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「2024年4月の珈琲 Republic of Zambia:サカウエピース」
Republic of Zambia:サカウエピース
時間はとうに過ぎていた
混雑をさけて向かった合格発表
坂の上からやってきた自転車には
満面の笑みの見慣れた顔
こちらを指差し掲げたサイン
サクラが咲いたサカウエピース
颯爽とやってきたフレッシュな甘さ
高校入試の結果発表の日は、世の中にとって、決して、忘れられない日なのだけれど、わたしにとっても忘れられない日であることは確かだ。
試験が終わったら、もうすべては決まっている。
そこから、点数が動くことは到底ないから、合否は決まったようなものだ。(現実には、受験者の平均によって、合否は変動するものだろうから、すぐに決まっていたわけでもないけれど。)
自分の実力を考え、合格が確実な高校を選んで、試験を受けた。
だから、大丈夫。
そんな気持ちがあったからだろう。
合格発表に張り出される番号は、掲示前に見にいこうが、その時間を過ぎて、見にいこうが変わりはない。
ならば、掲示される時間ぴったりにその場にいる必要はない。
混雑は避けて、見にいこう。
そう考えていたら、わたしが、合格発表を見にいくために自宅を出た時間は、合格発表の時間をゆうに1時間は過ぎていた。
わたしが住む家から、高校までは一直線の大きな道で繋がっていた。
とはいえ、その道は平坦ではなく、高校の手前には驚くほど急な坂があった。
自転車の変速機を一番軽くしても、坂の前にある信号をわたって、すぐに加速し、全速力かつ立ち漕ぎをしなければ、自転車に乗ったまま、その頂にたどり着くことはできない。
そんな坂だった。
坂の途中で、自転車を降りるのは癪なので、がむしゃらに漕いでいた時だった。
「〇〇―!」
坂の上から、わたしを呼ぶ声がする。
自転車を漕ぐ足に集中していた力がふっと抜け、わたしは顔を上げた。
そこには、自転車に乗って、坂を降りてくる満面の笑みの友達がいた。
友達は自分を指差し、わたしを指差し、サインを掲げた。
ピースサイン。
わたしもあなたも合格したよと告げるピースサイン。
それは、一生忘れられない合格発表だった。
サクラが咲いたサカウエピース。
2024年4月、サクラの開花を待ちわびながら、お客さまと故郷の話をしました。
その方がお住まいの地域が、わたしが通っていた高校の先にあったことから、高校のサクラ吹雪を思い出し、合格発表のときの友人のピースサインを思い出しました。
坂の上から颯爽とやってきたサクラが咲いたことを知らせるピースサインは、わたしにとって、忘れることのできない合格発表。
そんな様子を表現するために、颯爽としたフレッシュな甘さのZambiaを焙煎しました。