春が近づいていて
風が強すぎて、全てのことは置いて、黄色い雨合羽を着て走り出したい朝でした。風が強い日が増える冬と春の合間は、アクセルとブレーキが常に一度にかかっているような、不安定な気分になります。
朝の準備をしている間は、Podcastをよく聴いています。誰かと誰かの会話に、参加せずに聴いているだけのその時間は、読書と同じようなトリップ感があります。覚悟がないならやめた方がいいと思います、とスマートフォンのスピーカーから声が流れます。迷うならやめた方がいいと思います、その声は続けて言います。
そうかな、そうなのかな、ぐらりと揺れました。それでもPodcastを止めて少しするといつもの自分が戻ってきました。
覚悟を決めることは、何かの選択や、行動することに伴うことだと思います。
いつもの自分は思いました。自分でいることに、わたしはとっくに覚悟を決めている、誰かの声に揺らされる段階にはもういないんだよ。
誰かの声を聞くと、それが自分の状態に似ているとき、自分に言われているような感覚になります。境界線がうすく、共感してしまう、ふいに、心に直接手で触れられた感覚になります。
でもそれは、お互いによく知らない、どこかの誰かの声だったことに少しして気が付くのでした。
じめじめとした朝でした。
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