「10月の名前のない珈琲 カモメがゆく」
私は海に向かっていた。
秋の空には、翼を広げ、飛んでいくカモメのような雲がいた。
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10月の名前のない珈琲:Colombia
コロンビアの国名の由来は、アメリカ大陸の発見者「コロンブス」。
コロンブスがスペインから西へ航海し、バハマ諸島に到達したのは1492年。
その約240年後の1730年頃、コロンビアでコーヒーノキが栽培されるようになりました。
今では、コーヒーの生産量世界第3位のコロンビアですが、コロンブスがアメリカ大陸を発見した頃には、まだ、コーヒーノキは栽培されていなかったということになります。
ちなみに、日本でコロンビアコーヒーの輸入が始まったのは、1934年。
意外と、最近ですね。
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10月の名前のない珈琲の名前「カモメがゆく」
カモメが飛んでいくようだ。
すくっとした酸味のある10月の名前のない珈琲を飲んだとき、そんなことを思った。
そして、海に向かう列車の窓から見たあの雲のことを思い出した。
秋の青い空は淡く優しすぎて、ともすると、動きがなくなってしまう。
わたしのまわりでは、冷たい風が吹きはじめているのにどうしてなのだろう。
こことあそこでは違いがあるのかな。
あの空のなかにはいってしまったら、わたしは永遠に漂いつづけるしかないのかもしれない。
そんなことを考えていたときに、あの雲を見つけた。
あっ、カモメ…。
真っ白な翼にふっくらとした胸。
それは、まぎれもなく、カモメだった。
カモメは、しっかりと翼を動かしながら、淡く優しい秋の空をぐいぐいと飛んでいた。
たった一羽だけで。
風のあるなしなんてもろともせず、自ら、風をとらえて。
いや、風のないところにも風があることを信じて、進んでいた。
そうか、そうやって生きていけばいいのか。
10月の名前のない珈琲は、あのカモメのような雲を私に思い出させ、背中をそっと押してくれた気がした。