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個⼈戦術はチーム戦術を凌駕するのか?/Insight #12 イベントレポート

個人戦術にフォーカスしたサッカーを指導する帝京高校サッカー部・片山コーチ。具体的なトレーニングプログラムについて触れながら、指導者としてのサッカー観やトレーニングプログラムの組み立て方や伝え方について語っていただきます。「個人戦術」1:1を中心としたトレーニングは、「チーム戦術」多:多のグループ技能やゲーム練習を凌駕するのか?一緒に深堀っていきましょう。


<登壇者紹介>
ゲスト 片山 桂一氏
帝京高校サッカー部  コーチ/帝京中学サッカー部 ヘッドコーチ

ゲストコメンテーター 續木智彦氏

西南学院大学サッカー部監督

司会進行 和田タスク
前FC町田ゼルビアスタジアムDJ


前を向けるような場面をどれだけ作り出せるか

タスク:本日のゲストは片山桂一さんです。そして相方の續木先生です。よろしくお願いします。

片山:現在帝京高校サッカー部のコーチをしています。小学1年生から大学生までサッカーをやっていました。サッカーが好きで、子供たちにもサッカーがより一層好きになってもらいたいと指導をさせてもらっています。よろしくお願いします。

タスク:⽚⼭コーチが指導した中でどんな結果が表れているのかという映像をまず最初に皆さんにご覧いただきたいと思います。

タスク:どこにポイントがあってこの映像を出してくれたのでしょうか?

片山:基本的に指導の中で「ボールは失いたくない。相手にボールを渡すな。」と、常々言ってるので、キーパーからボールを動かすときも、確実にパスをつなぎながら前進する場面をたくさん作り出したいと考えています。これもキーパーから始まってると思うんですけど、左サイドにボールをやって、相手がボールを奪いにプレスをかけに来ても、プレスを外しながら相手コートに入り、前を向いた状態を作り出し、前線のツートップの選手が背後に動き出したところで、意図的に点を取る場面になったところです。

タスク:この映像の注目はどこですか?

片山:スルーパスを出す前の選手にボールが渡るような場面ですね。いいところで前を向けるような場面をどれだけ作り出せるかっていうところが、フォワードが動き出せるタイミングになると思うので。センターバックが良い状態でボールを運ぶことができると、ハーフの選手も動きやすく、マークを外しやすい状況になるので、キーパーからボールを動かせずに、スムーズに前進するっていうことが重要かなと思っています。

タスク:カテゴリーとしては?

片山:帝京⾼校でいうと2、3年⽣のBチーム、相手は駒沢高校ですね。

タスク:ラストパスを出す前ってセンターバックから中盤に対してレーンが同じだったと思うんですよ。守備からすれば視野に入りやすかったかったと思うんですけど、これが通った理由というのは?

片山:キーパーから左にボールを渡して、左サイドバックの選手が局面打開できて、相手の守備の目線が右から左へ揺さぶられたことによって、ボールウォッチャーになったと思います。そこで、センターバックがフリーな状態で前進できたので、ディフェンス側としてはボールとマークする選手の同一視がおろそかになったことで前に行けたのかなと思います。

タスク:續木先生はどこにポイントを置きましたか?

續木:ラストパスを出すところも1回中に入って、相手の背中を取ってからスペースにもう1度出てくるんすよね。その部分もすごいなって思うし、パスの質も完璧でした。それと、外に引っ張る選手もいて、スペースから前向きの局面作り出して、2人を釣り出す手前側のフォワードと、その開けたスペースを見逃さないもう1人のフォワードと、それを選択するボールホルダー、全てが完璧。みんなの意思が繋がって、1人1人がこの局面で一番いい仕事をしてるなと感じました。


試合につながってるっていうマインドで練習をやらせることが⼀番⼤事

タスク:こういうシーンを作り出すために、どんなトレーニングを施しているのでしょうか?

片山:実体験を元になんですけど、年代を問わず、ボールをたくさん触るっていうことを第1に考えてます。

タスク:ドリブル練習とかやるんですか?

片山:はい、やります。リフティングだったり、ボールを⽌めて蹴るとか基本的な練習が多いんじゃないかな。ボールと体のフィーリングというか、そういうのを研ぎ澄ましてほしいと思っています。

タスク:例えば、4-2ロンドだったりとか、5-5ダブルボックスみたいなゴール前の攻防だったり、そういった⽬標のトレーニングはやらないですか?

片山:最終的にはゲーム形式で毎回終わりたいので、リフティングだったり、ドリブルだったり、対面パスをやって、3対1のボール回しとか段階を経て、徐々にゲーム形式につなげていくっていうのは、通常の練習の流れかなと思います。

タスク:トレーニングを効率化したいときに、個⼈にフォーカスする時間を増やすとやっぱり時間が⾜りなくなってくるのでは?

片山:誰かがリフティングはできて、誰かができないんじゃなくて、全員が同じ練習メニューをこなして、みんなが同じような感覚でゲームにつなげることを⼤事にしていますね。

タスク:僕らが思っている以上に個人にフォーカスをしているのはなぜですか?

片山:もちろん勝つためにやってるんですけど、「みんな上⼿だね。ボール感覚が柔らかいね」って、そんな表現をされたくて。選⼿がリフティングをできないのは絶対にありえないし、ドリブルで簡単に取られることもあってはいけないし、ボールが⽌まらないとかパスがずれちゃうっていうのは話にならないという感覚があるので、練習の初期のときは、そこに重点を当ててやっています。

タスク:確かに全員が底上げできれば強くなる、というか勝率は上がる気がしますね

片山:ドリブルとか対⾯パスの練習は⻑いですけど、このドリブルが試合でどう使うとか、試合につながってるっていうマインドで練習をやらせることが⼀番⼤事かなと思ってるんです。


⾃主練習をみんなでやりながら感覚を合わせる

タスク:個⼈の底上げをするという経緯はなんだったのでしょう?

片山:今でも忘れられない高校の恩師の練習なんですけど、この練習は何が言いたいんだろうとか最初は理解できなかったんです。でも、徐々にこういうことを言いたかったんだなと気付かされるんですね。最初から答えを教わるのではなく、少しずつ得た感覚が成功体験になるんです。その感覚が楽しくて。僕も指導者になったらそういう感覚を身につけてほしいと思ってるんです。

續木:僕は2時間くらい練習を⾒てたんすけど、ひたすら1対1で向かい合って外すとか、2⼈の出し⼿と受け⼿の関係をずっとやってたり、三⾓形でパスをやってたり、100回まわせっていう3-1か4-1をずっとやってて、それで2時間くらい過ぎてて。その1個1個を⽌めて「こういう局⾯でこれが使えるよね。」と、イメージしやすい⾔葉がけをしているのが印象的でした。

タスク:総和の底上げっていう部分と、個⼈の楽しいという気持ちを⼤事にするというアプローチがあって、そこまで時間を割くのですね。
個⼈スキルに近いところは⾃主練で⾝につけてきて当然みたいな⽂化だったので新鮮です。

片山:⾃主練習をチームで練習してるような感じはありますね。⾃主練習をみんなでやりながら感覚を合わせるというか。時期とかチームの状況を⾒て練習も変わってくるんすけど、それをベースとしてやってます。

タスク:サッカーはチェスのような配置のスポーツだと思っていて、配置の部分に関してどう捉えてるんすか。

片山:配置のサッカーは増えてるとは思うんですけど、選手たちには意図的に再現性のあるプレーを増やしていこうと言ってます。ディフェンスが駒沢高校のようにプレッシャーをかけてきても前進しないといけないし、プレス外しプレス回避をして相手を見てサッカーをやる。相手を見ながらサッカーをやっていたら、こうやって前進するという根拠を持ってサッカーができると思うので、形とかパターンにはめたくないと思っています。

ボールに関わり続けろ!

タスク:Bチームを⾒られていますが、⽚⼭コーチの肌感でいいんですが選手たちってどうですか?

片山:個人的には試合中はサッカー用語で伝えたり、イメージをしてくれと言ってるので、そういう会話を選手同士でしてくれる場面をどんどん増やしてほしいなと思っています。

タスク:共通⾔語を作ってるんですね。⽚⼭語。文章で伝えるより一言でイメージさせた方が早いということですね。

續木:相⼿を前に攻撃に⼊っちゃうことをスリップ、1個⾶ばしのパスをスキップとかそういう感じの⾔葉で⾔ってたかな。

タスク:オリジナルだけど、⾔語化もできてるってことなんですね。どうやってできたんですか?

片山:選⼿が違うとできなくなるとか、メンバーが変わると⼀気に変わっちゃうとか、そういう幅を最⼩限で収まるようにするには、「こうしてみよう!」と、⼀⾔で発する方が頭に⼊ると思います。選⼿同⼠で指摘し合いながら、⾃分たちなりに作っていくのは⼤事かなと。自分の高校の恩師もそういうキーワードがあったと思います。

タスク:サッカーに関しては最⼩限のグループというところにつなげて、スリップだったりスキップだったりという⾔葉が作られていく。だけど、アクションを取るのはあくまで個⼈で、それを個⼈が知って共有されていないと発動されないもの。そうすると、また個人に戻るってことですか。

片山:選⼿たちは「ボールに関わり続けろ!」って⾔ってるんすね。距離が遠くてボールをもらえないこともあると思うんですけど、そのときは声で関わるとか、周りへの働きかけも関わることになると思うんです。常にボールに関わり続けることで、ボール保持者に対して選択肢をたくさん増やすことができ、受け⼿が主導権を握ってボールを呼び込むという連続性でパス交換が⽣まれたりすると考えてます。



皆さん、たくさんのコメントありがとうございました

試合中、視野を広く持つための練習とは?

片山:どうしてもドリブルしてると下を見がちで、パスの練習もボールを見がちになると思うんですけど、例えばボールを見ないでドリブルをする練習とか、トラップをするときはボールを見るけど、パスを出すときはボールを見ないで受け手を見て、顔を上げっぱなしで出そうと言ってます。間接視野で見ると背筋がたって情報も入りますし、周りを見る量も違ってくると思うので。そういうことを意識するだけで、インターセプトされないようにパスを渡すことができるようになります。

主導権を持つということをどのように考えていますか。

次のボールの⾏き先を最終的に決めるということなのか、あくまで受け⼿が主導権なのか?

片山:さっきのドリブルだったり、対⾯パスにさかのぼるんですけど、いい持ち⽅をしてくれないと、受け⼿がボールをもらえないじゃないすか。ボールの持ち⽅とか姿勢とか、顔が上がってると⾃分を⾒てくれるからマークを外しやすいし、ボールがほしいっていう状況を作り出せると思うんすね。受け⼿が主導権というのは「俺にくれ。」とか「今出して。」とアクションを起こせることだと思ってますね。出す側のボールの持ち⽅がいい状態じゃないと、受け⼿が主導権を握れないから、あのドリブルの練習がつながっていくというところですかね。

ボールの持ち⽅、隠し⽅、運び⽅はどのように伝えていますか?また、場⾯によって伝え⽅は変わりますか?

片山:基本的にはボールを捉えないでほしいんですよね。相⼿を抜いて1対1から1対0にできればいいと思うんですけど、それってリスクのあるドリブルプレーだと思うので、全員ができなくてもいいと思うんですよね。
1対1から1対0.7とか、1対0.5にすることができて、パスを味⽅に渡してあげることができればボールを失わないし、パスの切れとかスピードで相⼿を置き去りにするような場⾯が連続してできれば、相⼿を抜いたことになると思います。パスを出すためのフェイントとか、ボールを直⾓にする、横にずらすとかができるだけで、ドリブルの最低限としては⼗分だとは思うんですよね。


ゴールを使った練習はどの程度、またどのタイミングで⾏いますか?

片山:できれば毎⽇ゴールを使ったトレーニングはしたいですし、ゲーム形式で終わりたいですね。練習したことがゲームにつながってるのを確認してほしいんです。なるべく11対11をやりたいと思ってるんですけど、グランドの事情だったり、状況によっては⼈数が少なかったりするんですけど、正規のコートの4分の1のコートに11対11をぶち込んだ試合をやっています。4分の1のコートに11対11だと、相⼿のプレッシャーを感じることが多くて、技術がおろそかだったとか、全然周り⾒えてなかったとか反省もでてきます。そうやって1日を終わらせることが⼤事だと思ってるんです。

2⼈組は基本ランダムのように、できればいろいろな選⼿とやった⽅が伸びるものですか?

片山:フィールドの中でも感覚の違いというか、研ぎ澄まされてる選⼿とそうじゃない選⼿がいて、それが適正ポジションにつながっていくと思うんです。⼀緒にやることで「もっといいとこにボールを置いてほしいんだよね」とか、「もうちょっと早く外してほしい」とか、そういう会話が練習中の対面パスで出てくるとお互いの感度が上がっていくんですよね。その状態で試合に⼊ると、いいプレーに繋がっていくと思ってます。


タスク:今⽇は⽚⼭コーチをお迎えして話してきました。續木先生が⼝説き落として出ていただいたということで、片山コーチから⼀⾔いただけると嬉しいです。

片山:本当にありがとうございました。貴重な経験をさせてもらいました。周りへ発信することで貴重なご意⾒をいただいて、今後の指導に必ず活きる時間だったと思い、感謝申し上げます。


次回の案内と「The Blue Print」のお知らせ

タスク:3⽉はInsight特別編フットボールを語り尽くす120分、スペシャル会を設けさせていただきます。3⽉15⽇20時〜22時まで⾏います。特別編ゲストに鎌倉インターナショナルFCのCBO、元同監督の河内一馬⽒と、史上最も戦術的なクラブを⽴ち上げたGOAT FCのGOATさん、2⼈をお迎えしてフットボールを語り尽くします。皆さんもお時間ありましたらお気軽に聞いていただけたら嬉しいです。またお会いできることを楽しみにしています。ぜひお越しください

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