夏の手がそこまで
また時間があいた。自分は文章が降りてこないととことん書けない天啓タイプなので余裕で1か月2か月かかってしまう。
毎年来る初夏の報せの1つに、山形に住む友人からさくらんぼのおすそ分けが来る。〆、今年も送っていい?とメッセージがくると胸が躍る。彼女は惜しげもなく段ボールにミッチミチに入った1キロのさくらんぼを送ってくれる。届いた瞬間一心不乱にさくらんぼをほおばり、腹を壊し、夏の訪れを感じる。毎年食べ過ぎるとおなか壊すからね、と忠告をもらうが今年もしっかり腹を壊した。夏だ。去年は実家に住んでいたから、と家族でジンギスカンを送った。が。今年の拠点はコンクリートジャングルこと東京。何を送ろうか。さっき数個ほど残ったサクランボをベランダで食べて、いつか育つように、と種を飛ばした。どうなるかな。
夏の手がそこまで、なんて詩的な表現で夏の訪れを表してみたが暑すぎる。さわやかな表現なんてしている場合か?というほど。まだ序の口だというのだから恐ろしくてしょうがない。エアコンのありがたさを噛み締める日々だ。ただ自分は北の子で20数年エアコンの無い環境で生活してきたため、うまく奴との連携が取れない。つけて2分ほどで寒くなり、消して5分で暑さに耐えられずまたつける、2分で寒くなる、また消す、つける、消す、つける、消す。オンオフは大体アレクサに声をかけて頼んでいるので、「ああ、またコイツエアコンかよ」と思われているだろうな。これからの電気代の請求にヒヤヒヤしている。最近温度調節で一旦冷やすのをやめてもらう術を覚えた。ベッドに寝転がった時の自分の顔に風が直撃しているせいで、つけたまま眠りにつくと喉がガラッガラになっている。まだまだ心の距離は遠いらしい。ありがたいか?
多分これ以降夏の話はメインではないと思う。
こう、続々と東京の洗礼を受けている気がする。たとえばバイト。在宅ワークの面接に行ったが、2時間のうち1時間半ほどがアフィリエイト収入の話。
広告費が必要なんですね、でこれから入社していただくと1万円をですね、48か月、いやでも〆さんは学生さんですしね、36か月で問題ないですよ、やっているうちに元は取れてきますから、300名ほどやっていらしてね、すごい人だと76歳のおじいちゃんが~、あ、僕もやってるんですけどね、ほら見てください、〆さん最近検索したものってあります?あ、オーブントースター?へえ、じゃあ検索してみましょうか、ほら、このア〇リスオーヤ〇のね、このサイト、ここクリックしてみますよ、今リンクのURL変わったの見ましたか?この部分が僕たちがつくるいわゆる~
ハア、すごいですね、へえ あ~、なんか勉強になったと思います、へえ~、面接でこんな仕組みの話を知れるなんてよかったです、なんて脳みそを空っぽにして話を聞きつつ、不意打ちで投げかけられる数字の掛け算に戸惑いつつ面接を終えた。行くかこんなところ。最後の最後で昔髪型が辮髪(ラーメンマンみたいな髪型)だった話をされた。どうでもいい。不採用。
バイトも決まったが、研修に参加すると紹介されたときの条件とだいぶ違う。最寄り駅の出口が違う。見た目も全然自由で大丈夫です!と自信満々に言われたはずがオフィスカジュアル推奨。過度な染髪禁止。夜間学生の身分で終業後に授業があることと、デイリーファッションが輩のソレになりつつある最近の自分はオフィスカジュアルとはどう考えても程遠い。髪も青灰に染めた。無理である。初日の研修に参加して次の日に静かな怒りの文を添えてメールを送り、辞めた。研修中、上司と思わしき人が研修に参加した人が昼休みに外出したっきり帰ってこない、と電話していた。正直尊敬しかなかった。自習の時、初めて会った隣の人に飛ぶかもしれないとずっと話していたが現実になった。
また無職になってしまった。ことごとく社会に適応できない。正直貯金もヤバいので、そろそろ何かの職に就かないとならない。かなり焦っている。
ここから何を書こうか止まってしまった。
実感は湧いたか?まだこの話か。実感というよりかはいつの間にか適応していた、という表現のほうが合っているかもしれない。ただ、夏だけはいつまでも慣れることはないだろう。暑さもそうだが、雲一つない青空を見るとなにか心がざわついてしまう。なんでだろうな。そういった経験はないくせに、晴れた夏の日は誰かの死が身近にある、そんな気がする。不穏だけどなぜか不思議と安らかで。言葉では表現しがたい感情に飲まれることがある。
いい感じのバンドマンが、いい感じの曲で、いい感じに表現してくれることを願っている。
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