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「2024年4月の珈琲 Dominican Republic:サクラパラレル」
Dominican Republic:サクラパラレル
下駄箱の入口に掲げられた合格発表
蕾をつけたサクラを背に
あるとわかっている番号をみつけた
下駄箱から靴をとりだしながら見えたのは
ガラス扉をへだてたサクラ吹雪
見える景色が変わったサクラパラレル
華やぎと落ち着きが同時に広がっていく
高校の合格発表は、1階が下駄箱で2階が体育館という建物の壁面にある掲示板に貼り出された。
その建物の壁面の前には、フェンス沿いにサクラが植っていて、そんなサクラに囲まれて、運動場が広がっていた。
友達に合格しているよと言われていたから、掲示板に自分の受験番号があることはわかっていたけれど、それでも、自分の受験番号を探した。
受験番号を探しながら、掲示板のある建物の1階がとても薄暗くて、中が見えないことを感じていた。
あった。
掲示板には、確かに、わたしの受験番号があった。
受験に合格して、サクラの咲いたことを確認していたわたしの背後にあるフェンス沿いのサクラは、このときは、蕾をつけていたもののまだ咲いてはいなかった。
6限目の終了チャイムが鳴ってから、かなり時間はたっていた。
帰宅部の生徒は早々に帰っていったし、部活のある生徒は、すでに、その活動を始めている。
人気がなく薄暗い下駄箱には、とてもひっそりと冷たい空気が漂っていた。
あれは、サッカー部かアメフト部か。
下駄箱から靴を取り出しながら、運動場から聞こえてくる掛け声に誘われて、外を見た。
薄暗い下駄箱と明るい運動場に出る踊り場の境にある分厚く重いガラス扉。
合格発表のときには、わたしが立っていたあのガラス扉の向こうでは、まだ、咲いていなかったサクラが、今は満開になり、そして、その花びらを散らしていた。
ザンビアのサカウエピースから連なる思い出はドミニカの珈琲にしました。
まだ、サクラの咲かないときに、合格発表の掲示板を見ていたわたしは建物の外、ガラス扉の向こうにいて、合格した高校に通い、下駄箱からガラス扉越しにサクラ吹雪を見つめるわたしは建物の中にいる。
サクラの思い出が、わたしを甘酸っぱいパラレルワールドへと深く深く引きずりこんでいく、そんな気がしました。
この思い出を表現するには?と考え、甘酸っぱいドミニカの珈琲を中深煎りにして、深みを足し、できあがったのが、「Dominican Republic:サクラパラレル」です。