部屋の明かりを消す時
誰にでもある瞬間ってあると思うんだ。例えば、夕陽に染まる雲に感動したりだとか、何となく寂しい夜だとか、テスト前の憂鬱な朝だとか、誰にでもあるカメラのシャッターを切りたくなるような瞬間。それがいつまでもずっと続けばいいのにって思う。私は常に感傷に浸り続けている。LINEのパスワードは昔好きだった人の誕生日だし、未だにフォルダに入ったあの日の写真を消すこともできない。
いつか、きっといつか、私にも新しいパスワードができる日が来るって、あの写真を消しても大丈夫な日が来るって信じてる。もう二度とあの人が私と話す日は無いと知っているけれど、夢で会えることはないと知っているけれど、いつまで経っても私の“あの人”は君のままだし、私の中の君はあの日のままだよ。なんて女々しいね。
部屋の明かりを消す時、白々しく光るLEDと、冷たい空気が漂う部屋が豪く他人事のように思える。闇に覆われた部屋は宇宙だ。