繋星家 1
どこかの次元で、ある大家族が居た。
僕は長男で、下に弟が3人、妹5人いた。
ある時こっそり、兄弟たちだけで家を抜け出して旅行に来た。
1番下とその1つ上の妹2人はまだ小さいので、大学生の長女と一緒に留守番をしてもらった。
旅行と言ってもなるべく人の居ない場所を選んで、ぞろぞろと移動しているくらいだった。
僕ら兄弟には、ある秘密があったから。
――
「兄ちゃんたち遅いー!!」
僕らは地下6階に車を停めて、非常階段で一番上を目指して登っていた。
「翔飛(しょうと)、少しはペース合わせて〜」
四男の翔飛は小5で、名の通り"飛翔"の力を持っていた。
「雷莉(らいり)達に合わせんのなんてやだよ!!」
「はあー?合わせてもらわなくていいです!さっさと行けばーか!」
翔飛といつもバチバチなのが、1つ違いの三女、雷莉。彼女も名の通り雷と電気を操る。
「バカはそっちだろバーカ!!」
そう言うと、翔飛は階段の手すりに上がり、更に上へと、軽々跳んで行った。
去り際の言葉にムカついたのか、雷莉が歯をギリリと鳴らすと、非常階段の薄暗い電灯がチカチカと点滅した。
「雷莉、どーどー」
そう穏やかに笑いながら小さな四葉のクローバーを雷莉に渡すのは、双子の妹の緑花(りっか)だった。
「…ありがと」
雷莉はそっと受け取ると、小さくお礼を言った。雷莉は、緑花には弱かった。
_
そんなこんながありながら、ようやく半分の30階くらいまで登ったあたりで、下の子たちがぐずり始めた。
僕は雷莉をおぶって、前に緑花を抱えようとすると、サッと横から緑花を抱き上げたのは、三男の駿扉(はやと)だった。
「兄(にい)でも、流石に二人は無理だろ」
表情ひとつ変えないままそう言って、スタスタと階段を登り始めた。
中学3年生という難しい年頃なのか、あまり口は聞いてくれないが、いざという時に頼りになる優しい子だった。
「ありがとう駿扉」
僕は背中を向けた駿扉にそう微笑みながら、雷莉をしっかりと支えて階段を登った。
僕ら兄妹は恐らく通常の人間よりも体力はある方で、力のおかげなのか、はたまた血筋なのかは分からない。
_
「おーーーい!待ちくたびれたー!」
上の方から声がして見ると、翔飛はもうとっくに最上階の64階まで登ったようだった。
「もう少し待ってて〜」
僕がそう言うと、翔飛は手すりに器用に片足で立ちながら、
「待てなーい!!上すっげえんだよ景色!!早くー!!」
と急かしながら、ジタバタと落ち着かないようだった。
僕は下の子たちを置いては行けないと悩んでいると、次男の斬弥(きりや)が名乗り出てくれた。
「兄(にぃ)も駿(はや)も二人抱えて大変だろうし、僕がダッシュで翔飛のとこ行ってくるよ!」
「まだ最上階までかなりあるけど平気か?」
心配する僕に、斬弥はニカッと笑うと、親指を立てて、問題ナシ!と言って走っていった。
二段とばしで軽々と登っていく斬弥は、翔飛程では無いものの、かなり速かった。
――