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謀逆のウサギ島 第2話 視線

コミュニケーションゲーム『あつまれ どうぶつの森』のプレイ結果をもとに創作した物語です。ゲームの画像を使用していますが、ストーリーはゲーム本来の文脈や時系列を無視して自由気ままに再構成しています。それぞれのどうぶつのファンの方は笑ってお許しください。

本文中の出来事はすべてフィクションです。実在の人物・団体・国家などとは一切関係ありません。


調査

ウサギじまに移住して一ヶ月。村の再建が始まったばかりの島には、テントと急ごしらえの粗末な家が点在していた。

ウサギじまの朝はたぬきちの演説で始まる。その日もたぬきちは広場で得意げに長口上ながこうじょうを続けていた。

その日の演説が終わると、たぬきちは珍しくわたしを広場の仮設テントの中に招き入れた。いったいなにを企んでいるのか。嫌な予感がする。

たぬきちはそう切り出すと、懐からこの島に自生する木の実を取り出した。一見すると、さくらんぼのように見える。

ところが、彼が都の大学教授に木の実を送って調査を依頼したところ、人体に有害な物質が検出されたと言う。そうとは知らず、わたしはこれまでに何度もこの木の実を口にしていた。あわてて吐き出そうとしたが、もう遅い。

たぬきちはそんなわたしの姿を見て口の端をゆがめると、ウサギじまの生態調査を命じた。大学教授にさらなる知見を求めるため、島内の魚や昆虫を採集して報告せよと言うのだ。

生態調査と並行して、彼は独自に謎の木の実の調査を続けるつもりらしい。木の実の正体も気になるが、こちらはたぬきちに任せるしかないだろう。

釣り竿を手に取り、広場を離れようとしたわたしを奉公人のつぶきちが呼び止めた。なにか変わったことがあったらすぐに報告するように。その言葉はそう告げているかのようだった。

漂着

島内のせせらぎに糸を垂らすと、まもなく見たこともない異形いぎょうの魚が次々に釣り上げられた。この島はなにかがおかしい。

川の調査を終えたわたしは海岸へと向かった。そこで目に止まったのは浜辺に流れ着いた小瓶こびんである。ふたはきつく閉じられ、中には紙片が入っている。ふたをこじ開けて中身を取り出すと、紙切れにつづられた殴り書きの文字が目に入った。

「革命……は……島を探し……まだ……ない」

ところどころ海水に文字がにじんでいて内容はしかとわからない。

そのとき、なにかの気配を感じてあたりを見渡すと、波打ち際に男が倒れているのに気づいた。わたしは男に駆け寄り、注意深く観察する。

服装から察するに水兵なのだろう。わたしには王党派か革命軍かの区別はつかない。としは比較的若く見える。全身ずぶれだが、目立った外傷はなく、まだ息があるようだ。

男を助け起こすと、かなり混乱した様子だった。まるで助かることなど初めから想定していなかったような口ぶりである。

乗っていた船から自ら身を投げた。そこまで言うと男は黙り込んだ。そのまましばらく額にしわを寄せる。なにかに苦悶くもんするような表情のあと、彼はこうつぶやいた。

自分にはジョニーという名前と、船乗りだったこと以外の記憶がない、と。

狼狽ろうばいする男に落ち着いて自分のことを思い出すよう伝えると、男は突然頓狂とんきょうな声を上げた。

男は体中をまさぐり、なにかを探し始めた。しばらくそれを続けたあと、ようやく服の奥から表面に無数のヒビが入った小型の電子機器を取り出す。

どうやら気を失っている間に命よりも大事な「通信装置」が何者かによって破壊されたらしい。その装置がいったいなにをするものなのか、なぜ命より大事なのか、彼はまったく覚えていなかった。

ジョニーと名乗る男が何者であれ、記憶喪失そうしつのところをたぬきち一味に見つかってはなにをされるかわからない。わたしは彼を島の北にある人目につかない洞窟でかくまうことにした。

忠告

ジョニーを洞窟の奥に隠れさせた帰り道、小川のほとりで釣り糸をらすシオンとすれ違った。彼女もわたしと同じように島の生態調査を命じられたのだろうか。

シオンは唐突に空を見たかと尋ねてきた。今日の空はよく晴れ渡り、小さな雲がゆっくり風に流されている。一言で言えば良い天気だ。彼女はそれだけ告げると、釣り竿を上げて立ち去った。

これはなにかの暗号なのだろうか。そう言えば、さっきジョニーと話をしているときに遠くから何者かの視線を感じた気がする。

シオンと別れたわたしは広場に戻り、素知そしらぬ顔でたぬきちに調査結果を伝えた。たぬきちの方も木の実の調査に進展があったらしい。

たぬきちは言葉を切ると仮設テントの中に入るよう小さく手招きした。つられてわたしも中に入る。いよいよ木の実の正体が明かされようとしたそのとき、携帯電話の着信音が鳴った。

たぬきちは電話の主に親しげに話しかけた。今までこんなに楽しそうに話す彼を見たことがない。いったいフータと呼ばれた相手は何者だろうか。

電話を切ると、たぬきちはフータなる人物がウサギじまの生態系に興味津々きょうみしんしんだと告げた。どうやら、その人物は近々この島を訪れる予定らしい。

それだけ告げると、たぬきちは一方的に話を打ち切った。木の実の正体を尋ねても答えはなく、いつもの冷たい視線が返ってくるだけであった。

テントを出るとあたりはすっかり暗くなっていた。家に帰ろうとしたわたしの横に物陰からシオンがすっと姿を現す。

たまには立ち止まれ。彼女はその言葉でわたしになにかを伝えようとしていた。しかし、その時のわたしにはなんのことか皆目かいもく見当がつかなかった。

つづく


本作を読んで『あつまれ どうぶつの森』のゲーム内容に興味を持たれた方はこちらの公式動画をご覧ください。動画と比較すれば本作の設定がどれだけ改変されたものかがよくわかります。

ウサギじまの夢番地は「DA-9087-0076-2151」です。日々変化し続けるウサギじまの今をご覧になりたい方は、『あつまれ どうぶつの森』の中でゆめみにこの番号をお伝えください。夢の中で現在の島を訪れることができます。

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