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コロナウイルスのアウトブレイクに、学校の休校は有効か?


Lancetで上記論文を見つけたので紹介します。


○ Title

Viner RM, Russell SJ, et al.  School closure and management practices during coronavirus outbreaks including COVID-19: a rapid systematic review. The Lancet child & adlescent health April 06, 2020.


○ Introduction

・107ヵ国でCOVID-19に関連した学校閉鎖(休校)が行われている。子どもの約半数が影響を受けている

・「インフルエンザの流行では、休校によって生徒間の接触を減らすことで感染を防いでいる」というエビデンスと推測を元に、コロナウイルスに対しても休校やその他のsocial distancingがなされている。

・インフルエンザは主に子どもが媒介者となっている

・2014年のイギリスの保健省によるシステマティック・レビューでは、「休校はインフルエンザ・アウトブレイクの初期になされれば効果がある」 という結論となっている。

・過去のモデル研究では、休校は、再生産数<2 および大人より子どもの方が罹患率が高い場合に最大の効果を発揮する。

・以前のいくつかのコロナウイルスのアウトブレイクでは、学校での感染はごくわずかである。

・コロナウイルス感染症に関して、休校をはじめとする方法が有効化どうかは不明である。

・台湾は、COVID-19のアウトブレイクで、全地域の休校を避け、個々の学校での感染をみて、地域の学校閉鎖や特定の学校の閉鎖、学級閉鎖を行った。台湾は効果的に感染を抑え込んでいる。

・この論文は、休校およびその他のsocial distancingの有効性および費用対効果を明らかにすることが目的である


○ Methods

・pubmed, WHO Global Database, medRxivで特定のwords(SARS, MARS, COVID-19, school, etc)で検索して出てきた論文を、title・abstractで取捨選択し残った論文でシステマティックレビューを行った


○Result

・上記の結果、16の論文が選択された。うち6つが掲載前、1つが査読前論文。全てが SARSに言及しており、5つの掲載前論文がCOVID-19による休校について言及していた

・中国や香港では全国の学校が同時期に休校となっており、また他のsocial distancingと同時であったため評価が難しい

・モデル研究では、休校単体でも感染拡大に対して予防効果がありそうだが、他のsocial distancingの方が強力。他の方法と組み合わせて行うべき。


○Discussion

・休校による経済的コストをはじめとした悪影響は多いが、コロナウイルス感染症のパンデミックにおける休校の有用性は、文献上はっきりしない。



まとめ

インフルエンザではエビデンスがあるものの、COVID-19における休校の効果ははっきりしないようです。小児が主要な感染者とは言えない以上、まず最初に休校のみを選択した政策はナンセンスだったと言えるかもしれません。「教育をオンラインにシフトさせたかった」、「社会実験として休校という戦略の効果を確かめたかった」、等の目的があるのであれば、力技としてあり・・・だったのかもしれません。

こういった前例のない状況では、「この戦略は後に統計的に解釈可能だろうか?」といった視点で政策をデザインしたり、統計を取れたりするといいですね。

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