「2022年12月の名前のない珈琲 Indonesia:火が消える」
バイバイ2022。
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12月の名前のない珈琲:Indonesia
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かきねのかきねのまがりかど〜
冷たい風をあびながら、自転車を漕いでいると、つい、口ずさんでしまう。
たきびだたきびだおちばたき〜
歌いながら、小学校の中庭で行われた焼き芋大会のことを思い出した。
こんもりと集められた落ち葉の山に火がつけられると、落ち葉が勢いよく燃えはじめた。
あまりにも火の勢いが強いから、顔がどんどん熱くなっていく。
とりあえず、火の見張りは大人に任せて、子どものわたしたちは、掘ってきたサツマイモの準備をすることにした。
サツマイモの土を洗い流し、レジャーシートに並べると、サツマイモは大小さまざまな形をしていることに気がついた。
お気に入りのサツマイモはどれ?
いっせいのーでで決める?
じゃんけんで決めようか!
じゃんけんで勝った人から、お気に入りの形をしたサツマイモから選んでいった。
そんなことをしていたら、勢いよく燃えていた火は落ち着いた火に変わっていた。
ここまでくれば、あとは、湿った新聞紙とアルミホイルを巻いたサツマイモを落ち葉の山に埋めて、待つだけだ。
12月の名前のない珈琲:Indonesiaを飲みながら、勢いよく燃えあがったり、静かに燻る炎のようなエネルギーとそれを囲むわいわいとした人の集いを感じた。
あれ?お気に入りのサツマイモはどれだっけ?
落ち葉の山に入れてしまえば、お気に入りの形をしたサツマイモがどれかなんてわからないことに気がついたのは、焼き芋になったサツマイモを取り出すときだった。
そんなことがたまらなくおかしくて、同級生と腹を抱えながら笑った。
そして、できあがった焼き芋は、黄金色にかがやき、想像以上においしかった。
かきねのかきねのまがりかど〜
そう口ずさみながら、あれ以来、落ち葉の山で焼き芋を作ったことはないなと思った。
楽しくて、おいしい思い出。
2022年もたくさんの笑い声とおいしさに包まれた一年だった。
勢いよく燃え、時には、静かに燻った火ももう消える。
一旦、消えて、また来年。
そんな思いを込めて、わたしは、2022年最後の名前のない珈琲に「火が消える」と名付けた。