NUMBER GIRLの『SAPPUKEI』を聴いてみた編
こんばんは、内山結愛です。
今回は「向井秀徳さん特別編その①」として、NUMBER GIRLの『SAPPUKEI』を聴いてみた編をお届けします。
荒涼とした都市 東京で、蠢いては酩酊し、奏でる繊細でセンチメンタルなサウンド。
初期衝動抑えきれぬ絶唱と、鋭いメッセージが情動を打ち震わす。
是非読んでみて、聴いてみて下さい!
1.BRUTAL NUMBER GIRL
「論・客・用・無し!」と叫んで始まる。初めて聞く日本語。重たくジャギジャギとギターは掻き鳴らされ、エフェクトも効いているため、歌詞を聞き取るのが難しい。自己紹介と意思表明のような曲。歌詞に登場する「平尾駅」は福岡市に実在する駅のこと。
「我々は冷却都市の攻撃を酒飲んでかわす かわす」という歌詞のように、高校生の頃から「割ると、なんか気持ち悪くなる」と言って、ジャックダニエル(テネシーウイスキー)を飲んだり、大学試験の前日学生服の上にジャンパーを着て単語帳を見ながらお酒を飲んだり…お酒を愛するが故に、ハードな飲酒ライフを送っていたことがわかる。(『三栖一明』p48、67)
2.ZEGEN VS UNDERCOVER
メロディアスなメロディーに乗せて、「ヤバイ さらにやばい バリヤバ」と嘆いている。言葉のリズムが気持ち良い。回転するように素早く鋭いドラムが格好良すぎてバリヤバイ。感情爆発。1:02〜これだけ言われるとバリヤバいが自分の中で流行り出しそう。やはり繰り返されると強い。1:53〜次第に前に出てくるギターのメロディーも、それを支えるベースも歌のメロディーも良い。
3.SASU-YOU
掛け声、何と言っているんだ…。何回聞いても「鉄筋!バリゴウ!」。ドラム凄い。アヒト・イナザワさん…大爆発。ボーカルも激しく、感情剥き出し。ハード。1:32〜ノイジー。1:52〜ボルテージMAX。耳に残るギターリフ。
4.URBAN GUITAR SAYONARA
前の曲と繋がって始まる。オルガンを使った新鮮な曲調。0:20〜ギターがキュンキュン鳴っている。やっぱりドラムが好き…格好良すぎる。0:55〜突然のサックスでジャジーな雰囲気。そこからピアノも入ってくる。1:55〜ギターの音色がキラキラしている。色んな音が色んなところで鳴っていて複雑。サックスは自由。言葉の置き方、リズムが気持ち良いボーカル。4:06〜散らばっているものをまとめるような「ジャーン ジャーン」好き。
シングルとして発売された楽曲のアルバム・バージョン。
5.ABSTRACT TRUTH
初っ端からジャギジャギしい。気だるいテンポ。歌詞面白すぎる。1:52〜徐々に高まり、テンポチェンジして激しく展開。刺々しく、怒りに満ちたように言葉をぶつける。2:29〜滅茶苦茶格好良い…格好良い。半狂乱になりながらも「本質なんてどこにもない」という本質を歌ってしまうあたり凄い。
6.TATTOOあり
煮えたぎるような赤いイントロ。ドラムのバシバシ、堪らなく良い。1:22〜太いベースの音の存在感とギターのアルペジオのコントラスト。2:17〜ここからの怒涛の展開好き。2:43〜田渕ひさ子さん…狂いっぷりが男前…ノイジーにギターを掻きむしる姿誰もが惚れてしまう…
↓アウトロの田淵さんが格好良すぎて、空間支配力が凄すぎて、鳥肌も立つし、寒気もするし、涙が出そうになるトンデモライブ映像
この曲は向井さんが音楽バーでバイトしていた頃、バイト仲間だった女の子に恋をして、告白するもバッサリとフラれた喪失感から作られた曲。その彼女の腕にはタトゥーがあったことが由来している。(『三栖一明』p81〜82)
7.SAPPUKEI
「△●?◇♯…大阪。」爽やかなギターの音。爽やかだけど、タイトル通りどこか殺風景な灰色の雰囲気。徐々に疾走感を蓄えていき、駆け抜ける。1:36〜「生かす風景‼︎殺す風景‼︎」の時だけ人が変わる。延々と鳴っている繰り返しのギターフレーズが幻聴のように耳に残る。中尾さんのベースとても頼もしい。後半のドラムの追い込み気持ち良い。
8.U-REI
「幽霊」と「憂い」を掛けたタイトル。不思議なオーラを放ち、予測不可能。0:16〜バリヤバイポイント。ベースの鳴りが好き。気怠くうねりながら進む。疾走と気怠さの緩急が良い。東京での生活が本格化する中で、現実と願望、妄想の中でゆらゆらしているような歌詞。2:58〜…!!非常にドラマチックで、予期せぬ展開。
↓歌詞にも反映されているように、向井さんの東京に対する熱い気持ちがとても純粋で、アツくて…だけどやっぱりお酒が好きな所が面白い。
「ビビリももちろんありつつだけども、福岡から東京というシティに対して挑みに行くっていう気持ちが非常に強かった。そういう怖い、常に曇っている空の下東京シティ、建物がすすけた灰色の世界・東京シティでほぼ毎日ライブをするということは少しでも気を抜いてはダメだと。」(『三栖一明』p154)
「東京へは新幹線で行ったわけですけど、あのときの「東京に来た!」「別世界に来た!」という感覚は忘れられない。別の大学の試験に受かって、進学で上京するわけでもないのに、「俺はとうとう来たぞ」と。あまりにも興奮して、飲みに行きましたから。」(『三栖一明』p67)
9.YARUSE NAKIKO の BEAT
哀愁漂うギターの1音1音がダイナミックに響く。切なく、夕暮れ時のようなイントロ。とても懐かしくなる。サビになると音の壁で覆われるような轟音っぷり。同じような展開、歌詞が繰り返される。
10.TRAMPOLINE GIRL
もう最初の掛け声はわからない…。ドクドクするようなリズムを刻む。シリアスな雰囲気で危険な空気感。0:52〜ギターの震える音色が幻想的。次々と違う印象を抱かせる。NUMBER GIRLにとって「少女」という存在は重要なものに思える。曲調はパワーみなぎる明るさがあるが、ここでの「飛ぶ」は自殺を仄めかしているよう。2:14〜一旦落ち着いて再びジワジワと燃え上がっていく。変拍子が楽しい。「零時半」の英語みたいな発音が好き。
11.BRUTAL MAN
微かな喋り声。8ビートで疾走。全身でノッてしまう。0:19〜ベースが堪らない。安定感。耳を奪われる。ジャギジャギなギターやっぱり最高。「I’m a brutal man」で悪戯に止めるギターずるい。最後まで執拗に「I’m a brutal man」と繰り返す。繰り返される諸行は無常。向井さん自身“繰り返す”ということを愛し、こだわっていることがここからも感じられる。
もともとディレイペダルとか、エコーとか、繰り返されるものが好きなんです。なぜかと言えば、この世は全て繰り返されているから。(『三栖一明』p191)
↓一曲目の「BRUTAL NUMBER GIRL」と最後の曲「BRUTAL MAN」の誕生日秘話。ノリが良すぎる。
「デイヴ・ブリッドマンのスタジオでまた何曲か録ったんですけど、やっていくうちにスケジュール的に時間が余ったので「もう少し作るか、天気もいいし」と、その場で新曲が二曲できて。それを最初と終わりの二曲にしてね。」(『三栖一明』p207)
「”BRUTAL”っていうのは、荒々しいという意味なんだけども、北九州の方言で”いさっちょる”というものがある。勇ましいという意味ではなくて、「勇ましさを気取ってる」「勇ましく見せる」みたいなニュアンスなわけ。「な〜ん、いさっちょるんかお前!」っちゅーような。そのいさっちょる感じが、まさに私自身(笑)。言い換えればまぁ”BRUTAL“。それでこの二曲ができたっちゅーわけです。」(『三栖一明』p208)
↑これまでのジャケットは比較的ビビッドな色使いが多かったが、本作は重々しい黒を基調にしている。ジャケットの少女の絵は向井作。
「ジャケットデザインを作るにしても、いつも「重くしよう」「軽くしよう」「ポップにしよう」とかいろいろあるんだけど、これはたぶん「重くしよう」だろうね。」(『三栖一明』p200)
↓『SAPPUKEI』ジャケット中面には、アメリカで時間が余り作られた「BRUTAL MAN」の歌詞が、荒涼たる真冬の“SAPPUKEI”な景色に配置されている。
♦︎ NUMBER GIRL の歴史や音楽性など
NUMBER GIRL は1995年に福岡で結成され、2002年11月30日に解散したが、2019年2月15日に再結成を発表した。メンバーは向井秀徳(Vo/G)、田渕ひさ子(G)、中尾憲太郎(B)、アヒト・イナザワ(Dr)の4人。本作は音楽雑誌「snoozer」が発表した「日本のロック・ポップアルバム究極の150枚」において37位にランクイン。The Flaming Lipsなどのバンドのプロデュースで知られる奇才エンジニアDave Fridmannをプロデューサーに迎えている。
初期は Pixies からの影響が強く、ボーカルスタイルも曲調もリスペクトを感じるものがある。エモ、パンク色も強く、まさに”初期衝動”が詰まったような、ヒリヒリとした勢いとポップさがある。
本作はちょうど中期にあたる時期にリリースされ、1stアルバムの勢いやポップさ、2ndアルバムのハードさを絶妙なバランスで融合した作品になっている。ここからさらに音楽の幅を広げていく。
後期は向井秀徳らしいボーカルが確立され、リズムの強調やダブっぽさ、音に和の要素が取り入れられるなど、大きく変化していく。後期〜現在に至るまでの向井秀徳らしいボーカルは、ZAZEN BOYSにも受け継がれる。
今回は、NUMBER GIRLを初め、向井さんをより知るために『三栖一明』と『厚岸のおかず』の2冊の本を読みました。
レビューをするにあたり、本を読むのは初…!
NUMBER GIRLの、向井さんの、生き急いでいて、やりたいことがどうにもこうにも衝動的に溢れてしまう所、とっても格好良くて愛しい!
「私はとにかく何かをしなければいけなかった。あと、そうやって表現をすることで世間、他の世界と関係を持ちたいというのもあった。」(『三栖一明』p89)
“表現する”ということに対して、ここまで粘着し、愛し、正直な人って居るんだって思いました。
そして、言葉の力が凄い。とにかく凄い!
『厚岸のおかず』を読んだ時も思ったけど、心象風景を具現化する力の強さ…言葉の解像度が高い。
短編の面白おかしい話が沢山詰まっているのですが、「本作はフィクションです。」というネタばらしがなければ、ずっとその世界に取り残されてしまいそうでした。
一方で『三栖一明』はかなり分厚くて、読んでると指が痛くなる重さだったのですが、ほんの少しでも向井さんのことが知れたような気がして嬉しかったな…
それと同時に、「向井秀徳」という人物を知るのにはまだまだ足りない、届かないということを思い知らされました。
自伝のような本を読むのは初めてだったので、書いても書いても書き溢してしまうような濃密な人生を覗き見する体験、贅沢だった。
アルバムを聴く前からガッツリ下調べするスタイルは初だったので、興味と好意を持った状態でアルバムを聴いたら、案の定本当に好きになってしまった…
危ないな…沼です、NUMBER GIRL。
バリヤバかったです、NUMBER GIRL。
次回は「向井秀徳さん特別編その②」として、 ZAZEN BOYS の『ZAZEN BOYS4』をお届けする予定です。お楽しみに…!
最後まで読んでくださり有難う御座いました!
最後まで読んでくださり有難う御座いました!!!