『6アンダーグラウンド』
by キミシマフミタカ
フィレンツェの狭い石畳の路地をアクロバティックにかっ飛ばす冒頭のカーチェイス、どこまでが実写でどこからがCGなのか、目を凝らして見てもよくわからない。こうなると、トム・クルーズがミッション・インポッシブルでスタントなしにこだわる理由がよくわからない。飛行機の胴体にしがみつくのは凄いと思うけれど、それがCGであって何が悪いのだろう? 少なくとも観る側にとっては、どちらでもいいのではないか。
とにかくテンポが異常に速くて、カット割が多くて、物語がどんどん進んで行くのが心地よい。筋書きは簡単だ。ビル・ゲイツのような世紀のイノベーションを起こした大富豪が、東欧かどこかにある独裁者の悪政ぶりにキレて、世界を正すために特殊能力を持った仲間を6人集めて、その独裁者を征伐するという物語。リアリティがない? いや、テンポが速すぎて、そんなことはあまり気にならない。その後に見た、ミッション・インポッシブルが、やたらテンポがのろくて古き良き映画、牧歌的に思えたほどだ。
いわゆる“準備もの”が大好きなので、悪党を征伐するために、それぞれ個性と才能のある仲間たちが、着々と準備をするところがわくわくする。そして繰り広げられる凄まじい銃撃戦。『ナルコス』よりも人がたくさん死んでいくが、映像がスタイリッシュかつ劇画調なのであまり気にならない。何しろエピソードの密度が濃く、1本の映画の中に3本くらいの映画が入っているような感じなので、人がたくさん死ぬのも仕方がない。
主人公が億万長者だから、襲撃にもふんだんにお金がかけられて、予算の心配をする必要がないという設定も面白い。それにしても、このテンポはどうやって作られているのだろう? いま改めてチェックしてみたが、メンバー紹介を兼ねた冒頭のカーチェイスの部分、約15分間で500カットくらいに割れていた。単純計算で1分間に33カットだ。
こういうアクション映画の批評で、必ず登場するのが「人間が描けていない」とかいう台詞なのだが、筆者に言わせれば十分に描けている。それぞれが何かしらの葛藤を(たぶん)抱えていて、それがテンポ良くきちんと挟み込まれている。監督は『トランスフォーマー』のマイケル・ベイ、世界で一番テンポに命をかけている監督だ。今回征伐した相手は、劇中に出て来た悪党のリストの最初の1人に過ぎないので、続編に期待したい。
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