行い、継続的に事業の進捗をウォッチしてきた。
ARRの成長や好調な株価、SaaSビジネスへの事業転換に対する意思決定の背景はどのようなものだろうか。
スターティアホールディングス取締役兼グループ常務執行役員でクラウドサーカス株式会社 代表取締役CEO 北村 健一氏、同 取締役兼グループ執行役員でファイナンス管掌としてIRを担当の植松 崇夫氏に事業転換の景色を聞いた。
スターティアホールディングスとは
スターティアHD(創業当時、有限会社テレコムネット)は1996年に創業しOA機器などの販売を開始している。2005年に東証マザーズ、2014年に東証一部に上場し、直近の売上高は133億円(2021年3月期)。時価総額は149億円と中小型株に分類される企業だ。
* 有価証券報告書より「企業データが使えるノート」が作成
創業以来、売上高は右肩上がり成長しているが、近年はやや成長率鈍化の傾向が見られる。この5年程では売上高営業利益率が5%前後と推移しており、今後の成長ドライバーとなる新事業や高収益を可能とするを新たな軸を模索するフェーズにあった。
セグメント別の売上では中小企業向けにOA機器の販売やメンテナンスを行う「ITインフラ関連」が8割「Cloud CIRCUS」などSaaS売上が主となる「デジタルマーケティング関連」が2割を占めている。
* 有価証券報告書より「企業データが使えるノート」が作成
現在は圧倒的に創業来ビジネスの「ITインフラ関連」比率が高いが、今後は「デジタルマーケティング関連」に注力する姿勢を打ち出している。
「弊社の経営陣で長期的に目指すべき時価総額を定めており、ITインフラ事業に加え、どのような事業であれば水準に達するか議論を続けてきた。その中でバリュエーション手法が確立しつつあるSaaS分野は自社で培ってきたプロダクトや知見を活かし企業価値を伸ばしやすい分野。集中投資を行う経営判断に至った(北村氏)」
このような経緯から2020年5月、ITインフラ主体の事業構造から、SaaSビジネスを中心とした企業価値構築を目指す中期経営計画が公表された。
* スターティアHD 2020/03期 決算説明資料
発表当時のSaaS事業ARRは12.7億円に対し、2024年度にARR48億円、CAGR30%達成を目指す意欲的な計画が掲げられている。
この公表から1年が経過した2021年3月期の通期決算発表では当初の想定ARR13.7億円に対し、実績ARR16.5億円と20%の上振れで着地をしており、順調な滑り出しで5か年計画の初年度を終えている。
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