もしも呪いのCDだったとしても

私はポルノグラフィティがすきだ。中でも彼らの2ndアルバムの「foo?」には特別な思い入れがある。

私のfoo?は多分2007年に地元のGEOで買ったもの。つまりは中古品。
これまでの人生でこんなにどっぷりと足元をとられるアーティストなんかいなかったもので、この迅る気持ちを心のどこに置けばいいのか全く分からなかった。更には性分ゆえに、「何かを熱烈にすきになるには、それがなくなった時の為の覚悟がいる」という概念に支配されていたので諸手を挙げて「ポルノグラフィティがすきだ!」と認めることがなかなか出来なかった。故に「ポルノグラフィティがすきかもしれない」という気持ちがぶすぶすと燻っている期間が長かったもので、「ポルノグラフィティがすきなんだ」と素直を認めてからはもう堰を切ったようにCDを一気に買い集めた。とは言っても私はまだ高校生でCDを買うにも限度があったから全て新品と言うわけにはいかず、中古品もそれなりにある。そのなかのひとつがfoo?だ。

GEOのポルノグラフィティのコーナーにはそれなりにCDが並んでいて、foo?は比較すぐに買ったものだった。ピンク色の色ムラ(この後これはバンドの元ベースのシルエットだと言うことをウィキペディアで知る)のあるシンプルなジャケットがなんだか素敵で惹かれた。
(因みにタイトルの「foo?」にはセカンドアルバムということで数を数える際に使う「ひぃ、ふう、みぃ」の2を指す「ふぅ」と一息吐いた時に思わず出る「ふぅー」というため息、「who?」という英単語の「誰?」、そして収録2曲目のグァバジュースのコーラスで聞こえる「フー」と、様々な意味があり言葉遊びも甚だ面白い)
中古品とは言え、購入の際はやっぱりいくらでも傷の少ない物を選んで買ったのを覚えている。

家に帰ってワクワクしながらCDを聴く。このアルバムに入っている曲でちゃんと知っていたのはサウダージとミュージック・アワーくらいのもので、INNERVISIONSやオレ、天使なんかには「ウオォ」と興奮しながら聴いた。
そんな訳で気分良く曲を聴いていたのだけれど、ふとある曲の途中で雑音のようなノイズが聞こえたかと思ったら、そこから先の曲が流れなくなってしまった。イメージで言うと、CDは回転しているんだけれども空回りして、ずっと同じ部分で止まって、前に進みたいのにつっかえているような感じ。おかしいと思ってコンポの液晶部分を見た。

正直言うと、「ヒェッ」っと背筋が凍った。
再生時間が「4:44」の所で止まっていた。これは完全なこじつけだが、なんとなく「4:44」で止まるだなんて縁起が悪いと思っている自分がいて、夏によくあるホラー特番の中にあるようなシーンだと思ったら身が竦んだ。加えてこの再生が止まってしまった曲は「デッサン#2」と言う曲で、ギタリストの父が亡くなった際に書いた曲というので、益々余計な思いばかりが膨れ上がって緊張してしまった。
恐る恐る、早送りのボタンを軽く押す。これでここから先、進まなかったらどうしようと思った。もしかしたらこのCDは呪いのCDで、それが原因で売られてしまったんじゃとさえ思った。

まぁ、そんなことは杞憂で少し早送りボタンを押すと普通にCDは進み、そこからはちゃんと最後まで無事に再生された。加えてそのCDで当時主流のひとつだったMDにも曲は落とせたし、パソコンの取り込みも問題なかった。ただ、やっぱりコンポで再生するといつもデッサン#2の4:44で止まってしまった。

他のCDではそんなことはなく、そのfoo?のデッサン#2の4:44の部分だけが何故か再生されない。
とは言え、当たり前だがそれ以降、私に不幸なことが起き続け――的なホラーな展開があったわけではないので、ただCDとコンポの相性が悪かったのかなとも思う。当時は買い替えも考えたのだけど、音源自体は専らMDで聴いていたし、何かと忙しかったのと面倒だったこともあって、その考えは徐々に消えて行ってしまった。
それどころか、翌年の2008年にそのfoo?のお陰で私はどうにかその1年を生き延びることが出来たので(いつかこの時の話も書きたいと思っている)、もしそのfoo?が再生不良でも、もしも呪いのCDだったとしても、私はこのCDがとても愛おしいので手放す気はさらさらない。これはもう誰が何と言おうと私のfoo?なのだから。

余談だが、その10年後の2017年にオーディオを新しくした際に、ふと思い立って久しぶりにfoo?を再生してみたらデッサン#2も問題なく再生された。やっぱりオーディオとの相性が悪かったのだろうなぁ。
本来のあるべき形として音楽が続いていくことは喜ぶべきことなのに、どことなくさみしい気持ちになったりもした。

#備忘録 #ポルノグラフィティ

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