
パスの受け手を再定義する/Insight #23
「もっと聞きたい」の声にお答えする、片山コーチの第二弾!
パスの重要性、受け手・出し手の動き方、そして、相手の心理を逆手に取る駆け引きまで、 片山コーチの奥深い育成論に迫ります。
<登壇者紹介>
ゲスト 片山桂一氏
帝京高校サッカー部コーチ
帝京中学サッカー部ヘッドコーチ
ゲストコメンテーター 續木智彦
西南学院大学サッカー部監督
司会進行 和田タスク
前FC町田ゼルビアスタジアムDJ

タスク:本日のゲストは片山桂一コーチです。よろしくお願いします。片山コーチのキャリアに触れたいのですが、ユースはどちらで?
片山:日本学園高校で、順天堂大学に進みました。
タスク:指導者キャリアは、何がきっかけだったんですか?
片山:大学院に行きながら、成城学園高校でコーチをしました。卒業後は母校(日本学園)に戻ってコーチを続けて。 その後、宮崎の学校や東京の農大一高、FC多摩などでお世話になりました。
触らせてあげる・触ってあげる努力をする
@8:40
タスク:早速なんですが、片山コーチはパスをどのように捉えていますか?
片山:サッカーは全部パスだと考えていて。シュートもゴールへのパスとか、ドリブルも自分の足から足へのパスだと思えば。いかに渡せるかを強調しながら練習してます。
出し手の感覚としては「受け手に触らせてあげる」。ボールを受ける選手は、パスがちょっとズレても「触ってあげる努力をする」という感覚。
ドリブルもパスも、どっちもできないといけないですが、ボールと自分の身体をうまく調整できるかが大事だと思ってます。
タスク:なぜパスがいいのですか?
片山:ボールの方が相手より速く動いて進めますし、ドリブルに比べたらパワーやスピード、キレも。疲労も溜まらないってなると、より効率的に出し手と受け手のパスを成功させた方がスムーズにサッカーが展開できる。
だからって、ドリブルがだめじゃなく、試合中での効果的なパス・ドリブルを相手を見ながら判断できれば一番いいという考えです。

タスク:どういう練習が多いですか?
片山:基本的なボールを止めて蹴るとか、出し手と受け手を合わせる作業に時間を注いでます。
単純に1回で止めて2タッチ目でパスを出す。ディフェンスがいるから横にずらして縦パスを出す。受ける側がわざと斜めに動いてもらうような対面パスなど、試合をイメージし条件設定しながらやっています。
対面パスの中で、センターバックがドリブルで運んでる間に受け手が動いてボールをもらうとか、受け手がほしがった瞬間にパスを出すなどのタイミング合わせとか。
續木:「ゴロロング」って言ってるんですよ。
片山:浮いたボールは受け手も処理しづらいし、ディフェンスもボールを奪いやすいので、なるべくゴロでやりたいという思いが強くて。ショートパスが出せなくて、ミドルやロングパスを出さないといけない状況がある。そのときの出し方や受ける準備を「ゴロロング」というキーワードにしています。
今はマンツーマンでボールを奪いにくるチームも増えてきてる。自分のそばにべったりついてるディフェンスが止まってたら、インターセプトされてしまう。だから、相手に捕まらないように動きながら、走ってるところにゴロでロングボールを合わせていく。
受け手も走りながら身のこなしでボールコントロールして、前を向いてる選手に渡してあげる。出し手と受け手のゴロロングの間には、2・3人中継役になれる選手がいるので、早く助けてサポートして、次に展開できれば効果的なプレーだと思います。
ボールを持っている選手にみんなが関わり続ける
@20:22
タスク:ボールから受け手が遠くても、出し手に対して効果的に機能してあげられますか?
片山:基本的には、ボールを持っている選手にみんなが関わり続ける。たとえばセンターバックがボールを持っていて、ハーフの2・3人がもらいたい。でも、渡せないからゴロロングでフォワードに渡した。 ハーフの選手はボールをもらえなくても止まるのではなく、次のフォワードの選手にまた関わり続けるっていう「関わりの連続性」を求めてまして。距離が遠い・ボールの持ち方的に直接関われなくても、1・2個先でボールに関わるために声で関わらせる。
タスク:どういうトレーニングをされていますか?
片山:たとえば、4人組にしてボールを持ってる選手の前にターゲットが2人いる。目の前と1個奥の関係を作って、目の前の選手に渡ることもあるし、1個飛ばされるときもあるし、飛ばされたときに次は自分がどういうサポートに入るのか。ちょっと回る動きなのかとか、追い越すのかとか、そういうので意識づけしたります。
タスク:それは相手のいない状態?
片山:相手がいないときは、対面パスの2人組を4人や3人にする。相手をつけるときは、2対2+サーバーなどがあると思いますが、自分がボールをもらえなくても、3人目や1つ先のプレーを考えてサポートするトレーニングはイメージしやすいかも。
タスク:マンツーマンで来られたとき、パスの受け手はどうサポートすれば?
片山:まず、ボールを持ってる選手にどれだけプレッシャーがかかってるのか。それによってサポートの質は変わると思うんです。
ボールを持ってる選手がフリーだと仮定して、抜ける選手がマンツーマンで来られてどうしようという状況があると思うのですが、どうやってボールを呼び込むか、マークを外すかは、いろんなイメージを想定して対面パスとかをやります。フリーで対面パスを受けていたのを、4人組にしてディフェンスをつけて蹴るなど。
タスク:相手の逆を取ってはがすってことですか?
片山:そうです。ボールをもらうために、足元・背後でもらうか、どんな外し方をしてボールを受けるか。前を向くとこまでやらせるので。
タスク: 横のサポートはどう考えればいいですか?
片山:ボールを持っている選手にプレッシャーがかかって、苦しい状態だったら自然と横に逃げることがあると思いますが、ゴールが真ん中にあるって考えると、横パスをダイレクトで縦パスを入れてくのが優先順位としては一番かな。 なので、「ヨコタテ」というキーワードを作って背後を取っていく。
受け手が準備できるし、出す側も横パスの後は縦パスを出す準備をして「ボールに一歩寄ってから出そう」とか、「寄るような格好してボールを流して相手をはがそう」とか、駆け引きも出てくると思うので。
タスク:縦に入ってだめだったときに、横にくるってことも?
片山:基本は横とかボールを持った選手と同列にならないように、「少しでも奥行きを取って受けてくれ」と話してます。
タスク:なぜですか?
片山:ゴールに進んでいないとなると、まずは、縦パスや斜めパスでゴールに向かうようなパスを受けてほしい。縦パスを出して受け手とワンツーで前進はできると思うので、マークを外して、縦パスを出した選手に落としてくれれば、短い距離でも少しずつ前進できる。もしくは、ボールを持ってた選手のマークをパス&ゴーで振り切れるかもしれないので。そうすると縦の2対1ができあがるかなと。

ボール保持者・相手・スペースを見ながら、半身の状態で探ってる状況を作っておく
@30:31
タスク:受け手の役割って、結局なんですか?味方のボールホルダーを生かすためなのか、自分が生きるのか?
片山:それは両方…やはり自分がやりたいプレーがあると思います。フォワードであれば、相手のセンターバックの背後でスルーパスを受けてとか、自分がシュートを打つために出し手のタイミングを探ってると思うんですけど。ディフェンス側としてはいい状態でパスをさせたくないので、簡単にフリーにさせないし、いいスルーパスを出せるような状況は作らない。90分間やってたら、出ないときの方が多いと思うんですよ。
そんなとき、近づくサポートのことを「ヘルプ」と言ってるのですが、ボールを持ってる選手をヘルプして、相手に1回縦パスのワンツーの間に間合いを作ってあげて、ワンツーの落としの後に縦パスを出せる余裕を作ってあげたら、自分がもらいたかった背後にとか、スルーパスをもらえる。
タスク:やりたいことはあるんだけど、まずは助けになるべきであると。
片山:どっちもいけるような五分五分のような状態を作っておく。受け手は、常にボール保持者・相手・スペースを見ながら、半身の状態で探ってる状況を作っておくといいかな。
タスク:11人いる中で、物理的に消える選手は出てきますか?
片山:そうならないように、前もって声を出す。あの選手にボールが渡ってくれたら次はもらいやすいとか、背後が取りやすいとか。
逆をいうと、自分がボールをもらわなくても、仲間がもらってくれた方が効率がいい場合もあると思うんで。ボールを受けなくても、要求を伝えるのも関わり続けることだと思うんです。
タスク:どうやって選手たちの中でゲームにつなげていますか?
片山:試合中にキーワードを伝えることが多いと思います。たとえば対角線のボールが効果的だったら「対角で受けられるぞ」と言うだけで、意識してやってくれるかなと。促しですね。
タスク:「サイドでの受け方を教えてください」と質問いただいています。
片山: サイドは自然と開いていればボールを受けられますが、わざと真ん中でフォワードとかにすると途端にボールをもらえない。 またすぐサイドに開いちゃう現象がよく起こるんですが、ボールを受けるための相手との駆け引き、マークの外し方、もらうタイミングなどがあまり理解できてないことがある。
対面パスと同じで、半身の状態から相手がどう動くかでマークを外すか。真ん中だったら360度から来るので、そこでボールを簡単に受けられるようになったら、サイドはもっと楽だと思う。

相手の守備の原理原則がわかっていれば、おのずとマークの外し方も整理される
@44:17
タスク:「受け方のこだわりはありますか」と質問いただきました。
片山:相手の守備の原理原則がわかっていれば、おのずとマークの外し方も整理される。ボールを持っている選手を基準に、自分のマークを見ながらどこに立つのか。ボールを受ける選手は自然と半身になって、ちょっとずつ離れるような動きをすると、ディフェンスとしてはボールウォッチャーになりやすいというか。
相手から離れて、出し手が遠い方の足めがけて速いボールをつけてあげると、パススピードと遠い方の足のコントロールで相手の背中側にボールを置くことができれば、出し手・受け手のタイミングと技術で、自分のマークを置き去りにできると思うんですよ。ディフェンスが警戒したら、逆にディフェンスの胸(表)の方に動いたら自然とはがれやすくなる。
タスク:「ゴロロングは何mぐらいの距離感ですか」と質問いただいています。
片山:チームでの距離感があると思うんですけど。 ふだんの対面パスが6〜7mぐらいの距離感ですが、試合では20mの長さになることも。距離が長くなるとロストする可能性もあるので、タイミングや合わせが非常に大事かなと。
タイミングを気にしないでやってる選手が多いと思うんです。こっちはタイミングを取りたいんだけど、とれるような持ち方をしてくれない、顔を上げてくれない、姿勢が悪いとか、そうなると受けれなくなる。だから、ボールの持ち方とか、置きどころとか、姿勢とか、顔上げるとかが大事な要素だと思うんです。
タスク:片山コーチ、今日はありがとうございました。率直な感想をいただけませんか?
片山:コーチって孤独の職業というか、自分で考えることが多いんですけど、言葉に出して発信することで頭の中が整理されたり、アドバイスをいただいたりと今回もなりました。より一層、明日からの練習が楽しみで、選手と向き合いながらお互い高めていければなと思います。 ありがとうございました。

次回の案内と「The Blue Print」のお知らせ
タスク:次回は3月7日(金)20時より行いたいと思います。 まだ詳細を詰めきれておりませんが、楽しみにしていてください。
また、「The Blue Print(ブループリント)」というオンラインコミュニティをFacebookグループの方で持っています。意見交換ができるようになってますので、ぜひご活用ください。
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