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アクリル板越しの彼女

飛沫防止のアクリル板は、パンを食べる私を映した。アクリル板越しに、もう一人の私もパンを食べている。

私が彼女の目を見ると、彼女も私の目を見る。
私が彼女に微笑んでやると、彼女も私に微笑み返す。
私がパンをちぎると、彼女もパンをちぎり。
私がパンを食べると、彼女もパンを食べる。

彼女は、私のように見える。彼女は、そこに居るように見える。でもアクリル板越しでないと、私は彼女と会えないらしい。

アクリル板越しでしか会えないあなた。かわいくて、賢そうで、素敵な服を着ている。
私はぬるくなったコーヒーの、最後の一口を飲んで、席を離れた。
アクリル板の裏に、彼女は居なかった。
どこか遠くへ行ってしまったのだろうか。


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