「2月の珈琲 Brazil:かたちを失くす」
バレンタインデーというモノは、ときに、とても楽しいコトだけど、ときに、とても憂鬱なコトでもあった。
Brazil:かたちを失くす
渡せなかったチョコレートは
カバンのなかで溶け3
不恰好にかたまっていた
元のかたちを失くした
チョコレートをかじる
変わらないあまさが心で溶けた
ほろ苦さに甘みをプラス
いつだって、思いを伝えることはできるのだ。
あとは、決心するだけ。
そんなことは百も承知。
それでも、なかなか決心できないことがある。
今日こそは。明日こそは。
そんなことを思い続けて、もう半年。
半年も経ったら、バレンタインデーという思いを伝えるには格好の機会がやってきた。
カバンのなかに、こっそりと忍ばせたチョコレート。
きっと、まわりにいるいく人かは同じ状況に違いない。
現に、どこかに行って帰ってきた友人の手にあったはずのチョコレートはなくなり、満面の笑みがチョコレートにとって変わっていた。
よかったと思う反面、不安が押し寄せる。
そして、バレンタインデーとはいえ、昨日と同じ今日が過ぎるのだ。
カバンのなかのチョコレートは溶け、そのかたちを失くし、不恰好に固まっていた。
それはまるで、私の決心のよう。
そんな不恰好に固まった私の決心を一口かじる。
ほろ苦く感じたあとにあまさが広がる。
心のなかで溶けていくあまさを感じながら、明日は今日とは違う日にすると決めた。