直観とトレードに関するメモ

先に結論を書いておくと「直観はトレードに有効(ただし限界もある)」ということです。

  1. 直観は日常生活で役に立っており、正しい判断につながっていることが多い。直観が常に間違っているわけではない。正しく鍛えれば有利に作用するはず。それでもトレードになるとなぜか「直観に頼ったから負けた」と考えてしまう人は多いと思う。自分も最初の頃はそう思っていた。でも、それ自体が一種のバイアスの可能性がある。本当に正しいのか不明である。

  2. 当てずっぽうと直観は違う。直観は経験から鍛えられるものだし、初心者のうちから適当な感覚任せでトレードしてうまくいく可能性はほとんどない。楽器やスポーツと一緒で習熟速度は人それぞれだし、中には向いてない人もいるだろう。

  3. 日常生活の具体例で考えれば、自動車の運転は最悪の場合死亡事故につながるわけで、トレードの損失よりも悲惨な結末を生む可能性がある。しかし、運転操作のすべてを言語化・ルール化している人など誰もおらず、その場に合わせて柔軟に判断を下しているし、その時の行動をわざわざ細かく言語化することなど不可能だろう。それでも無事故無違反で運転することは可能だ。

  4. 他にも料理を考えてみると、初心者のうちはレシピを見ながら注意深く作業しないといけないだろうが、慣れてくれば大体の目安がつくようになる。作り慣れた料理だけでなく、初めて作る料理でも過去の経験からどの程度の調味料を入れればどんな味に仕上がるか想像できるようになる。他人に教える場合は別として、自分で食べるならそんなことは言語化しなくてもいい。そもそも正確に言語化できるかも怪しい。

  5. ということで、トレード以外の日常生活において人間は直観に基づいて判断してうまくいっていることが多いということは同意してもらえるのではないか。そして、トレードにおいても優れた直観を鍛えることは可能なはず。例えば2022年以降のドル円で非常に特徴的な値動きがいくつかあったが、2024年9月にはほとんど見かけなくなったものもある。下手に定量的に分析してあの種の値動きを考慮に入れると、2024年9月現在では全く邪魔なデータが入ることになる。相場は変わり続けるという宿命がある以上、特徴的な値動きの発生・消滅などは、裁量でトレードしている人間の方がうまく対応しやすい分野だろう。

  6. 直観を否定する意見が多いのは、暴落時に恐怖心から株を売ってしまうとか、靴磨きの少年的な行動とか、切るべきポジションが切れなくなるとか、そういう典型的な負けパターンが目立つからかもしれない。ただ、多少適性がある人なら、こういう悪い考え方の癖は変えることができるはず。

  7. また、自分の直観を無条件に信用するべきではないと同時に、言語化(あるいはルール化)というものも無条件に信用すべきではない。どんなにうまく言語化しようとしても、何かこぼれ落ちてしまうものがある。

  8. 何もすべてを直観任せにするべきと言うわけではないし、直観の欠点も十分認識しておくべきだ。退場しないで済むようなルール作りは大事だろうし、データ分析が役に立つ場面もたくさんある。ただ、トレードにおいて直観は絶対に排除すべきというのはおかしな話だという気がする。出来るだけ上手く鍛えて有利に活用したい。