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マーケティングトレース#1 クラシル

エンジニアとして働き始めてから1年が経ち、自分のプロダクトの舵を正しく取れるようになりたいという理由でマーケティングの勉強を始めました。

この1冊ですべてわかる 新版 マーケティングの基本」を読み終わり、次に何をしようか迷っていたタイミングで黒澤友樹さんのマーケティングトレースという取り組みを知ったのでさっそく挑戦します。

第1回はクラシルです。
もともと料理が好きでクラシルも使っていましたが、個人的にレシピ動画を作成してInstagramに投稿するようになってから、レシピ動画を1日50本投稿しつつ、新しい取り組みを続けるクラシルのサービスにますます興味が湧いてきました。

【テーマ企業の概要把握】

会社概要:
社名:
dely株式会社
代表取締役:
堀江裕介
設立:
2014年4月
資本金:
100,000,000円
代表サービス:
kurashiru
(女性向けメディア「TRILL」を扱うTRILL株式会社は連結子会社)

サービス概要:
コンセプト:
「きちんとおいしく作れる」(サービスバリュー)
「70億人に1日3回の幸せを届ける」(サービスミッション)
特徴:
レシピ動画数国内No.1。食品メーカーとのコラボ動画、ミールキットやおせちの販売など、レシピ動画以外のサービスも近年増えている。
種別:
モバイルアプリ、Webサービス、食品販売

レシピ動画として有名なクラシルですが、ここ数年で企業とのコラボやミールキット販売など、動画以外の取り組みが急速に増えています。

特に昨年は映画「天気の子」の劇中レシピの提供や「食べるハーバリウムカフェ」が印象的でした。
レシピ動画サイトの枠を超え、現実世界でのタッチポイントから「これ作ってみようよ」という会話を生みだしています。


【市場分析】

現在の食品・料理市場の分析

PEST分析
政治:
働き方改革。残業を減らす社会の動き。軽減税率の導入。
経済:
中食市場規模が10兆円超え。女性での伸び率が高い(前年度比+11.0%)
社会:
女性の社会進出の増加、中食へのイメージ改善、家ナカ消費の活発化(自宅での時間を豊かにしたいニーズ)。
技術:
主婦層である30, 40代にYoutube, LINE, TwiiterなどSNSが定着しつつある。3, 40代女性は同年代男性よりInstagramを使う頻度が高く、40.9%の女性が「料理、レシピ」を閲覧している。

社会全体で残業時間を減らそうという意識は広まりつつも、まだ実現に至らない会社が多いかと思います。
そんな状況で中食(買った食品を自宅で食べる)市場は10兆円を超え、特に女性での伸び率が高いことから、主婦間でも中食に対する抵抗は薄まり、食卓に惣菜が並ぶ機会が増えていると考えられます。

また、SNSでのレシピ検索やレシピアプリの広がりからは、すきま時間で効率よくレシピを決めたいというニーズを感じます。
日本6位はもはやマス?クラシルのインスタが逆転でNo.1フォロワーになるまで」でも語られていましたが、TLに流れてきたレシピに良いものがあったら保存しておき、後から選ぶという使い方も増えています。


【3C分析】

顧客・自社・競合の関係性

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(黒澤さんの「マーケティングトレース参考スライド」を使わせていただきました)

顧客:中食・孤食が増加して、食事にコストを使いたい人は減る。一方で余暇に使えるお金や時間が減ったことで、家ナカ消費(家で遊ぶ/楽しむ)需要は増加。
競合:類似サービスだけでなく、ライフスタイルメディアや個人料理家のSNSなど競合が多岐に渡る。惣菜のクオリティもどんどん向上。
自社:レシピ動画数No.1。企業とのコラボやECなど新しい取り組み増加。

動画以外のレシピも含めると競合は多岐に渡ります。クックパッド・DELISH KITCHENなどのアプリ以外にも、メディアアプリがレシピを紹介していたり、個人の料理家がYOUTUBEやTwitterでレシピを提供している例も多く見られます。


【SWOT分析】

市場状況や競合を踏まえて、自社の強みや弱みを分析

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強み:
レシピ動画数3万本超えのコンテンツ数の多さ。Instagramフォロワー数国内企業6位でSNSでのユーザーとの接点を確保している。
機会:
スマートフォン、SNSの利用者数増加
弱み:
コンテンツの提供コストの高さ
驚異:
競合の増加。中食消費の増加。

既にクラシルはレシピ動画数国内No.1、Instagramフォロワー数も国内レシピアプリNo.1となり、リーダーのポジションと言えます。

クラシルの強みは何と言ってもコンテンツの質・量です。
こちらの記事で紹介されていますが、クラシルのレシピ・動画はすべて自社スタジオ内で作成されています。

他社サービスを使ったときに思いましたが、写真のクオリティの差や誤字の多さはレシピの信頼にもダイレクトに影響します(そういったサービスは実際にレシピの質もバラつく)。

しかし、動画をすべて自社で撮影し、ユーザー投稿機能も無いクラシルは、動画の質を高く維持できる一方で、作成にかなりコストを割いていると考えられます。
レシピのアイデアの限界もある中で、今までと同様の質・量のレシピ動画を投稿し続けないと、類似サービスにユーザーが流れる可能性が無いとは言えません。

また、高齢化や中食消費が増加して料理人口が減る中で、動画レシピ市場のユーザーをどのように確保していくのか?は課題となりそうです。


【4P分析】

理想のポジションを取るために、どのようなコミュニケーションやサービス設計をしていくのか

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Promotion:
SNSの特徴や使われ方を考慮した、ユーザーのニーズが生まれたタイミングでベネフィットを与える施策。
Product:
自社内での質・量の両方を意識したコンテンツ作成。ミールキットやおせちなど食品の販売。
Place:
メインはモバイルアプリ、webアプリケーション。ECスタートに向けてミールキットやおせち販売を通して流通チャネルを整えている。
Price:
競合と同価格帯。


今後のクラシルはレシピ動画リーダーのポジションを維持することを前提で、ECへサービス分野を広げていくと考えられます。

EC事業が立ち上げ中であることは社内の人がTwitterで明言してますし、昨年からのミールキットやおせち販売は、流通チャネルの整備や実験を含んでいたのかもしれません。

既にインスタで比較的ITリテラシーのある層をガッツリ掴んでいるので、ECサービスとレシピ動画を連携させることで、レシピ選択・調理以外のフローでユーザーにさらなるベネフィットを与えてファンを固定化させていくのではないかと思います。

【自分だったら...】

自分が社内にいたらサービスをどう展開させるか考える

ECへ参入するということは、今までオンラインでは解決できなかった課題を解決するということです。
先程「レシピ選択・調理以外のフローでユーザーにさらなるベネフィットを与えてファンを固定化させていく」と予想しましたが、私なら既存のレシピサイトのターゲット(料理を定期的にする人)だけでなく、今まで料理をしてこなかった層を取り入れて、料理を定期的にするユーザーに育てていきたいです。

料理をしない層は、そもそもスーパーに行く時間がない・食材の管理ができない、などレシピ作成・調理以外のフローで課題を抱えている可能性があります。
料理は作れるけど、最終的に余った食材や料理を何度も傷ませた経験があるので1食分をコンビニで買うようにした、という人もいるのではないでしょうか?

例えばECで食材の調達をサポートした上で、レシピを考える→買う→作る→保存→片付け、の後工程すべてをサポートして、食材がなくなる瞬間までの体験を快適にできたら、今までにない「料理の成功体験」をユーザーに与えられます。
豊富なレシピ数や動画のわかりやすさはクラシルが培ってきた強みです。より快適でより楽しく、一貫した調理体験を届けるチャンスはクラシルが一番持っていると感じます。

【まとめ】

今までのレシピサイトは、既に料理を作る意思のある人が使用するものでした。
しかし、クラシルには現実世界やSNSでのタッチポイントの多さを活かして、料理人口そのものを増やし、市場を作るリーダーになってほしいと個人的に思います(そしたら私も料理をもっと楽しめる!)

EC参入がどういった形で行われるかはまだわかりませんが、「70億人に1日3回の幸せを届ける」というサービスミッションの「70億」という数字に対して本気のクラシルが今後も楽しみです!


#マーケティングトレース

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