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ポーランドは未だ滅びず <3>

歴史ストラテジーゲーム『Victoria 3』で高難度実績「Not Yet Lost」に挑戦したAAR(リプレイ)です。プレイするのは列強に囲まれた小国クラクフ。歴史上は10年後に消滅するこの国で、見事ポーランド=リトアニア共和国を再興できるでしょうか。

本文中の出来事はすべてフィクションです。実在の人物・団体・国家などとは一切関係ありません。


前回のあらすじ

列強プロイセン、オーストリア=ハンガリー、ロシアに囲まれた都市国家クラクフは急激に領土を拡張。ポーランド再興を果たし、独立を勝ち取った。しかし、ポーランド=リトアニア共和国再興のために残された時間はわずかばかり。果たして悲願は達成できるのか。

クラクフはポーランドに変態。独立を勝ち取ったが、残された時間はわずか16年。

覇権国家

オーストリア=ハンガリーから独立したポーランドは即座にフランスと関税同盟を結びました。本当はイギリス市場に入りたかったのですが、国際的な悪名が高まるポーランドと交渉してくれるのは、以前から防衛協定を結んでいたフランスだけでした。

この世界のイギリスは、フランスにGDPで3倍の大差をつける覇権国家です。一方、ポーランドの独立を許したオーストリア=ハンガリーは7位。ポーランドに国土を奪われたプロイセンに至っては19位と低迷しています。

1920年の列強ランキング。覇権国家イギリスがあらゆる面で他を引き離している。

ポーランドの次なる目標はポーランド=リトアニア共和国の再興です。そのためには、ロシアから3州、オーストリア=ハンガリーから2州獲得しなければなりません。実績を達成するには、再興後にロシアからあと4州獲得する必要があります。

東西ガリツィアには請求権を持っているため、悪名をそれほど増やさずに領土要求できる。

残された時間は16年。一度講和を結ぶと5年間の停戦期間が発生するため、領土要求の回数には制限があります。ルール上、停戦の破棄はできません。

さらに、侵略戦争をするたびに悪名が増加し、これが100を超えると世界の敵になります。悪名は時間経過でゆっくりと減少しますが、ポーランドにはそれを待っている余裕がありません。

1920年の市場。プロイセン主導の関税同盟は崩壊し、スペイン市場に組み込まれていた。

1922年、ロシアに3州の割譲を要求して外交戦を開始しました。停戦期間が終了した直後の行動です。もはや、じっくり好機を窺う余裕はありませんでした。これに対して、ロシアは同盟国を次々に懐柔。ポーランドは連合軍を相手に孤軍奮闘を余儀なくされます。

ロシア側の参戦国はオスマン帝国、ブラジル、太平天国、フィンランド。

この時、ポーランドが保護国になることを条件にフランスが参戦を申し出ていました。しかし、フランスを味方にしたところ、そのライバルであるイギリスがロシア側で参戦。イギリス海軍の通商破壊により国内経済は崩壊し、ノルマンディー上陸作戦の成功でフランスは降伏。宗主国が降伏したために戦争は終わり、ポーランドはなにも得られませんでした(1敗)。

圧倒的な物量を誇るロシア連合軍を相手取るために、ポーランド軍は一計を案じました。陸軍を防衛専門の第1軍と攻撃専門の第2軍に分けたのです。

  • 第1軍:防衛専門(歩兵のみで編成)

  • 第2軍:攻撃専門(同数ずつの歩兵と砲兵で編成)

防衛専門の第1軍。歩兵のみで編成し、防衛向きの特性を持つ将軍が指揮している。

一般的に歩兵は防御力が高く、砲兵は攻撃力が高く設定されています。この時代の歩兵は特に防御力が高く、簡単には突破できません。そこで、戦争初期は防衛専門の第1軍だけを動員し、ひたすら防衛に徹して連合軍が疲弊するのを待ちました。

戦争が長期化し、ロシアの同盟国が脱落したところで攻撃専門の第2軍を動員。防衛専門の第1軍は引き続き戦線の維持にあたらせ、攻撃専門の第2軍だけに攻撃命令を与えます。こうすることで戦争全体のコストを抑え、効率的に戦線を拡大できました。

攻撃専門の軍を砲兵だけで編成しないのは、砲兵の数が歩兵の数を超えるとペナルティが掛かるからです。歩兵の数は戦闘中に減少するので、歩兵を若干多めに編成すると良いでしょう。

攻撃専門の第2軍。同数ずつの歩兵と砲兵で編成し、攻撃向きの特性を持つ将軍が指揮している。

戦争は3年続きました。その間にイギリスとも戦争を始めたロシアは、首都サンクトペテルブルクを占領されて再び総崩れになります。さらに、オーストリア=ハンガリーでは社会主義革命が勃発しました。

ポーランドは要求通りロシアから3州を獲得して講和。ポーランド=リトアニア共和国再興に必要な州は残り2州になりました。

⌛ゲーム終了まであと11年(悪名81)

エジプトに侵攻したイギリスに対してロシアが介入。ロシアは二正面作戦を余儀なくされた。

新共和国

1926年、オーストリア=ハンガリーの革命が鎮圧されるのを待って、2州の割譲を要求しました。オーストリア=ハンガリーは革命中に破産し、もはや死に体です。

国力比較(1926年)

  • ロシア:GDP 100.0M、人口 74.8M

  • オーストリア=ハンガリー:GDP 76.2M、人口 44.2M

  • ポーランド:GDP 44.1M、人口 15.2M

  • プロイセン:GDP 36.3M、人口10.1M

GDPと人口は増え続けているが、識字率は低下の一途をたどっている。

外交戦では北イタリアの「回収」を条件にイタリアを懐柔。オーストリア=ハンガリーに味方する国はなく、戦争は1年で決着しました。

しかし、ポーランド側に損害がなかったわけではありません。オーストリア=ハンガリー軍は予想以上に手強く、戦争目標を占領するには全力で攻撃する必要がありました。その結果、ポーランドは債務不履行に陥り、しばらくは財政再建を余儀なくされます。

南北から挟撃されたオーストリア=ハンガリーは防戦だけで手一杯だった。

ポーランド=リトアニア共和国の再興に必要な州をすべて獲得したことで、ジャーナル「国々のキリスト」が完了。イベント「再臨」が発生しました。

数多の苦難を乗り越え、ついにポーランド=リトアニア共和国が復活。

さらに、新たなジャーナル「ジェチュポスポリタの拡大」がスタート。ウクライナと白ロシアに請求権を獲得しました。このジャーナルを完了すれば、最終目標の実績「Not Yet Lost」達成です。

ジェチュポスポリタはポーランド=リトアニア共和国の正式名称。

しかし、残された時間は10年を切っています。停戦期間を考慮すると、ロシアに対する領土要求は一度しかできません。その一度で必要な4州を獲得できなければ、これまでの苦労が水の泡です。

その上、ポーランド=リトアニアの悪名は限界ギリギリで、フランスとの防衛協定も失われました。今や世界がポーランド=リトアニアの敵になりつつあります。

⌛ゲーム終了まであと9年(悪名89)

復活したポーランド=リトアニア共和国の首都はもちろんクラクフ。

最終決戦

1930年、ロシアとの停戦期間が終了すると同時にポーランド=リトアニアが動きました。三度目となる対ロシア領土要求です。

要求するのは必要な4州すべてです。悪名は確実に100を突破しますが、残り時間を考えると一回の外交戦で決着をつけるしかありません。

国力比較(1930年)

  • ロシア:GDP 104.0M、人口 75.4M

  • ポーランド=リトアニア:GDP 78.8M、人口 20.2M

  • オーストリア=ハンガリー:GDP 65.1M、人口 36.9M

  • プロイセン:GDP 15.1M、人口10.0M

ついにGDPでオーストリア=ハンガリーを凌駕。海軍は保有していない。

まずは、1州のみを要求して外交戦を開始します。この時点では悪名は100を超えていません。懐柔できる国もありますが、あと3州要求するのに残り行動力85の中から75必要なので、味方を呼ぶ余裕はありません。

外交戦の時間がわずかになったところで勝負に出ました。残る3州の要求を突きつけます。これにより悪名は124に到達。ポーランド=リトアニアは世界から孤立しました。

外交戦開始前の国際関係。主要列強との関係は維持していたが、世界中が敵になっている。

アメリカがポーランド=リトアニアの外交官を追放し、関係が大幅に悪化。イギリスとフランスもこれにならい、命綱とも言えるフランスとの関税同盟が解消されました。海軍を持たないポーランド=リトアニアはフランスとの関税同盟なしには戦争を継続できません(1敗)。

2回目のチャレンジ。『Victoria 3』はプレイヤーが行動を変えない限りAIの行動も変わりません。再び1州の要求で開始しますが、このままでは同じ失敗を繰り返すだけです。

この時、ポーランド=リトアニアが保護国になることを条件にフランスが参戦を申し出ていることに気づきました。どうやら最初のチャレンジの時から申し出ていたようです。しかも、懐柔に必要な行動力はたったの5。

すぐにでもフランスを参戦させたいところですが、別の世界線でフランスを味方にした時の記憶が蘇りました。覇権国家イギリスが参戦し、戦争は白紙和平で終結。しかし、他に方法がありません。

ポーランド=リトアニアは再び保護国になる屈辱と引き換えにフランスに支援を求めた。

賽は投げられました。イギリスがロシアに味方するか、フランスがポーランド=リトアニアを見捨てればその時点で終わりです。

ロシア側にはブラジル、太平天国、フィンランドが参戦。イギリスは中立を保ったまま時間切れが近づきます。再び勝負の時が訪れました。残る3州の要求を突きつけ、悪名が100を突破します。

息詰まる外交戦のさなか軍の動員が進められ、最終決戦の準備が整っていく。

イギリスが外交官を追放。しかし、参戦はしてきません。フランスも保護国となったポーランド=リトアニアを見捨てることはできず、関税同盟は維持されています。外交戦はそのまま時間切れとなり、戦争が秒読み段階に入りました。

フランスが宗主国になったことで、講和の主導権もフランスに移りました。ロシアを相手に圧勝しなければ戦争は白紙和平で終わります。ポーランド=リトアニア軍は電撃戦を計画しました。バルト海に沿って北上し、ロシアの首都サンクトペテルブルクを占領するのです。圧勝するにはこれしかありません。

かくして、最終決戦の火蓋が切って落とされました。

⌛ゲーム終了まであと6年(悪名120)

ロシアは過去に奪われた州の返還を要求し、行動力の半分を使い果たしていた。

因果応報

開戦から半年後。ポーランド=リトアニア軍は着実に前進していましたが、首都サンクトペテルブルクには到達していませんでした。ロシア軍はいつの間にか軍制改革を進め、塹壕歩兵を配備していたのです。

フランス海軍がバルト海の制海権を確保。陸軍も着実に前進を続ける。

このまま戦況が停滞すれば、フランス国内の厭戦感情が高まり、戦争は白紙和平に終わります。焦りの色を濃くしたポーランド=リトアニア軍首脳部はついに秘密兵器の実戦投入を決断。人類はまた一つ過ちを犯すことになりました。

歴史上は第一次世界大戦で大量使用された化学兵器。この世界の大戦は未発に終わった。

首都サンクトペテルブルクを巡る攻防が熾烈を極める中、イギリスから一通の外交文書が届きました。ポーランド=リトアニア共和国の解体を要求する最後通牒です。

画面の右上に現れた見慣れぬアイコンの正体は、イギリスからの最後通牒。

ポーランド=リトアニアが要求を黙殺すると、イギリスは宗主国のフランスに対して外交戦を仕掛けました。イギリスには世界中の植民地とイタリアが味方しますが、フランスの味方はポーランド=リトアニアだけです。

フランスといえども、海軍力ではイギリス・イタリア連合軍にまったく歯が立ちません。戦争が始まれば、たちまち経済は破綻し、敗北に追い込まれるでしょう。繰り返しますが、ポーランド=リトアニアに海軍はありません

外交戦が続く間にも首都サンクトペテルブルクは陥落。ロシアの同盟国は次々に降伏し、ロシア軍は総崩れになりました。

クラクフの野望から始まった長きにわたる闘争は、いよいよ世界大戦の様相を呈してきた。

イギリスとの対決が不可避となり、世界中で新たな戦争の準備が進められていく中、軍の敗走に歯止めのかからないロシアは4州の割譲を認めて降伏。

東部戦線のアドバンテージは90を超え、戦闘は一方的になっていた。

すべての条件を満たしたことでジャーナル「ジェチュポスポリタの拡大」が完了。実績「Not Yet Lost」を達成しました。破滅はギリギリのところで回避されたのです。1931年8月23日のことでした。

ここまでの苦労が報われた瞬間。数多の困難を乗り越えてようやく実績達成!
実績名「Not Yet Lost」はポーランド国歌「Poland Is Not Yet Lost」にちなむ。

あとがき

ここまでお読みいただきありがとうございました。複雑なパズルを解くかのようなプレイ感が少しでも伝わっていれば幸いです。

このAARは実績「Not Yet Lost」を獲得するための必勝法ではありませんし、あらゆる国家、あらゆる状況に適用できる戦略でもありません。それでも、なにかの形で皆さんのお役に立てましたら光栄です。

実績名「Not Yet Lost」はポーランド国歌「Poland Is Not Yet Lost」(ポーランド語:Jeszcze Polska nie zginęła)にちなみます。AARのタイトルはその日本語訳「ポーランドは未だ滅びず」を使用させていただきました。

最後にプレイ環境をご紹介します。複数のModを利用していますが、ゲームバランスに直接影響するModは導入していません。本文中のゲーム用語は日本語改善Modの表記で統一しました。

それでは、次のAARでまたお会いしましょう。

本体構成

  • バージョン1.5.12

  • DLCは当時最新の「Colossus of the South」まですべて導入

Mod構成

最後までお読みいただきありがとうございました! よろしければ投げ銭をお願いします。