月下老人 kuro

私が二十代のころ、夢から覚めると、部屋の一角が白く光っていて、そこに二十代くらいの女性と一歳くらいの女の子がいました。
女性は、肩にとどかないくらいの長さの髪形の黒い髪をしていて、白いえりつきのシャツを着て紺色のスカートをはいていました。
女の子は、茶色い髪と、くりくりした大きな目をしていて、もこもこしたピンクの服を着ていました。
二人は、いきいきとしていて、二人からは嫌なものを全く感じませんでした。
私は、二人に見覚えは無いのですが、二人は満面の笑みで「お父さんがんばってー」と言うと、私に手をふりながら消えていきました。
私とその二人の関係も、女性と女の子との関係も全く分かりませんでした。
私は、私の手相には結婚線がはっきりと出ているので、二人は私の未来の子供たちなのだろうかと思いました。
私は、自分の結婚線を見ては、自分が結婚できるのは、三十七歳ぐらいだろうといつも思っていました。
私が、三十代中ごろの事です。
中国の怪談や不思議な話が書かれている本の中に、中国の縁結びの神の“月下老人”の話が書かれていました。
月下老人は、この世で夫婦になる予定の二人の足を、一本の赤い縄で結んで、二人を結び付ける神様です。
この赤い縄が、運命の赤い糸の元の話になっています。
この話を知った時に、自分の知りたい事を夢の中で知る事ができるとゆうパワーストーンに出会いました。
私が手相のとおりに結婚できるのなら、月下老人の話のように、私の足にも赤い縄が結ばれているのか見てみたいと思った私は、そのパワーストーンの効果をためしてみる事にしました。
その日の夜の夢の中で、自分の寝ている部屋の東側に、旅館の宴会場の大広間のような、畳がしかれた和風の部屋がありました。
明かりが無く真っ暗な部屋は、どこまでも奥の方へ続いているようでした。
自分の部屋で寝ている私の左の足首には、赤い縄が結ばれていて、赤い縄は少し宙に浮いた状態で、東側の部屋の暗闇の奥の方へと続いていまいした。
私の足に結ばれている赤い縄は、30センチぐらいの長さで、次々と色が変わっていました。
縄は、赤色から橙、黄、白、緑、青、藍、紫、ピンクになって、また赤色に変わっていました。
縄が結ばれている相手がどんな人なのか気になった私は、次の日に石の力を使って、その人がどんな人なのか知りたいと思いながら眠りました。
その日の夜に夢の中で、白い服を着た明るい茶色の髪をした女性が、白い部屋の前に現れました。
その人は、とても性格のよさそうな印象の良い人でした。
その女性が笑顔で、「あなたと結婚するのはこの人です」と言って、その人の後ろに立っていた女性を紹介してくれました。
その女性は白い服を着た二十代くらいの女性で、印象的だったのは、両方の耳に正方形のピアスを三つずつ着けていた事でした。
その女性を見た私は、『本人ではないけれど、何となく芸能人のAさんに似ている』と思いました。
それから数日後、夢の中で、前にも夢の中に現れた白い服を着た明るい茶色の髪をした女性が現われました。
その女性は、今度は両手に、氷砂糖のような5センチぐらいの大きさの半透明な玉を持っていて、「あなたの新しい魂です」と言って、私にその玉を差し出しました。
すると、その玉に、夢で見たAさんに似た女性がはっきりと映りました。
玉に映った女性は、レースで模様を描いたような透かしが入った黒い服を着ていたのですが、その服は、その夢を見る前にテレビの番組で見た、芸能人のAさんが着ていた衣装でした。
私の中で、芸能人のAさんと夢の女性を無意識の中で混同しはじめていたからのようでした。
氷砂糖のような半透明の玉は、璞(あらたま)と言われている、まだ磨かれていない新しい魂でした。
それは、激しすぎる怒りや憎しみで、魂の一つが恐ろしい怪物になった私に対して、『新しく与えた魂を時間をかけて透明できれいな玉のように磨きなさい』とゆう事のようでした。
それからは、私の夢に、Aさんと夢で見た女性が混ざった状態で現れるようになりました。
これから書く話がややこしくなるので、私の夢に出てきたAさんに似た女性を仮にアリスさんとします。
ある日夢で私が、青いドレスのような服を着たアリスさんになっていました。
私がいる真っ黒い部屋の中に大きな鏡があって、その鏡に青い服を着たアリスさんの姿が写っていました。
アリスさんになった私が、右手で鏡を触ると、鏡の中のアリスさんも右手を前に出しました。
その時になって初めて、鏡に映っていると思っていた相手が、双子だった事に気が付きました。
その夢を見た日から数日たったある日、芸能人のAさんが、初めて主演をつとめるドラマが始まる事になりました。
そのドラマが始まる日の事です。
午後三時ごろに、電車の窓から、駅から東側に見える山の所に、薄っすらと虹がかかっている事に気が付きました。
その虹は電車が進むごとにだんだんと大きくなってきて、今までに見た事がないくらい大きくてはっきりとした虹になりました。
その虹の外側にある赤い光の帯の外側には、白い光の帯がはきりと出ていて、内側の紫色の光の帯の内側には、ピンクの光の帯がはっきりと出ていました。
しかもその虹の内側にも、ぼんやりとした虹がかかっていました。
内側にかかった虹は副虹と言って、外側の帯の色が紫色で、内側の帯の色が赤くなっている虹で、空気がきれいだった昔のころには、ふつうの虹と一緒によく現れていたそうです。
通常は、副虹は虹の外側に現れるそうです。
古代中国では、雄の虹を“虹(こう)”と呼び、雌の虹を“蜺(げい)”と呼びました。
蜺は副虹の事なのですが、虹は龍のような姿をした霊獣で、常に雌雄一対になって現れると考えられていました。
その虹を見た一週間後の同じ時間ごろに、電車の中から東にある山を見ると、いつも見なれているはずの山が消えていました。
おどろいて、もう一度よく見てみると、晴れた空の下の山がある所に、白い霞がかかっていて、山や山の上にあるたくさんの建物を隠していました。
そんな光景を見るのは初めてでしたし、その日以来一度も見ていません。
しかも白い霞がかかった山の所には、薄っすらと虹がかかっていました。
その事があってから、私の中のAさんのイメージは、虹のイメージになりました。
その日からしばらくたったある日、夢の中でAさんが出演する映画のイベントが開かれていて、舞台の上に立つAさんたちの前にたくさんの人が集まっていました。
私はそこからだいぶ離れた場所にいました。
私の周りにもたくさんの人がいて、みんなAさんのイベントに参加したいのですが、なぜか私たちの前には、中国の黄河が横ぎっていて、どうしても向こう側に行く事ができませんでした。
黄河の水はかなり荒々しく流れていました。
私が黄河の前に行くと、黄河の左右両側から前後交互にたくさんの巨大な龍が現われました。
私の前には、左右から現れた交互に現れた龍の頭が階段のように並んでいました。
私は、怯えながらも、次々と龍の頭を踏んでいき、河の真ん中あたりまで進んだのですが、そこで夢が終わってしまいました。
その日からしばらくたったある日、趣味で集めているパワーストーンを買いに行く事にしました。
私の住んでいるマンションの敷地から道路に向かって進もうとすると、二羽の雀が、私の目の前で大きな円を描くように飛んできました。
雀たちは、地面に着きそうなぐらい低く円を描くように飛びながら、私の目の前に突っ込んできました。
私にぶつかりそうな雀たちを後にして道路に出ると、今度は私のすぐ近くにある手すりの上に二羽の烏が止まっていました。
道路を少し進んだ十字路の手前にさしかかると、横道から自転車に乗った双子の男性が現われて、そのまま通り過ぎていきました。
私は、電車を使って行く事にしたのですが、私が乗り込もうとした電車の車両ナンバーを見てみると、1515でした。
電車の数字も対だったのですが、車両の中に入ると、目の前に大きなリュックサックを背負い、頭を黒いスカーフのような布で覆った女の子が二人いました。
二人は双子では無いようですが持ち物も体系もそっくりでした。
たくさんの人が乗っている車内で、ふくよかな二人に押され続けた私がようやく立ち止まれた場所の目の前の座席に、眼鏡をかけた賢そうな中国人の女の子が座っていたのですが、その女の子のとなりには、そっくりな女の子が座っていました。
その日私が訪れたパワーストーンのお店は、同じ建物の地下の中の離れた場所に二店入っているのですが、その日先に入ったお店には、探している石はありませんでした。
もう一つのお店に行くと、私の探していた石がありました。
二石ある中からその石を選んでいる私がふと後ろを振り返ると、私のいるお店から通路をはさんだ反対側にある別の業種のお店の前に、Aさんの等身大のパネルが立ててありました。
Aさんは、当時、そのお店のイメージキャラクターで、いつもはパネルが一つしか立っていないのですが、その日はAさんの二種類のパネルが立っていました。
Aさんのパネルまで対になっていたのですが、その日私が買いに行ったパワーストーンは、魂のつながりと関係のある石でした。
その日からしばらくたったある日、Aさんが主演になった映画がテレビで放送される事になりました。
その映画の放送の途中に、白い服を着た双子の女性が出てくるCMと虹が出てくるCMが流れました。
またしばらくたったある日、朝のドラマのヒロインに選ばれたAさんが、新聞の一面を飾っていたのですが、インタビューに答えるAさんの写真と記事の真下に、金色の龍の写真が載っていました。
その龍は、金や銀などの貴金属で作られた、子供の日に飾られる兜の飾りの部分でした。
その日から、Aさんの共演者の方の名前に龍の字がついた人がいたり、龍に関係する事が書かれた記事の側に、Aさんに関係する記事が載っていたりして、私の読んでいる新聞に載っているAさんの写真や名前の側には、龍の字を見る事が多くなりました。
Aさんは、念願だった朝のドラマのヒロインに指名されただけでなく、そのドラマを担当する人が、その人の作品に出たいとずっと思っていた人でした。
その朝のドラマのヒロインは、今までオーディションで決められていたのですが、Aさんは初めて製作会社からヒロインに指名された人になりました。
そのドラマからヒロインが指名されるようになりました。
Aさんは、自分の願を叶えただけではなく、今まで続いてきた物事に変革をもたらしています。
Aさんがそれだけの大きなエネルギーを持っているのでいろいろな事を実現できたのですが、もしかしたら、私が夢で金色の龍になって首の所に乗せて飛んだのは、Aさんだったのではないだろうかと考えてしまいました。
Aさんのドラマが放送される日に現れた大きな虹の帯の色が、私の足に結ばれていた縄の色と同じだった事もあるので、Aさんと何か縁があるのかもしれないと考えていましたし、夢で見たアリスさんに会えるかもしれないと期待していたのですが、何年たっても何の出会いもありませんでした。
あの夢や不思議な出来事の数々は何だったのだろうかと悩みました。
「大旱の雲霓」と言う言葉があります。
広い範囲で何日も旱が続いて雨がまったく降らず、川や井戸などの地上にある水が涸れてしまっている時に、雨が降る兆しの雲や虹が空に現れたのでこれから雨が降るにちがいないとゆう事を表す言葉です。
私は、ひどい旱が続いている時に、空に雲や虹がたくさん現れているのに、何年も雨がまったく降らないような気持になりました。

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