屋上階
薄っぺらいドアのドアノブを回したくらいで大層なトンネルを駆け抜けた様な気にならないで
どの季節もカーディガンを羽織るようになった理由を無為に勘繰ったりしないで
かなしくて泣いてるわけじゃないよ
かなしいから泣けるわけじゃないよ
お人形じゃないよ
突き抜ける高層ビルの屋上から見下ろす少女に下から声などかけないで
色恋をカクテルのつまみとして楽しむ彼女らに避けられるあの子のことを可哀想と思わないで
かなしくて泣いてるわけじゃないよ
かなしいから泣けるわけじゃないよ
神さまにはなれないよ
東京タワーから見下す塵々の様子はどう
黄色いテープを囲う人間たちの様子はどう
あの子はお人形じゃないよ
あの子はお人形じゃ
かなしいから泣いてるんだよ
かなしいから泣くことしかできないよ
わからないの?
わかってよ
お人形じゃないんでしょ