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「2024年9月の珈琲 Ethiopia:グッバイサマー」

Ethiopia:グッバイサマー
食べていたかき氷は
いちご色の液体に変わりつつある
からだを溶かすほどの暑さに
ほんの少しのスキマが生まれ
小さなサヨナラが聞こえた気がした
グッバイサマー、また来年
後ろ髪をひかれるような余韻のある甘味


かき氷といえば、「ピンク=いちご」。

かき氷を食べ始めたほんの小さな頃は、そんなように思っていたように思う。

それがいつしか、「ブルー=ブルーハワイ」に憧れ(といっても、ブルーハワイがどんな味なのかはいまだによくわかってはいないけれど。)、「グリーン=抹茶」を愛し、「オレンジ=マンゴー」に溺れる。

いまや、かき氷は無限の味わいがあって、いつのまにか、わたしはとうに置いていかれている。

でも、夏祭りのかき氷の屋台には昔から変わらず、毒々しいほどに鮮やかなシロップが並んでいた。

年を重ねるごとに、夏の気温はどんどん高くなっていく。
それは、昼間だけでなく、夜も変わりない。

ただでさえ、熱気を帯びた夏祭りの境内に、いくつもの町の山車と人が集まり、そのうえ、屋台の明かりがともるのだから、ここの温度は天気予報で告げられた気温よりずっと高いに違いない。

だからなのか、食べていたかき氷はどんどん溶けて、いまや、いちご色の液体に変わりつつある。

それでも、夏の終わりは確実にやってきていた。

人で溢れかえる夏祭りを背に、路地裏を家へと帰ろうとしたとき、すっと、冷ややかな風が肌をなでたのだ。

その風は、先ほどまでのからだを溶かすほどの暑さにほんの少しのスキマをつくり、そのスキマを逃さないとばかりに虫の音が耳に届いた。

とうとう、夏が秋にバトンを渡すときが来たと観念したのだろう。

夏祭りの太鼓の音にまぎれて、夏からの小さなサヨナラが聞こえた気がした。

「グッバイサマー、また来年。」

まだ、夏を遊びたい気持ちはやまやまだけど、わたしも夏にサヨナラを言うよ。

9月の「Ethiopia:グッバイサマー」は、後ろ髪をひかれるような余韻のある甘味のある珈琲だった。

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生産国:エチオピア
品種:在来種
精選方法:ナチュラル
風味:りんごやいちごのような果実感、キャラメルのような苦味
煎り加減:中深
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