美しい私たちへ


僕とあの子は全然似ていない。
でも僕はあの子にキスをするために、あの子は、僕にキスをする日のために生きている。
僕ら2人にはそれが本当に、なにより美しく輝いてみえるのだけど、でも僕達はみんなでこの時代に生きている。だからみんなでその美しさを知りたいと思う。僕とあの子は、誰も見捨てずに唄う彼らに憧れてきた。だから、だからシーツにベッタリと背中の赤い痕がついていた朝も、有り合わせで漂白していく空洞の昼も、音楽が玄関を叩き続ける今も、殺戮の国の土を舐めて絵を描く。僕はTwitterの禍々しい画像を見るのをやめない。

どうやったら隣の部屋の住人にこのギターの音色が伝わるのか、どうすれば僕の玄関は絵画に変わるのか?僕達は方法を考える。
悲しみを解決するのは、本当に時間だけですか?
そんな言葉に抗おうと、どれだけ涙が溢れても、今、こうして書いている。
あの子はそんな僕に、目の霧を晴らす苦い薬を分けてくれるんだ。惜しみなく分けてくれる。僕はお返しに鼓膜の張り方を伝え続けてきたよ。
それだけで今日まで生きてこられたんだ。

避難警報が僕の部屋に届かない夜は、あの子はピストルを自分の頭に向けて、引き金を引いてくれる僕を待っている。僕は赤く染まりゆく窓を知らずにたった独りで愛を歌う。
いつまでも自分を許せない僕らは、そのせいでお互いを沈め合い、心臓をちぎり合う。僕はあなたの尊い心臓をちぎって、一体どこへやってしまったのだろう。僕らは心の底から笑い合えることを知っていても、そんな夜が確かにあっても、上手くできないことがある。

僕にはあの子の叫びがまだ聞こえない。
僕はまだ、みんなの顔を見たことがない。
それでも何度も精神を張り直しては霧を晴らしていくのです。意味はいらない。今日もただ続けていくの。


いつかの教会からみた草原は、あの子の道を永遠に隠しているようにみえた。風も動かぬ空の下、僕はあの子と同じ海を泳ぐと誓ったのです。


2023.12.10

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