「2023年3月の珈琲 Costa Rica:ひと足お先に」
そこには、春の訪れを一緒に味わう仲間がいた。
Costa Rica:ひと足お先に
青い星の瞳がのぞいていた
誰よりもはやく
春が来たことを告げる
オオイヌノフグリ
小さなその瞳にほだされて
ひと足お先に動きだす
湿った土のなかから顔を出す酸味
今年の春はせっかちだ。
すでに、20度を超える日はたくさんあって、季節が冬から春に強制的に変わっていくことを知らされている気がする。
雨が降った翌朝、玄関先のブロックタイルの側に、青い小さな花がたくさん咲いていることに気がついた。
オオイヌノフグリ。
雨に濡れた青い星の瞳は、太陽の光を受けて、きらきらと光っている。
自転車を横に置いて、その場にうずくまり、その小さな瞳をじっと見ていた。
そんなことをしていたのは、わたしだけではなかった。
少し先のアスファルトの上に小さな仲間がいたのだ。
アスファルトと同化して、最初は気づかなかったけれど、そこには小さなヤモリがいた。
つぶらな瞳が眠そうに閉じていく。
早朝の気温の高さに、思わず、湿った土の中からアスファルトの上に出てきてしまったけれど、この陽気では眠くてしょうがないとでもいうような顔つきだった。
ひと足お先に春を楽しむ仲間たちの小さな世界。
このやさしい春の一瞬を珈琲で表現したい。
そう思い、「Costa Rica:ひと足お先に」を焙煎した。