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其の者、火花という名で

今日、友達を待つ時間を潰すために入ったカラオケでなんとなくフジファブリックの「茜色の夕日」を歌った。

自分の語彙では説明できないので、お手数だが一旦歌詞を見ながらこの曲を聴いて、またここに戻ってきてほしい。
なんとなくこう、やるせなくて、さりげない後悔を知らず知らずのうちに募らせて、時間が経つとジワジワと胸に小さな傷として染み込んでくるボディーブローのような曲だ、と自分は思う。曲調自体は優しいんだけどね。

この歌の中にこんなフレーズがある。

「東京の空は星が見えないと聞かされていたけど、見えないこともないんだな そんなことを思っていたんだ」

茜色の夕日 / フジファブリック より

この流れ、どこかで見ただろう。
自分の記事を読んでくれている人はもしかしたら覚えているかもしれないが、最初に投稿したものにちらっと書いていた。

↑是非読んでやってくださいませね↑

そう、この記事にちらっといつか記せたらな〜みたいなことを書いていた、あの例の、あいつの話である。

奴と出会ってから3年ほど経ち、やっと文字にする決心ができた。
Cメロを歌ってたあたりぐらいで覚悟が決まった。

先に言っておくが別に何も起こっていない。残念だったな。
火花のことと、ただ自分がいつもと違う気持ちを抱えながら過ごしていた、というだけの話。

だが同期、見るな。君たちは本当に見るな。
同期はこの文を読んでも感想を言うな。広めるな。絶対にだ。



でも自分は書くからな。もう知らん。
主に羞恥心と気まずさを犠牲にして今回の記事はお送りしております。

なんとなく今先延ばしにしていたら2ヶ月経ってしまっていた。
酒の勢いでこのまま公開してしまおう。

2023/2/7
自分の選んだ文字が気持ち悪すぎて引っこめてしまった。
けどなんだかこのまま世に放たれないのも勿体無いので、感想を持たずに読んで欲しい。労力だけ褒めて欲しい。




奴、名を火花という。
と言っても、自分が勝手にそうやって本人の知らないところで呼んでいただけなのだが。

奴は会社の同期で、自分より歳が2個上。なぜ自分が火花と名付けたかというと、入社して初めての会話がピースの又吉ってメチャクチャかっこいいよね、という話題で謎に盛り上がってしまったからだ。

ここだけの話、翔んで埼玉というあだ名の候補もあった。埼玉から突然、何の脈絡もなくこの北の大地に引っ越してきたからだ。なかなか秀逸なネーミングセンスだと自負している。

火花のことを想像しやすいように書いておく。
奴はすらっとしていて背が高く、ちょっとざらついた低い声でゆっくり話す。深い水底を宿したような目で、目線はどこを捉えているのかわからない(本人は別に自覚がなかったと思うけど)、そんなミステリアスな雰囲気があった。
読めば読むほど絶妙な詩的表現が自分のキモさを引き立てている。

ルックスは歴史の教科書の戦前〜戦時中に掲載されていそうな昭和の白黒写真顔。パートのおばちゃんが外で仕事をしている奴を見て、俳優の○藤阿○加にそっくりだと言っていた。後から調べて見たら同類項で括れるくらい似ていた。マジで似ている。

そして結構笑えないレベルのヘビースモーカー。タバコが切れた時、しんどそうに「ごめん、2本だけもらってもいい?後で1箱買って返すから」と支離滅裂な交渉をしてくるほどの重度っぷり。本当に買ってくれた。

奴の中でタバコは食事よりも優先順位が高いらしく、よく「タバコにカロリーがあれば困らないのにね」と、早死にしたいのか生きるために栄養を蓄えたいのかよく分からないことを口にしていた。喫煙所で朝礼の時に倒れたと笑いながら自分に話し始め、その時にも言っていた気がする。多分奴は薄命だろう。

一度紙タバコを絶とうとしたらしいが、ちょうど卒論の時期で、ストレスに飲まれて失敗したと話していた。タイミングが愚かすぎて笑ってしまった。たわけである。

そして本が大好きなようだった。自分でもどうやら執筆をしていたようで、帰省のタイミングで出版社に持ち込みをするという風なことを聞いた。同期たちの飲み会に誘うと詩集に5万ほど使ってしまい金欠で行けない、と返されたこともあった。

いつだったか、猟師を題材にした小説を読んでいると話していた時に、将来山の奥で電気のない小屋に1人で暮らして生きていきたいと言っていた。どうやらかなり影響されやすいらしい。
それとは関係ないが、携帯の充電が3日持つと言っていた。そんな方法ワザップにも載っていない。

ざっと思い出しただけでもこの情報過多。なんとなくお分かりいただけただろうか。
ふーん、おもしれえ男、と思ったことだろう。


なんとなく、一目見た時から少し自分が見ている世界から少し浮いているような気がした。それは顔が良かったからなのか、身長が高かったからなのか、落ち着く声をしていたからなのか、理由はわからない。その時は表面的なものしか知らなかったから。いや、今だに奴の本質的な部分なんて、よく考えたら1ミリも分かっちゃいない。何も知らないのだ。
ラブイズブラインドでさえ、心のつながり、愛は盲目とか言いつつもポッドの中でどんな見た目をしているの?スタイルは?って元も子もない質問を投げかけてしまうのだから。どうでもいい。
個人の本質的な部分に触れるのはそう生半可なもんじゃねえよな、ということ。

初恋は小学校の時で、椎名林檎に似た担任の先生だと教えてくれた。
本当に初恋だとしたら人生2周目すぎるセンス。嫌いじゃない。

好きなタイプは吉澤嘉代子みたいな女性、らしい。
おい、対極の位置にいるじゃねえか。
残ってる、良い曲ですよね。 

仕事を辞める少し前、火花と同じ部署の女の子と3人で飲みに行った。
氷点下の夜空の下、3人でカラオケに向かった。そこで歌ってくれたのが茜色の夕日である。 

「俺は向こうから来たからこの歌詞みたいな経験はできないけど、〆さんはこれからなんだね。羨ましい」

そう言ってた。
その後に泣かせてやろうと思って、と3月9日を歌ってた。
いやいやいや、こんなザ・な曲で泣く訳なかろうよ。
そう強がりを言いつつも、もうこんなふうにして会えないのだと心の中では爆泣きしていた。
さすがに泣かなかったかあ、と残念そうだった。

いまだにその時に2人で撮った写真を見ると心臓をひと握りされてしまう。

お察しかと思うが、好きだった。
好きやん。読めば分かる、好きなやつやん。
そんな感情を持つ自分が気持ち悪くて目を背けていたが、確かに好きだった。
というか、もうこんな2文字程度で表せるような感情ではなかったと思う。
何もない、言葉も交わさない、けど確かに存在は近くにあって、そんな日常を共にしたい、初めてそう思った。

この人の最期を見守るのは自分でありたい、初めてそう思った。
重たすぎる。自分の中の粗品が右手を突き出して真っ先にそうツッコんだ。

ふざけてないとこんな文章なんて書けないんだよな、許せよ。



だめだ。記憶の断捨離を、と思ったのだが、きっと死ぬまで、脳にこびりついて取れないんだと思う。くそ、本当に、なんてものを残していきやがったんだろうか。
今だにあの曲を聴くと、あの顔を、声を、日常だったものたちを思い出しては心を締め付けている。

もう、話すことも会うこともないんだろうか。


くそ、くそ、くそ、くそ、タバコはずっと吸っててくれ、くそ、いつか本出したら買うから、くそ、くそ、どこかで元気でやっててくれ、くそ、このやるせなさ、自分もどうにかやるからさ、くそ、くそ、くそ。




※もし本人がこれを読んでいた時のために※

絶対ないと思うんですが。いかがお過ごしでしょうか。

まず謝らないとだ。本当に申し訳ない。勝手に人様の目につくところにこんなにつらつらと書いてしまったこと。この前出した課題のレポートより、キーボードを叩く指が妙に軽快な音を奏でていました。

書いたこと、気持ちも含めて本当です。ところどころ自分が思い出として無意識に補完している部分もあるから、多少ずれていると思いますが。

楽しかったです。他人に対してこんな気持ちを背負うことがなかったので。正直、この先同じような感情を抱く人間が現れる気もしないです。漠然と、この日々に対する切なさと小さな後悔と、踏ん切りがつけられなかったやるせなさを抱えながらぼんやりと生きていくのかな、なんとも思ってます。メチャクチャ重いわ、マジでごめん。
目の前で言われても困るよね、自分は吉澤嘉代子でも、椎名林檎でもないんだし。というかもう記憶の断片にすらなっていないかも。

今の感情元気でやっていてくれ、自分もどうにか生きていくから。という感じです。
上から目線かつ、ソラニンみたいな締め方をして申し訳ないです。そちらからしてみれば知らんうちに激重の感情を勝手に寄せられていて、勝手にその感情で自分の首を絞め、あたかもそこから立ち直ったような素振りの上から目線でこの言葉を投げかけられているのですから。何様だ?と思われても仕方がないと思っています。

正直、上で言った言葉は強がりを含めてのものです。あんだけ書いた後でいまさら隠すこともありません。

いろいろ、まだふと志村の声に乗せて、思い出してしまうのです。
つつがなく生きていてほしいという純粋な気持ちにも嘘は全くありません。
ただ、もう会うことも、話すこともないんでしょうか。


東京の空でも、星は見えないこともないみたいです。

#創作大賞2024 #エッセイ部門
















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