帰路、アジト、家
寒い。2月なのだから当然なのだが肌を滑る空気が妙に多角形だ。そんな日は早めに家に帰りぬくぬくしていたい性分なので法も目を疑うほどスピード感で帰る。ここで勘違いしてはならないのはスピードではなくスピード感である。実際には髪は靡いてないし、足も風のように回ってはいない。頭ではアジトに帰ってからの予定をワクワク兼ニヤニヤしながらイメージしている(家をアジトと呼ぶくらいには特別な気分になっている)。
さあ、いざアジトに着いたぞと勇んでドアを開けて部屋の暖房をオンにするが、ここで部屋が温まるまでのラグが生じる。このラグが私のアジトをみるみる家へ変えてゆく。部屋が温まった頃にはもうそこはボスもいなければ荒くれ者もいないただのいつも通りの家である。このように縦軸気持ち、横軸時間のグラフはなだらかに時間経過とともに下っていく。ワクワクしていた頃の記憶など朧げで次に家を出る頃には忘れているだろう。ただ、日々の疲れ、2月、寒さがトリガーとなり私はまた帰路でシーフとなりアジトへ向かうのだろう。