【イップス回避】スイングのトラブルシューティング
ゴルフスイングにはイップスになりやすい特定の動きがあると囁かれています。
多くの人は、イップスは心理的な問題で、期待値が高過ぎる人、完璧主義者などが陥りやすいものだと短絡的に考えてしまいそうですが、それだけが原因ではありません。
この記事では「ゴルフ上級者が気をつけたいアプローチイップスを招きやすい動作」と「誰でも陥りやすいパッティングイップスを誘発するし姿勢について」解説します。
ゴルフのイップスとは?
ゴルフのイップスは、本来簡単なゴルフスイングやパッティングの動作が、プレイヤーが思うようにコントロールできなくなる状態のことを指します。
具体的には、パターを振る前に手が震えたり、スイングの途中でクラブが止まってしまったり、打ち出しのタイミングが合わなくなったりする症状があります。
イップスは、心理的な問題だけでなく、フィジカルな問題や技術的な問題が関係しています。ストレスやプレッシャー、過剰な意識、過去の失敗のトラウマなどが原因となり、運動の自由を制限するように作用することがあります。
イップスとチョーキング
ゴルファーが意図する運動を行えなくなってしまう現象には、イップスとチョーキングがあります。混同してしまうことが多いですが、その原因と症状にはいくつかの違いがあるため、対処方も異なります。
以下の記事にまとめてるので興味のある人はご覧ください。
アプローチショットは小さいフルスイングではない
グリーン周りの30y以内のアプローチショットについて考えてみます。
「アプローチショットは小さなフルスイング」とシンプルに考えるゴルファーは少なくありませんが、実はこの考え方は注意しなければなりません。みなさんはどう考えていますか?
シンプルに考えることは分かりやすいという良い面もありますが、弊害も持ち合わせています。
ゴルフスイングは、どんなショットを打ちたいのか?という目的から逆算して考えていくことが理にかなっています。
アプローチショットであればどんな「距離」「高さ」のショットを打ちたいのか考えます。そして、そのためにはどんなインパクトが必要なのか?考え、そのインパクトを作り出すためにはどんな動作が必要なのか?その動作を実行しやすいアドレスはどんな姿勢なのか?球のポジションはどこにするべきか?と考えていきます。
これを踏まえると、アプローチショットのスイングフォームはフルスイングと異なって当然ということがわかります。
では、イップスを誘発する可能性が高いアプローチの動作は、どんな動作なのでしょうか?
イップスを招くアプローチショットの動作
わりと上級者が陥りやすいアプローチイップスの動きの1つに【ハンドルドラッギング】というものがあります。画像のような手の使い方です。
実はこれは非常に危険な動きでプロでもアプローチイップスを起こしやすい動きと囁かれています。
ハンドルドラッギング
このハンドルドラギングとは、P6から過度に手首を先行させ、強いハンドファーストの形をキープしたまま、クラブヘッドを運びインパクトするスイングフォームのことを指します。
この動作をアプローチショットで行った場合、スイングアークのローポイントコントロールが非常に難しくなってしまい、ミスショットを誘発しまくります。
(どうでもいい話ですが、アメリカ英語の発音的にはヘンドゥドゥラァギングですからね。アクセントはドゥラァギングの「ラァ」に置いてください。日本語訛りだと一生伝わりませんでした。)
話を戻して、グリッププレッシャーが強い場合や手首が硬いとイップスになりやすくなるというのは皆さんもご存じかと思います。ですが、逆に手首を過度にリラックスさせすぎても、ハンドルドラッギングが起こりやすくなるので注意が必要です。
例えば
簡単な30y以内のアプローチでノーマルのピッチショットを打ちたいシーンでは、インパクトゾーンでクラブヘッドがどのような動きをすればいいか考えてみましょう。
多くのアプローチ上級者は、P6から緩やかなダウンブローで、ヘッドが手元から遅れないように適度にリリースしながらインパクトさせます。また、クラブフェースも無理にホールドせず適度に閉じながら打つでしょう。シンプルで基本的な打ち方です。
もちろん、弾道の高さを操作したい場合は多少フォームが変わりますが、それでもハンドルドラッギングは使いません。
では次に、P6からグリップを左足前へグッと引くように一気にクラブを運んだ場合を想像してみましょう。
この動作では、必要以上にタメが大きくなるので、切り返しで既にクラブヘッドが遅れてしまいます。インパクトまでにこの遅れを取り戻さないと振り遅れるので、クラブに何らかの大きな力を与え、ヘッドを手元に追いつかせなければなりません。インパクトでは、入射角やローポイントコントロールが難しくなり、フェイスからの球離れが速くなることが考えられます。
つまり
ハンドルドラッギングは、アプローチショットの成功率を下げるだけでなく、シンプルなアプローチショットという行為をとても困難なタスクへと変えてしまいます。打球のコントロールどころかクラブヘッドも制御不能になることが考えられます。
このような動作を大事な場面で繰り返し行った場合どうなるでしょうか?ショットに対する自信はどんどん失われ、失敗するイメージが常につきまとい、いつしか恐怖心が芽生えてしまうかもしれません。
タイガーウッズのイップス
タイガーがイップスになった原因もこれと似ていると言われています。もちろん、タイガーとアマチュアでは、ミスショットのレベルが大きく異なることは当然です。しかし、常に極度の緊張とプレッシャーに晒されながら戦ってきたタイガーにとって、アプローチショットが僅かにコントロールできないだけでも、その状態が長く続けば続くほど、違和感が彼の中で蓄積されたことでしょう。ストレスレベルは高まる一方で、さぞ苦痛だったと思います。
タイガーは、2018年にコーチがクリスコモに変わった際、アプローチのクラブ裁きが大きく変わりとても苦しんだと語っていましたが、アプローチショットに関しては、クリスがタイガーを救ったという意見も多くあります。
2010年から2014年にかけて、ショーンフォーリーがコーチだったころを、タイガー自身が振り返り話しているインタビュー記事や動画がネット上にいくつかあったので、興味のある方は是非調べてみてください。
パッティングのイップス
パッティングのイップスも、アプローチイップスと同じ仕組みで起こることが考えられます。クラブヘッドをコントロールしにくい動作を、繰り返し行うことで失敗体験を積み重ねてしまい、やがてイップスに陥ってしまうんだとか。
なるべくイップスを引き起こす動きを排除して行くことが大切です。
イップスが発動しやすい条件
パッティングには、イップスに陥ってしまいやすい条件がいくつかあるとされてます。アマチュアが当てはまる条件は以下の4つが考えられます。
体に力が入るアドレスをしている
グリッププレッシャーが強い
スイングプレーンが体から遠い
プレーンが極端にフラット(クラブヘッドが常に地面スレスレを移動し、上昇や下降がないストローク)
ボールを目線より大きく外側に置いている
そうなんです。お気づきの方もいるかと思いますが、全てローポイントのコントロールが難しくなってしまう条件なんです。
なぜこれらの条件がイップスに繋がるのか?
これら5つの動きは、パターヘッドの軌道や打点のコントロールをとても難しくしてしまうだけでなく、スピンアキシス(回転軸)にも大きく影響を及ぼすので、踏んだり蹴ったりです。
パッティングは、たとえグリーンを正確に読めたとしても、読んだラインにボールを乗せなければボールはカップへ入りません。
もしスピンアキシスに影響が出やすいパッティングフォームでパッティングをした場合、単純なストレートラインでさえ打球は右へ左へと曲がってしまいます。これは自分のラインの読みが悪かったのか?それともうまく打てなかったからなのか?なぜ曲がってしまったのか?と混乱し自信を失くしかねません。
このような期間が長く続けば続くほどメンタルへのダメージは大きくなり、そのままイップスへ突入してしまう可能性が高くなります。いらっしゃいませー!
イップスの克服法
誰でもある日突然イップスに陥ってしまう可能性があります。現在、イップスの最も有効な治療法には、専門家による心理療法やコーチング、リラクゼーション法などがあります。
また、プレイヤー自身がリラックスし、過剰な意識を回避するために、ある種のルーティンや習慣を取り入れることも有効とされています。
しかし、プレイヤーによって原因や症状が異なるため、慎重に個別に対処する必要があります。
おわりに
今回取り上げたようなイップスに繋がる動作・運動は、ゴルフ仲間にも教えてあげたい情報ですよね。
イップスにはもちろん心理的な要因のものもありますが、特定の動作に起因するものもあるということにも頭の片隅に置いておきましょう。
また「ある一種の動作・運動を行う際に困難が生じ実行が難しくなる」という症状には、【イップス】と【チョーキング】というものがあります。
これは非常に似ていますが、発動する条件・環境が違うので、もちろん対処法も異なります。気になる方は以下の記事も読んでみてください。
・イップスとチョーキングについて