「8月の珈琲 Tanzania:夕立のおわり」
雨を含んだ土と火薬の香りが鼻をくすぐった。
Tanzania:夕立のおわり
鼓膜をたたく夕立の音に
夏の昼寝から目覚めた
約束していた花火の時間
ろうそくに火をつける
暑いだけの陽気はどこかに消えて
土と火薬の香りが鼻をくすぐった
まろやかなコクに火花が弾ける
大粒の雨の音が鼓膜をたたき、眠りから覚めた。
扇風機の風を浴びながら、太陽の光に熱せられたなまあたたかい布団のうえでうとうとしはじめたときは、あんなに明るかったのに。
昼間の陽気は、すでにどこかに消えていた。
気だるさを抱えながら、額ににじんだ汗を拭う。
あっ、花火…
夕方に花火をしようね。
約束だよ。
友達と交わした約束を思い出し、暗い部屋のなかで、こころが焦った。
30cmほどの高さのある大きなろうそくに火をつける。
夏の花火の日に、必ず、家のどこからか現れる大きなろうそく。
その揺れる炎を見つめながら、このろうそくは、花火のたびに短くなってはいくけれど、けっして、なくなることはない。
そう思った。
それより、いつか、引越しで消えてなくなる。
そうに違いない。
そんなことを考えていたら、友達が花火に火をつけた。
夕立の大きな雨粒が地面をたたき、雨を含んだ土の香りが宙に舞っている。
弾ける花火の火薬の香りが混じって、鼻のなかを刺激した。
あぁ、夏のにおいだと思った。
8月の珈琲「Tanzania:夕立のおわり」のまろやかなコクに混じる酸味は、夏の夕立のおわりの花火でかおったあの香りとそっくりだった。