逆襲のバスク 第1章 雌伏編
歴史ストラテジーゲーム『Europa Universalis IV』のプレイ結果を年代記風に脚色したAAR(リプレイ)です。以前、個人サイトに掲載した内容に大幅な加筆・修正を加えました。
本文中の出来事は「歴史家の評価」も含め、すべてフィクションです。実在の人物・団体・国家などとは一切関係ありません。
はじめに
時は大航海時代を目前に控えた15世紀。ナバラ王国はバスク人の暮らすヨーロッパの小国である。王国はその周りをフランス、イングランド、カスティーリャ、アラゴンといった大国に囲まれていた。
現在の国王フアン2世は若くしてナバラ王の娘と結婚。妻が王位につくと、自らも共同君主となった。その妻は息子に王位を譲ると遺言して3年前に他界。しかし、国王は息子に王位を譲らず、今も玉座に居座り続けている。
プレイした時の条件
ナバラは初見プレイ
難易度は普通
鉄人モード
バージョン1.27.2(DLCは当時最新の「Dharma」まですべて導入)
フアン2世の治世
Juan II de Trastámara(統治4、外交1、軍事0)
1444年
フアン2世は後妻としてフランス王の娘を妃に迎えた。この時のフランス国王はシャルル7世。ジャンヌ=ダルクの活躍によりフランス王として戴冠してから15年が経っていた。
この結婚はやがてナバラの運命を大きく変えることになる。しかし、この時それを知るものはいなかった。
1445年
フアン2世はアラゴン王の兄を牽制するためフランス、カスティーリャ両国と同盟した。この年、イングランドはフランスとの百年戦争を再開。ナバラはフランス側に立って参戦した。
攻撃側:イングランド
防御側:フランス、ナバラ、他
1450年
フランスとイングランドが講和。百年戦争はひとまず沈静化した。イングランドは大陸領土のほとんどを失い、シャルル7世は勝利王と称えられた。
1453年
フランス王シャルル7世はフアン2世に臣従を求める使者を遣わした。ところが、フアン2世は使者を盛大にもてなしつつもフランス王の申し出には頑として首を縦に振らない。威信を大いに傷つけられたシャルル7世はナバラとの同盟破棄を通告した。
1454年
カスティーリャはイベリア半島からイスラム教徒を一掃すべく、グラナダに宣戦布告した。ナバラはカスティーリャの同盟国としてこのレコンキスタに参戦した。
攻撃側:カスティーリャ、ナバラ、他
防御側:グラナダ、他
1455年
グラナダとの戦争が続く中、フランス王シャルル7世より再度使者が遣わされた。フランス王は寛大にも先の非礼を許し、慈悲を持ってナバラとの同盟を回復するとのこと。フアン2世は二つ返事でこの申し出を承諾した。
1458年
グラナダとの戦争はキリスト教国の勝利に終わった。勢いに乗るカスティーリャ王はフアン2世に臣従を求める。脅迫めいた要求に鼻白んだナバラ王であったが、これを丁重に断った。
1459年
ナバラ王フアン2世は正統な後継者を残さず、王位を義父であるフランス王シャルル7世に譲ると遺言してこの世を去った。享年60歳。
ここにフランス王国とナバラ王国の同君連合が成立した。すなわち、フランス王シャルル7世はナバラ王を兼ねることとなり、ナバラ王国は事実上フランスの従属国となったのである。
ナバラの苦難の歴史はこの時からはじまる。
歴史家の評価
フアン2世について歴史家の評価は分かれている。従来の評価ではナバラ王国の継承法に反して息子に王位を譲らず、王朝を断絶に追い込んだ暴君とされてきたが、近年の研究により大国の狭間にあってナバラの独立を守るため腐心した実像が明らかにされつつある。
シャルル7世の治世
Charles VII de Valois(統治4、外交2、軍事4)
1459年
ナバラ王フアン2世は王位をシャルル7世に譲ると遺言して世を去った。しかし、フアン2世の兄であるアラゴン王はフアン2世が心神喪失状態であったため遺言は無効であると主張。アラゴンとフランスの間にナバラ継承戦争が勃発した。
攻撃側:アラゴン、他
防御側:フランス、ナバラ、他
1462年
継承戦争がフランス側の優位で進む中、ナバラの探検家が西アフリカ沿岸に到達。歴史家の多くはこの年をもってナバラ大航海時代のはじまりとする。
1465年
ナバラ継承戦争はフランス側の圧勝で終結。アラゴン王はフランス王のナバラ王位継承を渋々認め、数年後失意のうちに没した。
1466年
ナバラ王国がこのままフランス王国に吸収されることを危惧したナバラ貴族たちは、歴代ナバラ王の霊廟であるパンプローナ大聖堂に参集。フランスからの独立を目指して諸外国の支援を取り付けることを誓い合った。
このとき結ばれた密約と、そこから生まれた秘密結社をパンプローナ盟約と呼ぶ。真っ先にパンプローナ盟約へ協力したのはフランスと犬猿の仲のイングランドであった。
1471年
フランスと敵対関係にあったヴェネツィアがパンプローナ盟約への協力を約束した。
1472年
嵐の海を西へ西へと航海していたナバラの探検隊が、当時のヨーロッパ人として初めてアメリカ大陸に到達した。いわゆる新大陸の発見である。
1474年
勝利王と称えられるフランス王にしてナバラ王シャルル7世が世を去った。享年71歳。ジャンヌ=ダルクの活躍でフランス王として戴冠してから45年にわたる治世であった。
この年、ブルゴーニュ公が世継ぎを残さぬまま戦死。カスティーリャ王が領地を継承した。前年、カスティーリャとアラゴンはカトリック両王の下で同君連合を形成しており、カスティーリャはヨーロッパ随一の大国となった。
歴史家の評価
シャルル7世は百年戦争を終わりに導いたことで勝利王と称えられたが、イングランドの大陸領土を完全になくすことはできなかった。彼がナバラ王国を継承したことに関して、歴史家の評価はフランスに禍根を残したという点で見解の一致を見ている。しかし、それは後の世の話であり、彼にその責を帰すのはいささか厳しすぎるだろう。
アンリ2世の治世
Henri II de Valois(統治6、外交4、軍事4)
1474年
新たにフランス王にしてナバラ王となったのは24歳のアンリ2世である。若くして良く先王を補佐し、次代の名君と期待されての即位だった。
その頃、ナバラではパンプローナ盟約がオーストリアからの支援を取り付けていた。3カ国から支援を獲得したことで独立への機運は急速に高まった。
1476年
フランスがイングランドに宣戦布告して百年戦争を再開。フランスと同君連合を組むナバラの貴族たちはフランス側で参戦せざるを得なくなった。
攻撃側:フランス、ナバラ、他
防御側:イングランド、他
敵国となったイングランドはナバラ独立派への支援を中止。最大の支援国が離脱したことにより独立の機運は失われた。
1482年
フランス王にしてナバラ王アンリ2世が急逝。享年32歳。
百年戦争がフランスの大勝利で終焉を迎えつつある中での急死だった。当時の人々はイングランドの刺客による暗殺だと噂した。この俗説はいまだに根強く信じられているが真相は定かではない。
歴史家の評価
歴史家の間でのアンリ2世の評価は定まっていない。最大の理由はその治世の短さにあるが、百年戦争の再開により結果的にナバラ独立派の動きを封じたことを重視する歴史家も多い。
フランソワ1世の治世
François I de Valois(統治6、外交1、軍事0)
1482年
急遽フランス王にしてナバラ王に即位したのは先王の弟で19歳のフランソワ1世である。フランソワ1世がまず行ったのは長引くイングランドとの戦争を終わらせることだった。講和が結ばれ、イングランドの大陸領土は消滅。百年戦争はフランスの勝利で終結した。
1486年
パンプローナ盟約がカリブ海の小島への植民地建設を開始した。初期の植民者は政治的な理由で故郷を追われた貴族や貧困にあえぐ農民などで、彼らに新たな国の礎を築いているという意識はなかった。
1496年
百年戦争の終結後、再びイングランドからの支援を求めたパンプローナ盟約であったが、イングランドはもはや小国ナバラを歯牙にもかけず交渉は難航していた。
この年、パンプローナ盟約の末席に名を連ねる青年貴族エンリケは新大陸の誇り高き女性アナカオーナの助力を得てイングランド王の説得に成功する。この快挙によりナバラ独立への機運は急速に高まった。
1497年
フランス王にしてナバラ王フランソワ1世が急逝。享年34歳。
歴史家の評価
フランソワ1世の評価は歴史家により様々である。百年戦争を最終的な勝利で終わらせたことを高く評価する向きもあれば、この後に訪れる外交的危機を予見できなかったことを批判する向きもある。
シャルル8世の治世
Charles VIII de Valois(統治5、外交2、軍事3)
1497年
弱冠15歳のシャルル8世が新たなフランス王にしてナバラ王となった。彼は重臣を集めた席でナバラ王国の併合は時間の問題であると豪語した。
1498年
パンプローナ盟約とカスティーリャの間で独立支持の密約が交わされた。この密約を成立させたのも青年貴族エンリケの功績であった。
1499年
パンプローナ盟約により建設された初めての植民地セント・マーチンが都市として自立できる規模にまで成長した。海外に拠点を確保したことでナバラ独立の条件はすべて整った。
現在の状況
統治技術:レベル8(裁判所)
外交技術:レベル7(海軍の野心)
軍事技術:レベル7(前車)
アイデア:探検4、拡張3
植民地数:1箇所
外交併合が開始されるまで残り10年
次回予告
ナバラ王国がフランスの支配下に置かれてから40年。王国がフランスに併合されるのも時間の問題となっていた。
ナバラ独立派の貴族は秘密結社パンプローナ盟約を結成。フランスに敵対する大国から密かに独立への支援を取り付ける。
今まさにナバラの独立をかけてヨーロッパ全土を巻き込む大戦争が始まろうとしていた。
(第2章 策謀編に続く)