停滞−1
人を教える立場にありながら、その素地を持たない。得られた機会と権利によって日々働き続ける。指折り数えた挙句、一定期間経過するとふりだしに戻る。これで何度目だろう。賽の目で過ぎる日々の結末を決められたのであれば少しは気が楽になるのだろうか。平々凡々とは言い難く、かと言って目を見張る様なこともない。手にしていた切符は自ら選び抜いた筈なのに、破り捨てたい衝動に駆られる。迷いは常に生まれて、
「あの時こうしていれば」
「この選択をしていれば」
「あの言葉に耳を傾けていれば」
度重なる「たられば」の上に立っている。黒板に書かれた文字の羅列は誰の為なのか。生活を成り立たせる為の言葉に意味はあるのか。腐す心に溜め込まれる自問。答えを欲するがあまり先走り、躓いてしまう。出血した事実に自らを慰め、根本を見つめられない。
「痛い。」
一体何が痛いのか。無意識に溢れた一言にすら疑う心。
「苦しい。」
途方もなく続くであろう日々に息苦しくなる。雑踏から聞こえてくる声、刺さる目線に神経を研ぎ澄まし、ありもしない普通を探求する。求めていたものが何であったのか、今となっては分からない。蒼白した景色を他人事の様に感じながら、手にした切符を未だ破れずにいる。
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