1月9日。気の向くまま出かける。
時は2025年1月9日。
今日は本来何も予定のない日であったが、最近知人が言っていた「何もない日に予定を入れる」をしてみようと思い立った。
なに、予定といっても大層なものではない。
新年のタスクを迎え撃つための大きなノートと私が叫ぶための小さなノート、過ちもそっと隠してくれる修正テープ、そして溺れるための文章を求めて文具屋と書店に行くだけのことだ。
さて、買い物を終えて時刻は11時30分になろうとしていた。
今から帰路に着くのもよいが、今朝の葛藤を乗り越えた自分からすると、少し帰宅には早いような気がした。
何の宛もなく適当なホームに降り、そこに停まっていた電車に乗った。
どうやら終点まで乗ると港に近いところに停まるらしい。
車内には私と外国の観光客、そして派手な色合いの髪をした若いカップルしか居なかった。
決められたエラーの中で生きている感覚だったのかもしれない。
どうにも息苦しかった。
よく先人たちは「楽をするな、苦しいほうへ進め」と言うが、私には楽を取ることしかできなかった。
結局はすべて破綻するとわかっていながらも、足掻くことが出来なかった。
終点のアナウンスが響く。
駅を出て少し歩くと、やはり港があった。
絶えず小型の船が出ていて、小型船はあんなにも飛沫を飛ばしながら進むものかと思った。
オイルの匂いが鼻を掠める。
しばらく座っていると、陽の当たるところと、雲に隠れているところで色が違うことに気付いた。
水面が此方に寄って来ては離れていく。
向こうのほうに、大きな船が見える。
おそらく燃料を運ぶ船だろう。
恋人と付き合っていなかったら、きっと知らなかった。
貴方といたから知ることが出来た。
感じたことはもっと多くあったはずなのに、見えていた色や形はそんな簡素なものではなかったはずなのに
泡沫のように消えていくのがとても厭だった。
忘れたくなんてないのに、自分でも知らぬうちに消えているのが怖かった。
本当に私は君のことを愛せていたのだろうか。
私は君の「大丈夫」でいられたのだろうか。
君と一緒に歩けたことが何よりも嬉しかった。
そろそろ歩こうと思いベンチを立った。
私と一緒に海を眺めていた男性はもう居なくなっていた。