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謀逆のウサギ島 第3話 猜疑
コミュニケーションゲーム『あつまれ どうぶつの森』のプレイ結果をもとに創作した物語です。ゲームの画像を使用していますが、ストーリーはゲーム本来の文脈や時系列を無視して自由気ままに再構成しています。それぞれのどうぶつのファンの方は笑ってお許しください。
本文中の出来事はすべてフィクションです。実在の人物・団体・国家などとは一切関係ありません。
教授
水兵ジョニーと出会ってから数日後。ウサギ島にフータと名乗る大学教授がやってきた。
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たぬきちとは旧知の仲で、謎に包まれたこの島の生態系を調査するのが目的らしい。一体あの男とどんな因縁があるのだろうか。
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教授のテントの前には島で採集された動植物の標本が山積みにされていた。研究一筋なのか整理整頓はあまり得意ではないようだ。
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教授はたぬきちの古くからの友人だと自己紹介した。都の王立大学で教鞭をとっていたが、革命軍が大学を封鎖したことで居場所を失い、各地を転々としながら研究を続けてきたのだという。
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フータは誠実で真面目な性格に見えた。なぜたぬきちのような信用できない男と付き合っているのかと尋ねると、彼は驚きと納得の入り混じった表情で逆に問いかけた。なぜ、たぬきちを信用しないのかと。
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教授はこの島の木の実に含まれる毒を治療すると言って、わたしに飲み薬を差し出した。なるほど、たぬきちが木の実の調査を依頼した人物とは教授のことだったのか。
この薬を飲んでベッドで助手が来るのを待って欲しい。それだけ告げると、フータはテントをあとにした。
治療
言われた通り薬を飲み、ベッドに横たわると猛烈な眠気に襲われた。まさか毒を盛られたのか。自分の浅はかさを後悔しても時すでに遅し。抗うこともできずに意識が遠のいて行った。
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どれだけの時間が経ったのだろうか。靄のかかった意識の隅に何者かの声が聞こえる。
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あわててベッドから身を起こそうとするが、体が動かない。金縛りにあったように身じろぎ一つできなかった。
近づいてきたのは女性だった。フータの言っていた助手だろうか。わたしに優しく声をかけると、彼女は目を閉じて体の力を抜くよう促した。
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女性はゆっくり話し始めた。あなたは毒の影響で他人を信じられなくなっているのだと。この毒は人の猜疑心を増幅する恐ろしいものであると。
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彼女はわたしに微笑みかけた。でも、大丈夫。この治療をすれば毒の効果は消えるはず。そして、わたしは再び耐え難い眠りに襲われた。
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ゆめみ。最後に自分の名を告げると女性は視界から姿を消した。
日暮
目を覚ますと横にはフータがいた。あれは夢だったのだろうか。
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教授にゆめみと名乗る女性のことを話すと彼は小躍りして喜んだ。治療中の記憶が残っているなら解毒は成功らしい。
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フータはわたしを置き去りにしたまま一人ブツブツつぶやき始めた。やはり毒ガスが隠されているのはこの島で間違いなかった。これで治療法の研究が飛躍的に前進する、と。
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毒ガスとは一体なんのことか。猜疑心を増幅する毒とは。わたしはフータを現実世界に引き戻すと問い糾した。
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教授は一つ咳払いをすると語り始めた。
この島には人の猜疑心を増幅する恐ろしい毒ガス兵器が隠されている。島の動植物が異常なのは、おそらく漏れ出した毒の影響だろう。その毒は王国が密かに開発していたもので、革命後の混乱で盗み出された後、行方がわからなくなっていた。
わたしがたぬきちに強い疑いを抱いていたのはこの毒の影響によるもので、おそらく最初の悪印象が彼に対する不信となって増幅されたものであろう。
毒ガスにつけられたコードネームは「日暮」。
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教授は続けた。王党派も革命軍も毒ガスの在り処を探しているが、どこかの小島にあることまでしか突き止めておらず、いまだに見つけ出すには至っていない。
その話を聞いて思い出した。ジョニーに出会う直前に拾った小瓶。その中の紙片には確かこう書かれていた。
「革命……は……島を探し……まだ……ない」
豹変
フータに促され、わたしはたぬきちが待つ広場の仮設テントに足を向けた。正直なところ、彼と顔を合わせるのは気が重い。
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治療の顛末を聞いた彼は見たこともない満面の笑みでわたしをねぎらった。これまでとの落差に凄まじい違和感を覚える。たぬきちの一挙手一投足に恐れと疑いを抱いていた今までの自分がおかしかったのだろうか。
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わたしのお陰で毒ガスの在り処が特定できた。彼はそう純粋に喜んでいた。思えば、なにもないはずの無人島に最初からこだわっていたのも、この島に毒ガスが隠されていることをどこかで嗅ぎつけていたからかもしれない。
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そのとき、携帯電話の着信音が割って入った。
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すると、たぬきちは途端にいつもの冷静な商人の表情に戻る。やはり彼にはこの方が似合っている。わたしはそう思った。
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そして、見慣れた鋭い眼差しがわたしに向けられた。これまでならば恐怖に足がすくむところだが、今は不思議と不安を感じなかった。
つづく
本作は広島県竹原市の無人島・大久野島をモデルにしています。島には現在900羽以上の野生のウサギが生息し、ウサギの島として有名です。しかし、それだけではありません。歴史を遡れば、戦前はこの島で戦争用の毒ガスが製造されていたのです。そのことから、同島は毒ガスの島とも呼ばれます。数奇な運命を辿った大久野島に思いを馳せてこの物語を作りました。
本作を読んで『あつまれ どうぶつの森』のゲーム内容に興味を持たれた方はこちらの公式動画をご覧ください。動画と比較すれば本作の設定がどれだけ改変されたものかがよくわかります。
ウサギ島の夢番地は「DA-9087-0076-2151」です。日々変化し続けるウサギ島の今をご覧になりたい方は、『あつまれ どうぶつの森』の中でゆめみにこの番号をお伝えください。夢の中で現在の島を訪れることができます。
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