子供同伴で高級レストランに行くということに、一石投じるような子供と出会った話

Soup Stock Tokyoが何故か炎上していた。
利用したことがないのであえて冒頭ではそのことには突っ込まないが、子連れで飲食店に行くということに関して言えば、忘れられないなんともタイムリーな体験を数日前にした。

結婚記念日で、都心のイタリアンに訪れた。ゴエミヨにも百名店にも選出されているお店で、料理や接客はこれ以上ない程素晴らしく、どのお皿も大変満足した。

でも1番印象が良かったのは、隣の席にいた小学校低学年くらいの男の子だ。あとで調べて分かったのだが、この店は日曜と祝日は子供可ということだった。
しかし正直言って、彼が入店した時はすごく驚いた。この価格帯でディナーで子供ってどういうことなのだろうと不安な気持ちでいっぱいになってしまった。

でもその不安はすぐ打ち消された。彼はその場にいる誰よりもこの店の常連客だった。
会話から察するに、父親も飲食関係の方でこのイタリアンには家族で創業から来ているらしい。そのため息子である男の子は全く緊張せず、シェフに人増えたね(従業員の方のこと)と言っていた。あの人もあの人もはじめて見たよと飄々と言った後、父親になんでそんな偉そうなんだと嗜められていてすごく微笑ましかった。

男の子はきちんと最初にドリンクを頼み、シェフが男の子のためだけに作ったお子様パスタや但馬玄のステーキを食べる時も美味しそうに黙々と食べ、全く食器の音をさせなかった。そして大人と同じ小声でその場に相応しい会話を楽しんでいた。自分自身がなんとなく落ち着かず、つまらなくなりそうだと感じると自分から両親に積極的に話題を振っていたのには舌を巻いた。あの場にいたあの小学生の彼は、間違いなく周りの大人達と全く同じように食事を楽しんでいた。

このことに関して、非常にエイジレスだなと感動した。年齢は数字だとはよく言ったものだ。
高級店で何もドリンクを頼まない、最低限の食事のマナーを知らない、飲食中に店中に聞こえるような大声で話し偉そうにしている、自分の舌を過信していて料理に文句ばかりつけるようなことを言って食事を楽しまない、そんな子供のような大人達を見る機会があれば彼はどう思うのだろうか。きっと異文化過ぎて宇宙人を見るような気持ちになるだろう。

今まで私は、小学生くらいの子供を高級なフレンチやイタリアンなどには絶対連れて行かないという常識を心から信じていた。それが何よりも正しいと思っていた。大人は大人の世界、子供は子供の世界という考え方だ。しかし、今回の彼を見てそれが少し揺らいでしまった。子供でも、あれだけ大人と同じように食事ができるということを見てしまうと、その常識で子供達から何か大切なことを学ぶ機会を奪っていないだろうかと不安になる。

子供がまだ居ない私でも、彼はもちろん環境含め特別なケースで、言葉は悪いがあのくらいの歳で相当に訓練されているお子様だったということは分かる。けれども、彼のような子供と一緒なら、きちんと前もって話をつけた上で何度も何度も通った馴染みの店、そして子供連れでも可という記載があったりすると、家族で楽しく会話をしながら美味しいフレンチやイタリアン、もしかすると鮨屋にも行けるのかもしれないという希望を見た。

昨今、食育という観点からキッズデーや曜日によって子供可の店を設けている高級店があるがそれはこれ以上ない正解だと思う。もしかしたらSoup Stock Tokyoも離乳食無料を土日祝に限定すれば普段利用するような層とも被らず平和に解決できていたのかもしれない。

子供の時の非常に研ぎ澄まされた敏感な舌で、本当に美味しいものを味わうというのは効果的な情操教育で、家族一緒に美味しい食事をするというのはきっと何ごとにも変え難い幸せな時間ではないかと思う。社会的に子供と親が一緒に心から食を楽しめる機会が増えれば良いなとそんなことを考えてしまった夜だった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?